膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

菊池病レビュー

菊池藤本病(KFD、以下「菊池病」で統一)は亜急性壊死性の局所的なリンパ節腫脹を特徴とする原因不明の疾患である。 予後の良い疾患であるが、しばしば軽度の発熱・全身症状を伴う場合がある。 名前は有名だが、まとまったレビューはあまりなかったので、自…

人工膝・股関節置換術前の抗リウマチ薬/免疫抑制剤の術前休薬推奨の2022年更新版(ACR)

https://www.rheumatology.org/About-Us/Newsroom/Press-Releases/ID/1210 アメリカリウマチ学会(ACR)の抗リウマチ薬/免疫抑制剤使用患者での人工関節置換術前休薬推奨が5年ぶりに更新され、プレスリリースされたので紹介。2022年夏に正式版はpublishされ…

大血管巨細胞性動脈炎(LV-GCA)のミミック

J Clin Med. 2022;11(3):495. 巨細胞性動脈炎(Giant cell arteritis: GCA)は2つのサブタイプに分かれる Cranial GCA…頭蓋血管の血管炎。いわゆる「側頭動脈炎」 Large vessel GCA(LV-GCA)…頭蓋領域外の動脈(大動脈・総頸動脈・鎖骨下動脈など)のみの血…

ヒドロキシクロロキンの有害事象・減感作療法

Clin Exp Rheumatol. 2021;39(5):1099-1107. ヒドロキシクロロキン(HCQ)は、SLEのキードラッグだが継続困難例が散見される。代表的なのが皮疹だが、網膜症を始めとした皮膚外症状にも注意が必要。 皮膚症状でHCQ使いにくくなった症例でも、減感作療法を行…

皮膚筋炎患者のリスクベースでの癌スクリーニング

JAMA Dermatol. 2022;10.1001/jamadermatol.2021.5841. JAMA dermatologyに載っていた記事。アメリカでの推奨という点に注意が必要だが、網羅的でわかりやすい。 【自分なりのまとめ】 皮膚筋炎患者は診断から3年間は悪性腫瘍リスクが高い(J Rheumatol. 201…

手指のびらん性変形性関節症(Erosive OA)

Nat Rev Rheumatol. 2022;10.1038/s41584-021-00747-3. 多発手指関節炎を訴える患者の中に「びらん性変形性関節症(Erosive OA)」としかいいようがない患者がいる。 多発関節炎で受診し、Seronegative RAまたはundifferential perioheral SpAか?と思って治…

116回国家試験 膠原病リウマチ分野

毎年のことながら、なんとなく膠原病分野を解いてみた。多分あっているだろうが、責任は負いませんのであしからず。 問題文はhttps://bbs.icrip.jp/forums/forum/kokushi_116/ より 感想 普通の問題ばかりだが、生物学的製剤導入前のβDグルカン測定を問題に…

ANCA関連血管炎の新分類基準(ACR/EULAR2022年基準)

Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41986. Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41983. Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41982. ACR(アメリカリウマチ学会)/EULAR(ヨーロッパリウマチ学会)合同でのANCA関連血管炎の新分類基準が出たので…

トファシチニブと心血管・癌リスク(ORAL-Surveillance試験)

N Engl J Med. 2022;386(4):316-326. トファシチニブ(Tofacitinib)に代表されるJAK阻害薬は、経口薬ながら生物学的製剤(bDMARDs)と同じくらいの効果を持つ薬剤である ただ長期使用の有害事象については不明な点が多く、このORAL-Surveillance試験でようや…

仙腸関節炎の鑑別

J Inflamm Res. 2018;11:339-344. BMC Musculoskelet Disord. 2017;18(1):170. 仙腸関節炎は、軸性脊椎関節炎(AxSpA)の症状として有名だが、AxSpAに特異的な症状というわけではなく「ミミック」も多く存在する。 【Key-point】 仙腸関節炎/関節痛は脊椎関…

膠原病による胆嚢炎

胆嚢炎は膠原病内科からするとあまり関係のない疾患に見えるが、稀に「膠原病(特に全身性血管炎)に伴う胆嚢炎」というものもある。 あまりまとまった報告はないが、自分なりにまとめてみた。 【Key-point】 「血管炎に伴う胆嚢炎」という概念がある 血管炎…

側頭動脈炎の鑑別

J Clin Med. 2022 Jan 5;11(1):275. 側頭動脈の血管炎がある場合、通常巨細胞性動脈炎(GCA)を想起するが、他の原因の場合もある 側頭動脈炎=巨細胞性動脈炎でない事がよく分かるレビュー Key-point 側頭動脈炎の原因として最多なのは巨細胞性動脈炎だが、…

全身性強皮症における炎症性関節炎

全身性強皮症(SSc)患者に関節炎・腱鞘炎症状はよく合併し、実臨床で悩むことは多い 一方で全身性強皮症の関節炎への臨床試験はほぼなく、エビデンスは非常に限られている。 【Key point】 SScにおける関節炎はかなり高頻度であり、原因は多彩…SScそのもの…

再発性多発軟骨炎レビュー

Rheumatology (Oxford). 2018;57(9):1525-1532. 再発性多発軟骨炎は、非常に稀な自己抗体陰性の自己免疫性疾患だが、一例一例に悩む症候群である。 最近はVEXAS症候群(MDS等との合併)・MAGIC症候群(ベーチェット病様病変の合併)もあってややこしい。 【…

結節性紅斑レビュー

結節性紅斑は脂肪織炎の一種で、下肢脛骨前面の柔らかい紅斑を特徴とする 原因ははっきりしていないが、様々な抗原暴露に対しての過敏反応で起こるとされる たまに不明熱の形で結節性紅斑が紹介されることがあるので、新しいレビューをまとめてみた ◎Key poi…

血清反応陰性関節炎は、最終的に何の診断になることが多いか?

Clin Exp Rheumatol. 2019;37(1):37-43. 関節リウマチ(RA)の抗体といえば、リウマトイド因子(RF)・抗CCP抗体(ACPA)がある。 RF・ACPAが陽性の関節リウマチは「血清反応陽性関節リウマチ(Seropositive RA)」と呼ばれる 一方でRF・ACPAが陰性の関節リウ…

リウマチ性疾患に伴う間質性肺疾患の急性増悪

Acute exacerbation of interstitial lung disease associated with rheumatic disease. Nat Rev Rheumatol. 2021;10.1038/s41584-021-00721-z. リウマチ性疾患に合併する間質性肺疾患(Interstitial lung disease: ILD)をリウマチ性疾患関連間質性肺疾患(…

抗Ro52抗体と膠原病疾患

Autoimmun Rev. 2021 Dec 9:103013. Rheumatol Int. 2017 Aug;37(8):1323-1333. シェーグレン症候群の抗体としてよく知られる抗SS-A抗体は、実は他の膠原病でもよく陽性になる。 SS-A抗体は抗Ro52・Ro60抗体に分けられるが、そのうち抗Ro52抗体は診断にも予…

ウイルス性関節炎

急性関節炎で、原因はっきりしないまま改善orNSAIDs短期使用で著明改善という症例は時々見る。「ウイルス性関節炎だったのか?」と思うのだが、証明しきれない… ウイルス性関節炎に関しては、全然まとまった報告はなかったのだが、一応レビューからまとめて…

未分類膠原病(UCTD)と早期SLE

Differentiating between UCTD and early-stage SLE: from definitions to clinical approach. Nat Rev Rheumatol. 2021;10.1038/s41584-021-00710-2. 「SS-A陽性だが、なんの症状もない患者」、「倦怠感と抗核抗体陽性はあるが、SLEへのとまでは言えない患…

関節リウマチと手根管症候群

関節リウマチ患者での手根管症候群は多いわけではないが、時々見かけるのでまとめ。 手根管症候群について 診察 検査 治療

高齢発症SLE(late onset SLE)

SLE

全身性エリテマトーデス(SLE)は、20-40代の女性が好発年齢である。(若年発症SLE) 一方で、50~65歳以上で発症する一群もあり、「高齢発症SLE」(late onset SLE)と呼ばれる 【Keypoint】 50-65歳以上で発症するSLEもあり、男性にも起こりやすい 経過は良…

低用量ステロイドと心血管リスク

Dose-dependent oral glucocorticoid cardiovascular risks in people with immune-mediated inflammatory diseases: A population-based cohort study. PLoS Med. 2020;17(12):e1003432 ステロイドは様々な自己免疫性炎症性疾患に使われているが、その副作…

ANCA関連間質性肺疾患

Antineutrophil cytoplasmic antibody-associated interstitial lung disease: a review. Eur Respir Rev. 2021;30(162):210123. 自己抗体陽性間質性肺炎は様々あり、強皮症・皮膚筋炎抗体陽性例に関してはある程度のコンセンサスはある印象 一方で抗好中球…

リウマチ性疾患におけるB型肝炎再活性化対策

Reactivation of hepatitis B virus infection in rheumatic diseases: risk and management considerations. Ther Adv Musculoskelet Dis. 2020;12:1759720X20912646. 免疫抑制療法を受けているリウマチ性疾患患者患者におけるB型肝炎再活性化は、適切なス…

SLE・シェーグレン症候群の肺病変

Ther Adv Musculoskelet Dis. 2021;13:1759720X211040696. 強皮症・皮膚筋炎と比較してシェーグレン症候群・SLEでの肺症状は稀ではあるが、特徴的なもの・致死的なものが多い ①SLEの肺病変 ②シェーグレン症候群の肺病変

全身性血管炎と皮膚症状アップデート

Updates in cutaneous manifestations of systemic vasculitis. Curr Opin Rheumatol. 2021;10.1097/BOR.0000000000000847. doi:10.1097/BOR.0000000000000847 血管炎皮膚症状のアップデート ◎Key point 皮膚生検は、皮膚血管炎の診断・分類ミミック除外のた…

難治性SLEへのRituximab+Belimumab併用療法(BEAT-LUPUS)

"Effectiveness of Belimumab After Rituximab in Systemic Lupus Erythematosus : A Randomized Controlled Trial.” Ann Intern Med. 2021;10.7326/M21-2078. doi:10.7326/M21-2078 従来の治療に対して抵抗性の難治性SLE患者48人に対して、Rituximab(抗CD20…

全身性強皮症のミミック

全身性強皮症(Systemic Sclerosis, SSc)は「皮膚硬化」を特徴とする疾患で、その他レイノー現象・爪周囲異常血管・皮膚外臓器症状などを起こす ただ、この「皮膚硬化」という点で様々なミミックが存在するので、まとめ。ただ、頻度は低いものもある。 自分な…

膠原病関連間質性肺疾患の総説(米国胸部学会)

米国胸部学会(American Thoracic Society, ATS)からの膠原病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)に関する総説 https://www.thoracic.org/education-center/ild/primer.html 非常によくまとまっているので紹介 【重要部分抜粋】 ①原因疾患別の特徴 ②CTD-ILDのCT所…