膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

高齢発症SLE(late onset SLE)

全身性エリテマトーデス(SLE)は、20-40代の女性が好発年齢である。(若年発症SLE)
一方で、50~65歳以上で発症する一群もあり、「高齢発症SLE」(late onset SLE)と呼ばれる
 
【Keypoint】
  • 50-65歳以上で発症するSLEもあり、男性にも起こりやすい
  • 経過は良好なことが多い
  • 症状としては、シェーグレン症候群合併・肺病変・漿膜炎が多い
  • 自己抗体は、リウマチ因子・抗Ro/La抗体陽性率が高い

【疫学】

  • SLEで最も多いのは20-40代の女性(若年発症SLE)
  • 高齢発症SLEは、50~65歳以上で発症するサブグループで、発生率は通常のSLEより稀
  • 性差…女性のほうが多いが、若年発症SLEと比較して男性の比率が高い(1.1:1〜7:1)
  • 人種…白人で多く見られる。黒人・アジア人では稀。
 

【症状】

  • 潜在性に発症し、非特異的な初期症状→臓器症状という順番と考えられる
    • ※初期症状…関節痛、脱力感、倦怠感、筋肉痛、体重減少、発熱、認知機能障害など
  • 若年発症SLEとの違い
    • 若年発症SLEと比較して少ない…皮膚症状、光線過敏症、関節炎、腎炎
    • 若年発症SLEと比較して多い…漿膜炎、肺病変、シェーグレン症候群
      • 「高齢者の治らない胸水」(SLEの胸膜炎)というプレゼンテーションもあったりする
    • 若年発症SLEと比較して、SLE自体の重症度は低いが悪性腫瘍合併例は多い
 

【検査】

  • 自己抗体頻度が若年発症SLEと異なる
  • 高齢発症SLEで多い…リウマチ因子、抗Ro抗体、抗La抗体
  • 高齢発症SLEで少ない…抗RNP抗体、低補体血症、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体
 

【診断】

  • 非特異的な症状が多い→診断が遅れやすい
  • 誤診された疾患
    • リウマチ性疾患…リウマチ性多発筋痛症(PMR)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群
    • 感染症結核、乾性性心内膜炎
    • 悪性腫瘍
    • その他…変形性関節症、自己免疫性血小板減少症(ATP)、慢性腎臓病、皮膚炎、原発レイノー
    • 薬剤誘発性ループス…プロカインアミド、イソニアジド、メチルドパ、カルバマゼピン、アセブトロールヒドララジン、クロルプロマジン、スルファサラジン、 d-ペニシラミン、TNF阻害薬など
 
 

【治療】

  • 通常のSLEと同様
  • ヒドロキシクロロキン(HCQ)がキードラッグだが、高齢者のため網膜症に注意
 

【まとめ】

表:高齢発症SLEもありと若年発症SLEの比較(Drugs Aging. 2012;29(3):181-189.)
 
若年発症SLE(< 50歳)
高齢発症SLEもあり(≧ 50歳)
頻度(全SLE中)
82-97%
3-18%
男女比
女性の比率が高い
(女性/男性: 9-14.4)
比較的男性比率が高い
(女性/男性: 2.5-9)
SLE症状
高頻度症状:
  • 皮膚症状(皮疹、光線過敏症、脱毛症、紫斑・皮膚血管炎)
  • 精神・神経症
  • リンパ節腫脹
  • ループス腎炎
高頻度症状:
  • 漿膜炎(心膜炎・強膜炎)
  • 肺病変
シェーグレン症候群との合併
少ない
多い
自己抗体
高頻度:抗RNP抗体、抗Sm抗体、低補体血症
高頻度:リウマチ因子(RF)
疾患予後
比較的重症のことが多い
比較的軽症のことが多い
治療
症状の重症度・型による
症状の重症度・型による
高齢者の薬物相互作用・副作用に細心の注意が必要
生存率
5年95%、10年95%、15年92%
5年84%、10年71%、15年59%
 
参考:
Autoimmun Rev. 2008;7(3):235-239.
Drugs Aging. 2012;29(3):181-189.