Lancet. 2023;402(10416):2019-2033.
BMJ. 2024;384:e070856.
RAのレビューが相次いで5大ジャーナルから出ていたので、基礎事項確認としてまとめ
◎病態
わかっていない部分が多いが、遺伝的素因+環境因子が重要
- 遺伝的素因…HLA-DRB1遺伝子など
- 環境因子…喫煙、粉塵曝露 、ウイルス、肥満、低い社会経済状態、肺・腸・口腔マイクロバイオームの変化など
- 少量のアルコールはホガ的な可能性あり
この結果、自己抗体産生・炎症性サイトカイン生成が発生する
RAの有病率は地域差があるが、大体0.25-1%程度
発症年齢は40歳以降、女性優位
◎抗体
新規診断患者の50-60%で陽性、長期/活動性疾患患者の80%に上昇する。血清陰性の場合寛解率が高い。
①リウマトイド因子(RF)
- 1940年代に発見されたIgGのFc部分に結合する5量体のIgM自己抗体
- RA患者の60%で陽性。ただし、最近はRF陰性RA発生率が増加している
- 役割仮説…免疫複合体の形成+補体の活性化→血管透過性亢進→免疫細胞の関節への走化
②抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)
- 1990年代に発見された
- RA患者の60-80%で陽性
- RAが疑われる場合、90%以上の特異度がある(無症状患者での低力価陽性は特異度低い)
◎臨床症状
関節腫脹・疼痛→小関節中心の多関節炎→関節の不可逆的な破壊
関節外症状…皮下結節が最多
- 多いもの…血液学的異常( 例:貧血、血小板増多、リンパ節腫脹)、間質性肺疾患
- 稀…血管炎、神経障害、血清炎、糸球体腎炎 、炎症性眼病変、Felty症候群、ミオパシー、 アミロイドーシスなど
→一般人口よりも死亡率は高い
RAの分類基準(※診断基準ではない)は2010ACR/EULAR基準が頻用される。診断にはUS・MRIなどを利用しても良い。
表:2010ACR/EULAR RA分類基準
腫脹or圧痛関節数(診察,MRI,US) | ||
大関節1ヵ所 | 0 | ・小関節:MCP, PIP, 第1IP, 2-5MTP, 手関節 ・大関節:肩,肘,膝,股,足関節 ・DIP, 1CMC, 1MTP関節は除外(OAと鑑別) ・最低1ヵ所の少関節を含む11ヵ所以上には顎,胸鎖,肩鎖関節等も含める |
大関節2-10ヵ所 | 1 | |
小関節1-3ヵ所 | 2 | |
小関節4-10ヵ所 | 3 | |
最低1ヵ所の小関節を含む11ヵ所以上 | 5 | |
血清反応 | ||
RF・ACPA両方陰性 | 0 | 低力価陽性…正常上限-正常上限3倍 高力価陽性…正常値上限>3倍 |
RF・ACPAいずれかが低力価陽性 | 2 | |
RF・ACPAいずれかが高力価陽性 | 3 | |
罹患期間 | ||
<6週 | 0 | 評価時に腫脹or圧痛関節があったと患者が申告した期間 |
≧6週 | 1 | |
炎症反応 | ||
CRP、ESR両方正常 | 0 | CRP or ESRの測定が必要 |
CRP、ESRいずれかが異常高値 | 1 |
→上記が6点以上でRAに分類する
◎治療
・総論
早期治療は予後を改善することがわかっている→発症から3ヶ月以内には治療を開始することを目指す
基本的にはRA診断次第csDMARDs(基本的にMTX第一選択)開始→定期的にフォローし、非寛解時は治療強化を行う
①まずcsDMARDs使用(禁忌なければMTX)、(あまり勧められないが)症状緩和のためのステロイドブリッジング使用検討
②3-6ヶ月で改善度を確認し、改善乏しい・予後不良因子あればb/tsDMARDs追加
③以降3-6ヶ月おきに再度改善度を確認し、改善度などを見てb/tsDMARDsを相談する
EULAR2022治療推奨フローチャート
表:EULARとACR治療推奨の比較
RA診断後 | EULAR | ACR |
①まずcsDMARDs | 禁忌でない限りMTX | 中-高活動性→MTX 低-中活動性→HCQ |
ステロイド | csDMARDsのブリッジングとしての使用を検討 | ブリッジングとして使用しないことを条件付きで推奨 |
②3-6ヶ月後に寛解達成されないor高リスクの場合、b/tsDMARDs追加 | リスク層別化 …心血管・悪性腫瘍リスク tsDMARDsはリスク評価後のみ使用する |
tsDMARDsはTNF阻害薬無効・リスク層別化後のみに使用する |
③3-6ヶ月後に寛解or活動性の低下が達成されない場合、b/tsDMARDsのサイクル(スイッチ) | 同一機序or異なる機序のどちらかを使用可能 | 異なる機序のb/tsDMARDsへのスイッチを条件付き推奨 |
2種のb/tsDMARDsが無効の場合、Difficult to treat RAの定義に入っていく
表:EULAR D2TRA定義(Ann Rheum Dis. 2021;80(1):31-35.)
寛解達成した場合、治療漸減も考慮可能である
・薬剤一覧
ターゲット | 投与経路 | 有害事象 | RA治療での役割 | |
ステロイド | Genomic/Non-genomic effect | 経口 筋肉 関節 静脈など |
糖尿病、高血圧、感染症、消化管、皮膚萎縮、精神疾患、 骨粗鬆症、眼科疾患など | DMARD治療の開始/スイッチ時のブリッジング療法 フレアへの使用 |
csDMARDs:DMARDsナイーブ患者の第一選択薬 | ||||
MTXMethotrexate |
抗炎症アデノシンシグナル伝達の増強 | 経口 皮下 |
消化管、肝障害、骨 髄抑制、口内炎、脱毛、催奇形性、間質性肺炎など | csDMARDsの第一選択 |
Sulfasalazine | NF-κシグナル伝達の拮抗作用 | 経口 | 消化管、皮疹など | MTXと併用 MTX禁忌の場合単剤 |
Leflunomide | 自己反応性リンパ球における細胞周期停止を起こすウリジンの枯渇化 | 経口 | 消化管、肝障害、白血球減少、高血圧、間質性肺炎など | MTX禁忌の場合単剤 MTX併用は基本しない |
HCQHydroxychloroquine
|
エンドソーム/リソソームpHの上昇を介した オートファジーとTLRシグナルの拮抗作用 | 経口 | 消化管、皮疹、網膜症 | MTXと併用 低疾患活動性でMTX禁忌の場合、単剤 |
tsDMARDs(JAK阻害薬) | 消化管、感染症、腸管穿孔、CK交渉、結核・帯状疱疹再活性化、血球減少、静脈血栓リスク、脂質異常 | 1剤以上のcsDMARDs無効後 ACR:1剤以上のTNFi無効後 EULAR:1剤目として使用可 他bDMARDsと比較して単剤治療に利点がある可能性あり |
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Filgotinib | JAK1 | 内服 | ||
Baricitinib | JAK1,2 | 内服 | ||
Upadacitinib | JAK1,2 | 内服 | ||
Tofacitinib | JAK1,2,3 | 内服 | 心血管イベント・悪性腫瘍リスク増加可能性あり(特に喫煙者・65歳以上) | |
bDMARDs:1剤以上のcsDMARDs無効後使用 | ||||
TNF阻害薬 | 感染症、結核再活性化、血球減少、薬剤性SLE、非黒色腫皮膚癌、脱髄症候群、うっ血性心不全 、点滴/注射関連反応 | bDMARDsの第一選択肢として使用されることが多い | ||
Abalimumab | TNF | 皮下/2w | ||
Etanercept | TNF | 皮下/w | ||
Golimumab | TNF | 皮下/4w | ||
Certolizumab pegol | TNF | 皮下/2w | ||
Infliximab | TNF | 静脈/8w など |
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抗B細胞 | infusion reaction、ワクチン、感染症、B型肝炎再活性化、急速進行性白質脳症 | csDMARDs1剤以上無効、通常はTNF無効の場合使用 ACR:TNFi無効orリンパ増殖性疾患既往で使用 |
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Rituximab※日本では適応外 |
CD20 | 点滴 1-2g/6M |
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抗T細胞共刺激 | 1剤以上のb/csDMARD無効時の第一選択薬 | |||
Abatacept | CD80-CD86共刺激 | 点滴/4w 皮下/1w |
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抗IL-6 | 感染症、腸管穿孔、脂質異常、血球減少、肝障害、点滴/注射関連反応 | 1剤以上のcsDMARD無効時の第一選択薬 他bDMARDsと比較して単剤治療に利点がある可能性あり |
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Tocilizumab | IL-6受容体 | 点滴/4w 皮下/2w |
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Sarilumab | IL-6受容体 | 皮下/2w |