膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

2022EULAR関節リウマチ治療推奨

Smolen JS, Landewé RBM, Bergstra SA, et alEULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2022 updateAnnals of the Rheumatic Diseases Published Online First: 10 November 2022. doi: 10.1136/ard-2022-223356
 
EULAR2022で公表されたRA推奨アップデートが論文化したので紹介
 

①治療推奨・フローチャート

 
包括原則
推奨度
A.
RA患者の治療は最良の治療を目指すべきであり、患者とリウマチ専門医の共同決定に基づいて行わなければならない。
n.a.
B.
治療法の決定は、疾患活動性、安全性の問題、および併存疾患や構造的損傷の進行など、その他の患者要因に基づいて行われます。
n.a.
C.
リウマチ専門医は、RA患者を主に治療すべき専門医である。
n.a.
D.
患者は、RAの多様性に対処するために、作用機序の異なる複数の薬剤を利用する必要があり、生涯を通じて継続的に複数の治療が必要になる可能性がある。
n.a.
E.
RAは、個人・医療・社会的に多大なコストがかかる疾患であり、RA治療にあたるリウマチ専門医は、これらすべての負担を考慮した上で、その管理を行う必要がある。
n.a.
推奨
1.
DMARDsによる治療は、RAの診断がついたらすぐに開始する必要がある。
A
2.
治療は、全患者において持続的寛解または低疾患活動性という目標への到達を目指す必要がある。
A
3.
疾患活動性がactive場合、頻回に(1~3カ月ごとに)モニタリングを行う。治療開始後最大3ヶ月までに改善が見られない場合、または3ヶ月までに目標値に到達しない場合、治療を調整する必要がある。
B
4.
MTXは初期治療戦略の一部であるべきである。
A
5.
MTXが禁忌(または早期から不耐)の患者では、LEFまたはSASPを(初期)治療戦略の一部として検討する必要がある。
A
6.
csDMARDsを開始または変更する場合、短期間(≦3ヶ月)のステロイド使用を考慮すべきで、様々な用量レジメンおよび投与経路で行う。ただし臨床的に可能な限り迅速に漸減・中止する必要があります。
A
7.
最初のcsDMARD戦略で治療目標が達成されず予後不良因子(※1)がない場合、他のcsDMARDを検討する必要がある。
D
8.
最初のcsDMARD戦略で治療目標が達成されず予後不良因子がある場合、bDMARDsを追加すべきです。JAK阻害剤も検討できるが、適切なリスク因子(※2)を考慮する必要がある。
有効性:A
安全性:B
9.
bDMARDs・tsDMARDsはcsDMARDsと併用すべきである。csDMARDs併用ができない患者の場合、IL-6阻害薬・tsDMARDsは他のbDMARDsと比較して利点がある可能性がある。
有効性:A
10.
bDMARD・tsDMARDsが無効の場合、他のbDMARDs・tsDMARDsによる治療を検討すべきである。1種類目のTNF/IL-6阻害薬治療が無効の場合、他作用機序の薬剤または2種類のTNF/IL-6阻害剤を選択可能である。
有効性: A/+D
安全性: B
IL-6阻害薬: C
11.
ステロイドが中止され寛解維持できている場合、DMARDs(b/ts/csDMARDs)の減量の検討が可能である。
A
(画像版)

RA:関節リウマチ、MTX:メトトレキサート、LEF:レフルノミド、SASP:サラゾスルファピリジン
※1 予後不良因子
  • csDMARD治療を行っても関節数を含む複合指標上、中-高疾患活動性が持続している
  • 急性期反応物質の高値
  • 腫脹関節数が多い
  • RF・ACPA陽性(特に高値の場合)
  • 初期から骨びらんが存在する
  • 2種類以上のcsDMARDsがfailureしてる
 
※2 リスク因子:JAK阻害薬処方前、心血管イベント・悪性腫瘍に関して考慮すべきリスク因子…年齢(65歳以上)、喫煙歴、心血管リスク(糖尿病、肥満、高血圧)、悪性腫瘍リスク(治療成功した非黒色腫皮膚癌以外の悪性腫瘍現病・既往)、血栓塞栓イベントリスク(心筋梗塞心不全の既往、悪性腫瘍、遺伝性血液凝固障害、血栓症既往、ピル内服、ホルモン補充療法、大手術既往、寝たきり)
 

②個人的に感じた重要ポイント

重要な点は3点
  • (推奨6)csDMARDs使用・変更時の短期ステロイドは許容されるが、早期の漸減・中止が推奨される(=ステロイド据え置きは非推奨)
  • (推奨8)csDMARDs単剤で治療困難時、bDMARDsとtsDMARDs(JAK阻害薬)どちらから開始しても構わない(リスク因子考慮は必要)
  • (推奨11)csDMARDsの減量は検討できる
どれもACR2021年推奨(Arthritis Care Res (Hoboken). 2021;73(7):924-939.)と微妙な際はあるが、だいたい同じである。
 
特に重要なことは、ステロイドの漸減・中止推奨である。
  • 実臨床データ上ではステロイドが慢性的に使用されている例が多いが、漫然とした使用は非常にリスクが高い
  • ステロイド使用はあくまでも初期・フレア時のみの「ブリッジング」であるべきである→非経口投与(筋注など)・中止スキーム(3ヶ月以内に中止)を予め定めて経口ステロイドを使用すべき
  • bDMARDsとステロイドの併用は感染症等の有害事象が多くなるため、避けたほうがよい
という3点をおさえておくといいと思われる。