膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

体軸性脊椎関節炎(axSpA)治療ASAS-EULAR2022年推奨

Ann Rheum Dis 2022;0:1–16.
体軸性病変を起こす脊椎関節炎(axSpA)の治療は末梢性脊椎関節炎(pSpA)と異なる部分があり、独自の推奨がある。その最新改訂。
 
重要ポイント
  • 体軸病変へのcsDMARDsはほぼ無効とされ、bDMARDsの役割が大きい…NSAIDs無効なら次がb/tsDMARDs
  • bDMARDsが高価なため、axSpAの治療費は高くなる(包括原則E)
  • b/tsDMARDsの開始基準・継続基準の推奨ができた(推奨9)
  • b/tsDMARDsに関しては治療薬の増加によってTNFi・IL-17i・JAKiが併記となった。使い分けに関してはまだわからない部分が多い。(推奨9,10)
  • bDMARDs漸減可能性についても記載が出た(推奨13)
  • IL-23阻害薬に関しては体軸病変への効果不良データが多く、記載なし
 

◎治療推奨図

◎包括原則

包括原則
A. axSpAは多彩な症状を起こす潜在的な重症疾患であり、通常リウマチ専門医による集学的治療が必要となる。
B. axSpA患者の治療の主要目標は、症状・炎症のコントロール、構造損傷の進行予防、機能・社会参加の維持/正常化を通じて、健康に関するQOL を最大化することである。
C. axSpA患者の最適な管理には、薬物療法・非薬物療法の組み合わせが必要である。
D. axSpA の治療は最善の治療を目指すべきで、患者とリウマチ専門医の共同決定に基づいたものでなければならない
E. axSpA は、個人・医療・社会に対するコストが高く、axSpAマネジメントにおいて治療を行うリウマチ医はその全てを考慮する必要がある。
 

◎推奨

推奨
推奨度
1. axSpA患者の治療は、現在の疾患の所見・症状(体軸・末梢・筋骨格系外症状)、併存疾患・精神的要因などの患者特性に応じて個別化する必要がある。
5/D
2. axSpA 患者の疾患モニタリングとして患者報告型アウトカム・臨床所見・臨床検査・画像診断を行うべきである。これらはすべて適切な機器を用い、臨床状況に応じて行う。モニタリング頻度は、症状・重症度・治療内容に応じて、個別に決定する必要がある。
5/D
3. 治療は、予め設定された治療目標に応じて行われるべきである。
5/D
4. 患者はaxSpA に関する教育を受けるべきで、定期的な運動・禁煙が推奨される。また理学療法を考慮すべきである。
2b /B(教育・運動)
5/D(禁煙)
1a/A(理学療法
5. 痛み・こわばりに悩む患者は、リスクベネフィットを考慮した上NSAIDsをで第一選択薬として使用し最大用量まで増量すべきである。NSAIDsへの反応が良好な患者では、症状のコントロールに必要であれば、継続的な使用が望ましい。
1a/A
6. 鎮痛剤(パラセタモール・オピオイド系薬剤など)は、推奨治療の失敗・禁忌・忍容性が低かった場合、残存する疼痛に対して考慮されうる。
5/D
7. 筋骨格系炎症に対してのステロイド局所注射は考慮されるかもしれない。体軸病変のある患者は、ステロイド全身投与による長期治療を受けてはならない。
2/B(注射)
5/D(長期ステロイド
8. 体軸病変単独の患者の場合、通常csDMARDsによる治療を受けるべきではない。末梢性関節炎のある患者にはスルファサラジンを考慮することができる。
1a/A (スルファサラジン, メトトレキサート)
1b/A (レフルノミド)
4/A (他csDMARDs)
1a/A (末梢病変へのスルファサラジン)
9. 従来の治療にもかかわらず高い疾患活動性が持続する患者(※1)には、TNF阻害薬(TNFi)・IL-17阻害薬(IL-17i)・JAK阻害薬(JAKi)を検討すべきである
1a/A
10.再発性ぶどう膜炎や活動性炎症性腸疾患(IBD)の既往がある場合は、TNFモノクローナル抗体を優先する必要がある。
      重篤な乾癬のある患者には、IL-17阻害薬が望ましいかもしない。
1a/B (乾癬)
11.治療が奏功しない場合、診断の再評価・併存疾患の存在の考慮を検討する必要がある。
5/D
12.最初のb/tsDMARDの失敗の後、他のbDMARD(TNFi・IL-17i)・JAKiへのスイッチを検討する必要がある
2b/B (TNFi→TNFi)
1b/A (TNFi→IL-17i)
5/D (その他スイッチ)
13.寛解が維持できている場合、bDMARDの漸減を検討することができる。
1a/B (TNFi), 5/D (IL-17i)
14.股関節全置換術は、年齢に関係なく、難治性の疼痛・障害があり、X線写真で構造的損傷が確認された患者に検討されるべきである。専門施設での脊椎矯正骨切り術は、重度の機能障害変形を有する患者に検討されうる。
4/C
15.経過が著しく変化した場合は、脊椎骨折などの炎症以外の原因を考え、画像診断を含めた適切な評価を行う必要がある。
5/D
※1 従来の治療にもかかわらず高い疾患活動性が持続する患者とは、以下の5つを満たすもの
  1. リウマチ専門医がaxSpAと診断している
  2. CRP上昇 or MRI仙腸関節炎陽性 or 画像上の仙腸関節
  3. 従来の治療が失敗
    • 全患者…(計)4週間以上、2種類以上のNSAIDsが無効
    • 末梢病変が優勢な患者…適切な場合局所ステロイド注射1箇所、通常スルファサラジンの治療トライアル
  4. 高疾患活動性:ASDAS≧2.1
  5. リウマチ専門医の意見が肯定的(高疾患活動性と判断している)
 
b/tsDMARDsの継続に関しては少なくとも12週以上継続後、以下を参考に決定する
  1. ASDAS改善≧1.1
  2. リウマチ専門医が継続に肯定的
 
ASDAS計算式…背部痛 VAS・朝のこわばり持続時間・患者の評価(VAS)・末梢関節炎・炎症反応から計算する

(Ann Rheum Dis. 2011;70(1):47-53.)