膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

2022-01-01から1年間の記事一覧

痛覚変調性疼痛

Pain. 2021;162(11):2629-2634. Lancet. 2021;397(10289):2098-2110. 現状疼痛の種類は3つに分類される(国際疼痛学会(IASP)2017年改訂)。 侵害受容性疼痛(nociceptive pain)…刺激・損傷部位における侵害受容器から生じる痛み(例:外傷、関節リウマチ…

SLEと補体/補体欠損症

Curr Rheumatol Rep. 2021; 23(3):16. Front Immunol. 2016; 7: 55. 補体が全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に深く関わっていることはよく知られているが、 ・低補体血症のないSLEもある ・補体値とSLE活動性が一致しない場合がある ・補体欠損症がSLE患…

器質化肺炎の診断へのアルゴリズム・アプローチ

Chest. 2022;162(1):156-178. 膠原病診療をしているとよく器質化肺炎に悩まされるが、その診断は非常に難しい。その理由としては症状が非特異的、画像が多彩、除外診断が基本、ということが挙げられる。非常に良いレビューがあったので、まとめてみた。 【器…

JAK阻害薬から他JAK阻害薬へのスイッチは有効なのか?

Ann Rheum Dis. 2022;annrheumdis-2022-222835. 関節リウマチ(RA)の治療薬はどんどん増えており、その代表歴はJAK阻害薬である。 ただJAK阻害薬も全てのRAが治るような薬剤ではない。臨床試験によって結果は微妙に異なるが、他bDMARDsと同じくらい寛解達成…

皮膚筋炎と関節リウマチのオーバーラップ

関節リウマチは頻度の多い疾患であるため、他膠原病と合併することはよくあるが、皮膚筋炎との合併もありうる。特に典型的な皮膚筋炎所見を取らない抗ARS・MDA-5抗体と合併した場合非常に厄介である。 まとめ 抗ARS抗体症候群自体が関節炎を起こし、関節リウ…

巨細胞性動脈炎・高安動脈炎の新分類基準(ACR/EULAR2022年基準)

Ann Rheum Dis. 2022;81(12):1647-1653. Ann Rheum Dis. 2022;81(12):1654-1660. ANCA関連血管炎に続いて、巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis, GCA)、高安動脈炎の大血管炎両方の基準が1990年以来約30年ぶりに改訂となった。 ctd-gim.hatenablog.com 正…

2022EULAR関節リウマチ治療推奨

Smolen JS, Landewé RBM, Bergstra SA, et alEULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2022 updateAnnals of the Rheumatic Diseases Published Online Fi…

リウマチ多発筋痛症(PMR)とステロイド漸減

リウマチ多発筋痛症(PMR)は非常にコモンな疾患で、ステロイド単剤治療が可能なリウマチ性疾患としても有名である。 ただステロイド漸減に関しては定まったものがあるわけではない。 きちんとPMR治療の難しさ(再発リスク)・診断の難しさ(ミミック)・ス…

Rituximab投与中のリウマチ性疾患患者へのエバシェルド

2022年現在Covid-19流行から2年以上がたち、ワクチンを中心として様々な対策が取られている。一方でRituximabによるB細胞枯渇療法を受けている患者はワクチンの恩恵を受けにくく、Covid-19重症リスクも高い。最近発症抑制目的でのモノクローナル抗体としてエ…

メトトレキサートと葉酸投与量

メトトレキサート(MTX)はリウマチ性疾患治療のキードラッグで、葉酸との併用が基本である。 スタンダードな投与方法は週1回・MTX内服後24-48時間後に葉酸5mg内服だが、どう飲ませるのがベストかは案外わかっていない。よく質問されるので、自分なりにまと…

広義の”Difficult to Treat RA”について考える ②各論

今回は3つに分類した広義のD2TRAについての対応を考えてみる。 前回の総論 ctd-gim.hatenablog.com 【ポイント】 そもそもRAではない…診断ミス 特にSeronegative RAには注意が必要 治療強化困難なRA…、アドヒアランス不良、不適切な薬剤管理、合併症、金銭面…

広義の”Difficult to Treat RA”について考える ①総論

「広義の”Difficult to Treat RA”について考える」というテーマについて総論・各論・実践編という3篇でまとめていく予定です。 ◎ポイント 関節リウマチ(RA)の治療はどんどん発展しているが、一方で治療強化しても改善乏しい「難治例」が残った 難治例の名…

乾癬性関節炎におけるRF・抗CCP抗体

乾癬性関節炎(PsA)は通常自己抗体陰性の関節炎ではあるが、たまにRF/ACPA陽性のことがある。 多関節炎+RF( リウマトイド因子)・ACPA(抗CCP抗体)陽性ときたら、普通関節リウマチ(RA)を考える。ただ非典型的だがにRF,ACPA陽性の乾癬性関節炎(PsA)も…

凍結肩(Frozen shoulder)

Nat Rev Dis Primers. 2022;8(1):59. 凍結肩(Frozen shoulder: FS)は癒着性肩関節包炎・四十肩/五十肩と呼ばれ、非常にコモンな肩の症状である。 関節リウマチの治療していても肩の症状が残ることは非常に多く、凍結肩としての治療を実施すると著明に改善す…

2022年ACRステロイド骨粗鬆症(GIOP)ガイドライン改訂

https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/Prevention-Treatment-GIOP-Guideline-Summary.pdf Arthritis Care Res (Hoboken). 2017;69(8):1095-1110. 2017年ガイドライン以来の更新で、アバロパラチド・ロモソズマブに関しての推奨もできた。2017年の内…

SLEの関節炎

SLE

Best Pract Res Clin Rheumatol. 2009;23(4):495. Curr Opin Rheumatol. 2017;29(5):486-492. SLE患者の-90%に見られる非常にコモンな症状である(Clin Rheumatol. 2009;23(4):495-506.) 一方で関節炎に特異的な治療があるわけではなく"non-renal SLE"の一…

人工膝・股関節置換術前の抗リウマチ薬/免疫抑制剤の術前休薬推奨(ACR2022年)

Arthritis Care Res (Hoboken). 2022;74(9):1399-1408. アメリカリウマチ学会(ACR)の抗リウマチ薬/免疫抑制剤使用患者での人工関節置換術前休薬推奨が5年ぶりに更新され、論文化されたので一部更新。 変更点・重要な点は以下の通り csDMARDsは継続可 生物…

蕁麻疹様血管炎

全身症状・皮疹を起こす「その他の血管炎」の一つに蕁麻疹様血管炎がある。 「治らない蕁麻疹・皮疹」の生検結果でleukocytoclasic vasculitisが出たとき、蕁麻疹様血管炎を疑って精査したほうが良い。 膠原病や悪性腫瘍に併発することもあり治療も非常に難…

Covid-19とDMARDs休薬

2022年8月現在Covid-19感染が蔓延しており、外来患者への影響が大きい。DMARDs休薬についてよく問い合わせがあり、2020年頃に公表されたガイドライン・Covid-19以外の感染症時の対応と同様にやっている。久しぶりにACR/JCR/EULARの推奨を見てみたが、ほぼ更…

SAPHO症候群の診断・画像所見

Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710. J Child Orthop (2015) 9:19–27 SAPHO症候群(Synovitis-Acne-Pustulosis-Hyperostosis Osteitis:滑膜炎、痤瘡、膿疱症、骨硬化、骨炎)は、胸部・鎖骨を中心とした硬化性/肥大性骨関節病変が特徴となる疾患…

リウマチ性疾患患者の予防接種に関するガイドライン改訂(ACR)

https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/Vaccinations-Guidance-Summary.pdf 米国リウマチ学会(ACR)からのリウマチ性疾患患者へのワクチン推奨改訂。日本の臨床現場に応用しにくい部分もあるが紹介。 参考にはなるが推奨としては弱く、そのまま適応…

難治性ループス腎炎治療へのエキスパートオピニオン

SLE

Arthritis Rheumatol. 2022;74(6):915-926. 全身性エリテマトーデス(SLE)の臓器病変といえば、ループス腎炎(LN)だが、難治例も多々見られる。その治療に関してのエキスパートオピニオン。 【ポイント】 治療を行って反応がなければ「難治性ループス腎炎…

臨床型別の特発性炎症性筋症の治療

Best Pract Res Clin Rheumatol. 2022 Jun 28:101762. 特発性炎症性筋症(IIM)は、皮膚筋炎(DM)・免疫介在性壊死性筋症(IMNM)・封入体筋炎(IBM)といった様々な病型がある。 臨床型別での治療オプションの紹介があったので紹介 ※HCQ:ヒドロキシクロロ…

ピロリン酸カルシウム結晶沈着症/偽痛風の関節エコー

ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(Calcium pyrophosphate deposition disease,以下CPPD)は、高齢者の関節炎としては非常にコモンな疾患ではあるが、その診断・マネジメントともに非常に難しい。 関節穿刺によるピロリン酸カルシウムの同定が最も有用だが、…

75歳以上のANCA関連血管炎へのRituximabの有効性・安全性

ANCA関連血管炎(AAV)へのRituximab(RTX)はkey-drugと化しており、RTXを使うことができればステロイド用量を大幅に削減できることがわかっている。一方で75歳以上への適応は不明な部分があり、RTX使用をためらうシーンは多々ある。 それに関してJAMAに報…

GRAPPA乾癬性関節炎(PsA)ガイドライン2021

Coates, L.C., Soriano, E.R., Corp, N. et al. Group for Research and Assessment of Psoriasis and Psoriatic Arthritis (GRAPPA): updated treatment recommendations for psoriatic arthritis 2021. Nat Rev Rheumatol (2022). https://doi.org/10.1038…

Tocilizumabと好中球減少

Tocilizumab(TCZ, 商品名アクテムラ®)は、関節リウマチ(RA)・若年性特発性関節炎(JIA)などに適応のある生物学的製剤で、使用頻度も多い。 一方で「好中球減少」がよく見られるが、あまり感染症とは関係ないとされている アクテムラ®の添付文書上、「無顆…

ループス腎炎と末期腎不全

SLE

Am J Med Sci. 2013;346(4):319-323. Semin Nephrol. 2015;35(5):500-508. 全身性エリテマトーデス(SLE)の臓器病変のうち、最も問題になりやすいのがループス腎炎(LN)である。 罹患率・死亡率が高いこともそうだが、末期腎不全になった後の管理(活動性…

炎症性腸疾患と血管炎

Crohn病(CD)・潰瘍性大腸炎(UC)といった炎症性腸疾患(IBD)は血管炎との関連が知られている。 大別すれば ①IBD単独、血清マーカーだけ陽性(血管炎合併なし) ②IBDと血管炎合併 ③IBDそのものが血管炎を起こす(腸外症状の一部) ④血管炎がIBDのような消…

65歳以上のRA患者への低用量ステロイドは有効か?

Ann Rheum Dis. 2022;annrheumdis-2021-221957. 疾患活動性の高いRAの大して"bridging"としてステロイドを使うべきかはよくわかっていない。ガイドライン的にも紛糾している。 ACR2021年推奨では ・中-高疾患活動性のDMARDs未使用患者では、短期ステロイド+…