毎年恒例の国家試験を解いてみた。解答を示すというより問われている内容の背景知識の解説。
117回医師国家試験 膠原病リウマチ分野
関節リウマチとANCA関連血管炎のオーバーラップ
関節リウマチ(RA)とANCA関連血管炎(AAV)も頻度が多く、RAにおけるANCA陽性・AAVにおけるリウマトイド因子(RF)陽性はよく見る印象。ただその意義はいまいちわかっていない。
RA・AAV両方を合併、 AAV患者におけるRF陽性、RA患者におけるANCA陽性 の3つについて調べてみた。
大した文献はなかったがまとめると
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RA・AAV両方を合併…RA診断治療後にAAVを発症する例が多く、MPA・腎炎合併例が多い。治療はRituximabがよい?
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AAV患者におけるRF陽性…AAVの39.1%でRF陽性、症状・臨床的特徴との相関はないとする報告もあれば重症になるという報告もある
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RA患者におけるANCA陽性…p-ANCAが14.5%で陽性、死亡率との相関なし
- ①RA・AAV両方を合併
- ②AAVとRF陽性
- ③RAとANCA陽性
関節リウマチにおけるTocilizumab投与とCRPの関係性
Ann Rheum Dis. 2020;79(7):874-882.
Tocilizumab(TCZ)は抗IL-6受容体抗体で、投与するとCRPがほぼ0になる特性がある。ただ、CRPが低下することとRAが改善することの関連はよくわかっていない。その関連について調べた研究は3つあったが、最もデータが集まっていて興味深かった論文を簡単にまとめてみた。
- ◎Result
- ◎感想
SLEのまれな臨床所見
Clin Exp Rheumatol. 2022;10.55563/clinexprheumatol/jrz47c.
SLEな様々な臨床所見があるが、特に珍しい所見をまとめた症例ベースでのレビュー。
病変部位
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頻度
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消化器
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ループス腸炎 0.59 -10.7%
偽性腸閉塞症 0.5- 4%
蛋白喪失性腸症 0.5 -7.5%
膵炎 0.1-5.5%
無石胆嚢炎 0.15-0.5%
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肝臓
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ループス肝炎 9.3%
自己免疫性肝炎 2.3%
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肺
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間質性肺疾患 4%
Shrinking lung syndrome 1.5%
ループス肺炎 3%
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心臓
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心筋炎 0.4-6%
肺動脈性肺高血圧症 1-14%
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眼
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上強膜炎・強膜炎 1.7-3.1%
前部ぶどう膜炎 0.6-0.8%
ループス網膜症 1.2-28.8%
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神経
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無菌性髄膜炎 <1%
Chorea 0.3-2.4%
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- ◎消化器
- ◎肝臓
- ◎肺
- ◎心臓
- ◎眼
- ◎神経
痛覚変調性疼痛
Pain. 2021;162(11):2629-2634.
Lancet. 2021;397(10289):2098-2110.
現状疼痛の種類は3つに分類される(国際疼痛学会(IASP)2017年改訂)。
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侵害受容性疼痛(nociceptive pain)…刺激・損傷部位における侵害受容器から生じる痛み(例:外傷、関節リウマチ)
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痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)…上記2つに当てはまらない痛み。様々な要因で脊髄から脳に至る神経回路が変化し、痛みが生じたり、痛みに過敏になったりする現象(例:線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群)
新規に追加されたのは「痛覚変調性疼痛」(nociplastic pain)で、中枢神経系疼痛・感覚処理増強・疼痛の調節が原因とされており、関節リウマチ等の炎症性リウマチ性疾患患者では非常に合併率が高い。
SLEと補体/補体欠損症
Curr Rheumatol Rep. 2021; 23(3):16.
Front Immunol. 2016; 7: 55.
補体が全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に深く関わっていることはよく知られているが、
・低補体血症のないSLEもある
・補体値とSLE活動性が一致しない場合がある
・補体欠損症がSLE患者には多い ということはあまり知られていない。
このため、「補体が正常値になっていないため、SLE再燃リスク高くステロイド据え置きは仕方ない」という誤解がよく起こっている印象である。
抗DNA抗体等と同様、絶対的な指標ではない事を再確認した内容。
- 【補体の基本】
- 【SLEと補体】
- ◎SLEの診断における補体
- ◎SLEの疾患活動性・モニタリングにおける補体
- 【SLEと補体欠損症】
- 表:補体欠損症とSLE合併(Front Immunol. 2016; 7: 55.)