膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

2022年EULAR ANCA関連血管炎治療推奨

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2022-223764.
欧州リウマチ学会(EULAR)の方でもANCA関連血管炎(AAV)の推奨が更新された。
 
個人的な注目ポイント
  • 重症AAVにはステロイド+ RTX or CyCの併用を推奨(4)
  • 非重症AAVであってもステロイド+RTXを推奨し、維持療法もRTX推奨。MTX・MMFはあくまでも代替薬。(5.9)
  • Avaconpanに関してはADVOCATEで示された以上の内容なし
  • ステロイドは急速漸減が強く推奨され、4-5ヶ月時点でPSL5mg/dという具体的な目標が推奨された(5)
  • 血漿交換は腎不全には◯、肺胞出血には✗血漿交換に関しては末期腎不全を減らす可能性があるが、感染症リスクが増加することに注意が必要。(7)
  • EGPAへのレスリズマブ、ベンラリズマブはデータ不足で推奨に入らず
  • 非重症EGPAにはまずステロイド単剤、再発性・難治性ならメポリズマブ(12,13,15)
  • 二次性免疫不全検出のためのRTX投与患者には血清IgG測定が推奨された(16)

GPA・MPA治療推奨アルゴリズム

 

EGPA治療推奨アルゴリズム

包括原則・推奨

番号
内容
A
AAV患者には、有効性、安全性、コストを考慮し、患者と医師が共有する意思決定に基づく最良の治療を提供する必要がある。
B
AAV患者は、AAVの影響とその予後、鍵となる前駆症状、治療(治療に関連する合併症を含む)に重点を置いた教育を受けることができるべきである。
C
AAV患者には、治療関連副作用・併存疾患に関して定期的にスクリーニングを行う必要がある。治療関連の合併症やその他の併存疾患を減らすために、予防医療や生活指導が推奨される
D
AAVは希少かつ不均一な疾患であり、致死的・臓器障害リスクがあるため、血管炎に関して専門知識を持つ、またはアクセスできる施設による集学的管理が必要である
推奨
1
診断)生検陽性は血管炎の診断を強く支持するものであり、AAVの新規確定診断の補助目的、また血管炎再発が疑われる患者のさらなる評価目的としての生検を推奨する。
2
診断)AAVの診断が疑われる症候・症状を持つ患者には、PR3-ANCA・MPO-ANCAの両方を、高品質の抗原特異的アッセイを使用して検査することがまず推奨される。
3
寛解導入)致死性・臓器障害性の新規発症・再発性の GPA・ MPA 患者の寛解導入には、グルココルチコイド+ リツキシマブまたはシクロホスファミドの併用による治療を推奨する。(※再発性の場合、リツキシマブが望ましい)
4
寛解導入)非致死的・非臓器障害性 GPA・MPA寛解導入には、グルココルチコイドとリツキシマブの併用による治療が推奨される。リツキシマブの代替薬として、メトトレキサート・ミコフェノール酸モフェチルを考慮することができる。
5
寛解導入)GPA・MPA寛解導入レジメンの一部として、体重に応じてプレドニゾロン換算50-75mg/ 日を初期用量とする経口グルココルチコイドによる治療が推奨される。下記表*に従って段階的にグルココルチコイドを減量し、4-5ヶ月までにプレドニゾロン換算5mg/日の投与量を達成することが推奨される。
6
寛解導入)アバコパンとリツキシマブまたはシクロホスファミドの併用は、GPA・MPA寛解導入のために、グルココルチコイドへの曝露を大幅に減らす戦略の一部として考慮することができる。
7
寛解導入)活動性糸球体腎炎により血清クレアチニン>300μmol/L (3.39mg/dL)の患者には、GPA・MPA寛解導入療法の一環として血漿交換を考慮してもよい
GPA・MPAにおける肺胞出血の治療に対する血漿交換のルーチン使用は推奨されない
8
寛解導入)寛解導入療法に抵抗性を示す GPA・MPA 患者には、病態・併存疾患を十分に再評価し、追加または別の治療法の選択肢を検討することが推奨される。これらの患者は、血管炎を専門とする施設と密接に連携して管理する、または紹介する必要がある。
9
(維持)GPA・MPA寛解維持には、リツキシマブまたはシクロホスファミドによる寛解導入後、リツキシマブによる治療が推奨される。代替療法としてアザチオプリンやメトトレキサートを考慮することができる。
10
(維持)GPA・MPA寛解維持療法は、新規発症疾患の寛解導入後 24~48ヵ月間継続することが推奨される。再発例・再発リスクが高い例では、より長い治療期間を考慮すべきだが、患者の希望・免疫抑制継続のリスク・バランスをとる必要がある。
11
(EGPA寛解導入)致死的・臓器障害性の新規発症・再発性EGPAの寛解導入には、高用量グルココルチコイドとシクロホスファミドの併用療法が推奨される。代替案として、高用量グルココルチコイドとリツキシマブの併用も考慮される。
12
(EGPA寛解導入)非致死性・非臓器障害性の新規発症・再発性EGPA の寛解導入には、グルココルチコイドによる治療が推奨される。
13
(EGPA寛解導入)非致死性・非臓器障害性の再発性・難治性EGPAの寛解導入には、メポリズマブの使用が推奨される。
14
(EGPA維持)致死性・臓器障害性の新規発症・再発性EGPAのの寛解維持には、メトトレキサー、アザチオプリン、メポリズマブ、リツキシマブのいずれかによる治療を考慮すべきである
非致死性・臓器障害性の再発性EGPAにおける寛解導入後の寛解維持には、メポリズマブによる治療が推奨される
15
(その他)AAV患者の管理においては、ANCA・CD19+ B細胞の検査だけでなく、構造化された臨床評価を行い、治療の変更決定を行うことが推奨される。
16
(その他)リツキシマブ投与中のAAV患者では、二次性免疫不全検出のため、リツキシマブの各コース前に血清免疫グロブリン濃度を測定することが推奨される
17
(その他)リツキシマブ、シクロホスファミド、高用量グルココルチコイドが投与されているAAV患者には、ニューモシスティス肺炎等の感染症予防として、トリメトプリム・スルファメトキサゾールの使用が推奨される。

表:PEXIVAS studyにおけるGPA・MPA寛解導入時のCyC・RTX併用グルココルチコイド投与量(mg/日)

*eGFR<50ml/min/1.73m2の腎障害・肺胞出血などの重症例では1-3日目に計1-3gのmPSL静脈投与が検討される
 

表:重症・臓器障害性病変と非重症・非臓器障害性病変

重症・臓器障害性
非重症・非臓器障害性
糸球体腎炎
肺胞出血
髄膜病変
中枢神経病変
後眼窩病変
心病変
腸間膜病変
多発単神経炎
骨病変(びらん)・軟骨崩壊・嗅覚障害・難聴を伴わない鼻・副鼻腔疾患
非潰瘍性皮膚病変
筋炎(骨格筋のみ)
非空洞性肺結節
上強膜炎
 

◎ACR2021年との比較

参考

ctd-gim.hatenablog.com