膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

重症ANCA関連血管炎の再発リスク(PEXIVAS事後解析)

Junek ML, Merkel PA, Vilayur E, et al. Risk of Relapse of Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis in a Randomized Controlled Trial of Plasma Exchange and Glucocorticoids. Arthritis Rheumatol. 2024;76(9):1431-1438. doi:10.1002/art.42843
 
PEXIVAS study事後解析で、重症AAV長期の再発有無を検討したstudy。
結論的には
  • ANCA関連血管炎の重症患者において、血漿交換やステロイド減量レジメンは再発リスクに影響を与えなかった。
  • PR3-ANCA陽性、非出血性呼吸器症状の存在が再発リスク増加と関連
  • 経口シクロホスファミドの使用や透析導入は再発リスク低下と関連

◎PEXIVAS studyについて

PEXIVAS studyは重症ANCA関連血管炎(AAV)に対して血漿交換・ステロイド減量レジメンで末期腎不全/死亡率に優位差がなかったことを示したstudyで、これをもとにAAVのステロイド減量推奨ができている
※stydy design…eGFR<50の腎病変or肺胞出血を認めるGCAMPA患者を対象とした2元配置分散分析法を用いたRCT
ステロイド減量レジメン

(N Engl J Med 2020;382:622-631 補足資料より)
患者は1:1:1:1に割り付けされ血漿交換の有無、経口ステロイドの用量で4群に分類。
  • 標準ステロイド群:(CY or RTX)+点滴グルココルチコイド1-3g→1週目は体重に応じてPSL投与→2週目からの維持量は体重に応じて決定
  • 減量ステロイド群:(CY or RTX)+点滴グルココルチコイド1-3g→1週目は体重に応じてPSL投与→2週目からの維持量は標準群の半量
→グルココルチコイド減量群と標準量群の末期腎不全/死亡率に優位差は認められなかった。

 

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今回、PEXIVASに参加して寛解達成した患者の長期の再発有無を検討したstudy。

 

◎論文要約

  • Background:
    ANCA関連血管炎(AAV)の再発は重要な事象であり、臓器機能障害や生活の質の低下を引き起こす可能性がある。初期治療が再発リスクに与える影響を理解することは、モニタリングや治療の指針となる可能性がある。
  • Method:
    PEXIVAS試験の事後解析として、重症AAV患者704名のうち寛解達成した649名を対象に、血漿交換(PLEX)の有無とグルココルチコイド減量レジメンの効果を比較した。3つの競合リスク時間依存性モデルを用いて、再発リスクへの治療効果を推定した。
    • モデル1…PEXIVAS試験の最小化層で使用された変数のみ
    • モデル2…クレアチニンと透析の必要性を細分化し、性別、新規または再発AAVの有無、登録時のBVAS/WGスコアを追加
    • モデル3…モデル2の変数+腎臓病変を除く臓器系別に疾患活動性を細分化し、肺病変は出血性肺疾患と非出血性肺疾患に分類
  • Result:
    • PEXIVAS参加者649人(92.2%)が研究対象
    • 寛解は中央値86日で達成。追跡期間は1,991patient-years(中央値3.0年)
        • 再発リスク増加…PR3-ANCA陽性(Model1-3)、非出血性肺疾患(Model3)
        • 再発リスク低下…寛解導入療法として内服シクロホスファミド(Model1-3、静注シクロホスファミドとの比較)、透析導入(Model2,3)
        • 再発リスクと関係なし…血漿交換療法、減量ステロイドレジメン
    • 649名中147名(22.7%)が204回の再発を経験し、再発率は100患者年あたり10.3回だった
      • ※どの程度の再発かの言及はないが、おそらくは軽度の再発が多いと思われる
    • 再発リスク因子としてPR3-ANCA陽性、導入療法としてのシクロホスファミド静注投与、非出血性呼吸器症状の存在、透析非実施の4つを同定→リスクのない患者と比較して再発リスクが高い
  • Discussion:
    • 重症AAV患者のコホートでは再発が多いが、PLEXまたはグルココルチコイドレジメンの再発への影響はみられなかった→PEXIVASの減量レジメン推奨でいいと思われる
      • PLEXの腎不全抑制効果は不明だが、持続的な効果は乏しいものと思われる
    • 寛解導入療法として、経口シクロホスファミド(POCY)は静注シクロホスファミド(IVCY)に比べて再発が少ない(※RTXとの比較については本研究では検討なしの点に注意)
    • 再発リスクとしてPR3-ANCA陽性、導入療法としてのシクロホスファミド静注投与、非出血性呼吸器症状の存在、透析非実施の4つが同定→再発リスクの高い患者の同定に役立つかもしれない
 

◎まとめ

  • ANCA関連血管炎の重症患者において、血漿交換やステロイド減量レジメンは再発リスクに影響を与えなかった。
  • PR3-ANCA陽性、非出血性呼吸器症状の存在が再発リスク増加と関連
  • 経口シクロホスファミドの使用や透析導入は再発リスク低下と関連
 

◎感想

  • あくまでもPEXIVASの事後解析であり、欧米の重症AAVが対象という点には注意が必要
  • 4つの再発リスク因子が同定されているが、PR3-ANCA陽性を除くと疑問な点が多い印象
    • POCYが再発リスク低下に寄与、と言われても実臨床的な使用はかなり厳しいと思う(RTX使用困難例に限るため)
    • 透析が再発リスクに低下というのも、透析になって離脱できなかった人がenrollできなかったという点には注意?
    • AAV関連非出血性肺疾患という概念も微妙な概念で、sHR1.44 (1.003–2.07)というのはあまりに怪しい数値
  • ステロイド減量・PLEX非実施でも3年再発は変わらなかった(統計的有意性はなかった)という点だけ、覚えておけばいい気がする。

 

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