膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

仙腸関節炎評価のためのMRI画像プロトコル(ASAS-SPARTAN)

Lambert RGW, Baraliakos X, Bernard SA, et al. Development of international consensus on a standardised image acquisition protocol for diagnostic evaluation of the sacroiliac joints by MRI: an ASAS-SPARTAN collaboration. Ann Rheum Dis. Published online August 6, 2024. doi:10.1136/ard-2024-225882
ASASで提唱されていた仙腸関節MRI撮像プロトコル推奨が論文化。仙腸関節MRIオーダーの均一化に役立つ。
 

 

  • Background: 仙腸関節(SIJ)のMRIプロトコルは臨床でさまざまに使用されているが、世界的に標準化された診断用SIJ MRIプロトコルは存在しない。
  • Objective: 仙腸関節炎の診断評価のための標準化された、最小要件でのMRI画像取得プロトコル(IAP)を開発すること。
  • Methods: ASASとSPARTANの放射線科医13名と2名のリウマチ専門医が合意形成に参加して作成
  • Results: 仙腸関節炎とその鑑別診断の診断評価のために、最小4シーケンスのIAPが推奨された。
    • (1)T1強調画像…脂肪、構造的損傷の検出
    • (2)T2強調脂肪抑制画像…活動性炎症の検出
    • (3)T1強調thin slice画像…びらん病変の検出
    • (4)T2強調脂肪抑制…活動性炎症の検出
    • S2椎体の背側皮質に平行な斜冠状断シーケンスで以下の3つを撮影する
    • 斜冠状断に垂直な斜軸位断
表: 軸性脊椎関節炎の仙腸関節診断評価のための標準化MRI撮像プロトコル
撮像方向 シーケンス スキャン時間 (分)
対象病変
斜冠状断(S2椎体背側皮質に平行と定義) T1強調スピンエコー(脂肪の検出) 2–3分
 (1.5T–3分) (3T–2分)
構造的損傷 脂肪病変、びらん、硬化、backfill、強直
T2強調脂肪抑制(骨髄浮腫の検出)STIR、T2FS、T2-Dixonまたは同等 2–4分
 (1.5T–4分) (3T–2–3分)
活動性炎症 骨髄浮腫、関節包炎、付着部炎、関節腔内液体、びらん腔内の炎症
T1強調thin slice(びらん病変の検出)
T1強調3Dグラディエントエコーを強く推奨。脂肪抑制も推奨。
4分
 (1.5Tでの2D T1FS–4分)
 (3Tでの3D T1FS–4分)
構造的損傷 関節表面のびらん、関節腔幅の変化(拡大、狭小化、強直)
OAでより一般的な所見…関節内ガス、骨棘、関節外骨橋、軟骨下嚢胞
斜軸位断(斜冠状断に垂直と定義) T2強調脂肪抑制(骨髄浮腫の検出)STIR、T2FSまたは同等。T2 Dixonが好ましい場合もある。(骨盤全体を含むことを推奨) 2–5分
(撮像時間はスライス数、Dixon、空間分解能、テスラ強度により異なる)
活動性炎症 骨髄浮腫、関節包炎、関節腔内液体、びらん腔内の炎症
骨盤:恥骨結合周囲骨髄浮腫(恥骨骨炎)、骨盤付着部炎、股関節炎
注:4シーケンスプロトコルの総撮像時間は施設により異なる。通常の総スキャン時間は15分。3テスラでは10分程度で可能。STIRを高速(ターボ)スピンエコーシーケンスに置き換えることで撮像時間が短縮可能。骨盤の広範囲撮像にはより長時間が必要。
BME:骨髄浮腫、3D:3次元、OA:変形性関節症、SIJ:仙腸関節、STIR:hort Tau Inversion Recovery、T2FS:T2強調脂肪抑制
※ backfill…不整になった関節裂隙の中にT1WIで高信号を呈する構造物が充満した状態
 
◎感想
仙腸関節炎はMRIで評価する他ないので、MRIオーダー方法は覚えておいたほうがいい。
  • activeな炎症だけでなく微小な骨びらん有無も拾ったほうがいいの→T1 thin-sliceを撮像推奨、というのは勉強になった
  • ただ2mmスライスでT1撮像できるかは施設にもよりけり?
→施設の放射線MRI担当の方と話して
  • 仙腸関節炎評価として斜冠状断・斜軸位断が必要
  • 骨びらん検出としてT1thin sliceが必要とされる
という2点を確認したうえで上記の4シーケンスプロトコル(15分)を仙腸関節プロトコルとして登録してもらうといいかもしれない。
 
ただSpAの場合、仙腸関節炎だけでなくL1-3あたりの腰椎に付着部炎所見があったりするので、撮像部位が仙腸関節に絞っていいのか悩ましい。撮像時間・画像の解像度と施設のMRIの潤沢度と総合して実施する他ないだろう。あくまで本論文は海外基準での推奨なので、MRIが有り余っている日本なら腰椎+仙腸関節で撮像しても良さそうな気もするが…