Clin Exp Rheumatol. 2019;37(1):37-43.
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関節リウマチ(RA)の抗体といえば、リウマトイド因子(RF)・抗CCP抗体(ACPA)がある。
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RF・ACPAが陽性の関節リウマチは「血清反応陽性関節リウマチ(Seropositive RA)」と呼ばれる
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一方でRF・ACPAが陰性の関節リウマチも存在し、「血清反応陰性関節リウマチ(Seronegative RA)」と呼ばれる
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ただ、Seronegative RAと暫定診断された血清反応陰性関節炎患者がフォロー中に診断が変わる、というのは日常茶飯事である
→Seronegative RAと暫定診断された血清反応陰性関節炎患者を長期フォローしていった結果、最終的に診断が変わったかを調べた
結論的には、リウマチ性多発筋痛症・乾癬性関節炎・変形性関節症・体軸性脊椎関節炎・反応性関節炎・結晶性関節炎などが多かった。
【Method】
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フィンランドの病院(ユヴァスキュラ中央病院)での単施設後ろ向き研究
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対象患者
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変形性関節症・痛風などは除外
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10年間のフォロー中の情報に基づいて、以下の基準で再分類
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※ASAS分類基準
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変形性関節症(OA)…X線の典型的なOA所見、炎症所見がない
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若年性関節炎…16歳未満での発症・典型的な臨床経過
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腫瘍随伴性関節炎…RA発症後6−12ヶ月以内に悪性腫瘍と診断
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抗ARS症候群…抗Jo-1抗体陽性で間質性肺疾患がある
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脊椎関節炎…SpAのASAS分類基準、PsA所見(CASPAR分類基準)を満たす
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PMR…典型的な多発筋痛症状・RAのような関節炎がなく、ACR/RULARのPMR分類基準を満たす
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結晶性関節炎…関節X線で典型的な軟骨石灰化があり、特徴的な臨床像、滑液検査で結晶陽性(結晶陽性例で確定診断・そうでない場合は疑い)
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その他
【Result】
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435人の血清反応陰性関節リウマチを組み入れ→10年後までフォローできたのが272人
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当初の435人中218名が1987年ACR/EULARのRA分類基準を満たしている
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女性69%、平均年齢59歳
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関節リウマチに分類されたのは3%(13例)
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4例…血清反応陽性RA(抗CCP抗体が2例、RFが2例[基準値の2倍以上])
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9例…RAに典型的な骨びらん
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再分類された中で多かった疾患は、PMR・乾癬性関節炎・変形性関節症・体軸性脊椎関節炎・反応性関節炎・結晶性関節炎
◎再分類された疾患
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リウマチ性多発筋痛症(PMR)…68例(16%)
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高齢者が多い、全員びらん性骨変化なし
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68例中2例でGCA合併あり
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乾癬性関節炎(PsA)…46例(11%)
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Dactylitis・非対称性少関節病変・脊椎病変・X線所見(関節近傍の骨新生・pencil-in-cup病変)が多い
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乾癬性関節炎に診断が変わった患者の特徴
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変形性関節症…45例(10%)
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大半は男性
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体軸性脊椎関節炎(SpA)…38例(8.7%)
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HLA-B27測定してみると、陽性例が多い(19/25)
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強直性脊椎炎・軸性SpAと診断された患者は全員HLA-B27陽性かつ画像上の仙腸関節炎あり
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SpAに診断が変わった患者の特徴
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反応性関節炎…15例(3.4%)
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痛風…10例(2.3%)
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全員男性
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10例中8例は滑液中に尿酸結晶検出
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偽痛風…17例(3.9%)
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82%が女性、高齢者が中心
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17例中3例は滑液中にピロリン酸カルシウム結晶検出
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17例中14例は所見で診断…症状のある関節の石灰化・典型的臨床症状
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傍腫瘍性関節炎…6例(1.4%)
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悪性腫瘍内訳…リンパ腫(1名)、子宮体癌(1名)、卵巣癌(2名)、肺癌(2名)
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その他
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思春期に初期関節炎症状があり、経過観察で判明
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6例中4例でX線上の骨破壊あり
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若年性関節炎…6例(1.4%)
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血管炎…2例(0.5%)
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1名はGPA(PR3-ANCA陽性・HRCTでの浸潤影)
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ヘモクロマトーシス…2例(0.5%)
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MCP関節橈骨側にフック状の骨棘あり、HFE遺伝子変異あり
◎分類困難だったもの
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140名(32%)は、明確な診断名に分類できなかった
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41例…一過性関節炎(自然消退)
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47例…分類不能脊椎関節炎
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SpAの特徴はあるが、ASAS分類基準は満たさない
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49例…特定不能
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ベースラインで1987年ACR/EULARのRA分類基準を満たしているのは26例(53.1%)
【Discussion】
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Seronegative RAを長期にフォローした研究は非常に稀
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先行研究…Seronegative RAを長期フォローすると、脊椎関節炎疑いに分類されることが多い(Clin Rheumatol 2002; 21: 353-6.)
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PMR、SpA、PsA、Erosive OAなどは初期段階ではSeronegative RAを模倣する
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Seronegative RAは長期フォローすることで真の診断を明らかにすることができる
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Seronegative RAで激しい骨びらんを起こすことは比較的稀→Seronegative RAで激しい骨びらんがあった場合、再度の鑑別を考慮すると良い
【感想】
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”Seronegative RA”はやはり「暫定診断」でしかなく、診断が変わることは非常に多い。一方で患者は疼痛緩和を望んでいるので診断できないながらに治療をすることになるので、注意が必要
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特に引き継ぎ症例(自分で診断したわけではない症例)での”Seronegative RA”は注意が必要だろう
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変化する先で最多なのは、分類不能SpA、次いでPMRというのは実臨床にあった感覚
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RA・SpA・PMR全てに、MTXが多少なりとも効くというところで救われていると思う
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“Undifferentiated peripheral SpA”は、コモンかつ見落とされている疾患群なのだろう
参考: