Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710.
J Child Orthop (2015) 9:19–27
SAPHO症候群(Synovitis-Acne-Pustulosis-Hyperostosis Osteitis:滑膜炎、痤瘡、膿疱症、骨硬化、骨炎)は、胸部・鎖骨を中心とした硬化性/肥大性骨関節病変が特徴となる疾患である
雑多な疾患の寄せ集めであるが、特に脊椎関節炎が近く、前胸壁・脊椎・仙腸関節・付着部炎を伴う末梢関節炎が特徴的である。
◎診断について
大きく支持されている診断基準があるわけではないが、2つの診断基準が存在する
診断基準を見てもらえば分かる通り、かなり疾患概念は曖昧。
①前胸壁骨炎所見(±皮疹)がある or 特徴的な皮疹(掌蹠膿疱症など)があり骨関節病変がある
②感染症・腫瘍等の他疾患が否定的
という2点が満たされている患者群を「SAPHO症候群」と総称しているに過ぎない。
鑑別疾患は列挙すると以下の通り
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悪性腫瘍…リンパ腫、骨肉腫、骨転移、Paget病
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その他…乾癬性関節炎、Tietze症候群、Sweet症候群
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小児疾患…DIRA、Majeed症候群、Ewing肉腫、組織球症
完全な除外のためには骨生検が有用だが、ハードルは高い
◎SAPHO症候群と考えられる患者群
SAPHO症候群と見なされている患者群は列挙すると以下のようになる
①SAPHOらしさが高い
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掌蹠膿疱症(J Am Acad Dermatol 2015;72(3):550–3.)
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重症ざ瘡・汗腺膿瘍に伴う骨関節炎…前胸壁等での骨炎・骨硬化、炎症性滑膜炎、仙腸関節炎、脊椎炎・脊椎椎間板炎
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孤立性無菌性骨過形成・骨膜炎
②SAPHOと考えても良い
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炎症性腸疾患(IBD)に伴うSAPHO似特徴的な骨関節所見(前胸壁の骨炎・関節炎)
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慢性再発性多巣性骨髄炎…小児に多く、脊椎・四肢の関節病変を起こす
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尋常性乾癬に伴う前胸壁の骨炎・骨増殖
◎画像所見
SAPHOかどうかを判断するのは、前胸壁の骨炎の画像での検出が最も重要となる。
見られる所見は脊椎関節炎(SpA)で見られる所見とほぼ同様
画像所見錠特に重要なのは胸鎖関節・胸骨・胸肋関節と言った前胸部の画像所見である。
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前胸壁には多くの靱帯付着部があるため、付着部炎所見もよく見られる
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参考:脊椎関節炎(SpA)の前胸壁痛
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前胸部の炎症所見には3つのステージがある(Int J Oral Maxillofac Surg 29:49–53)
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Ⅰ:胸鎖靱帯、一次性付着部症の可能性あり
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Ⅱ:鎖骨内側、第1肋骨、隣接胸骨の硬化、肋軟骨の硬化性肥大を伴う胸鎖関節への進展
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Ⅲ:鎖骨・胸骨・肋骨上部の内側端の骨硬化、骨過形成、隣接する関節の関節炎
①X線写真
初期に変化が見られることは少ないが、アクセス性は良い
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A:左鎖骨のびまん性硬化と骨肥大、B:炎症による溶骨性変化(Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710.)
②CT
骨硬化・溶骨性変化を見るのに適している
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右胸鎖関節の骨硬化を伴う骨びらん性変化(Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710.)
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椎体前角部の骨硬化・骨びらん(Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710.)
③MRI
初期の浮腫性変化を捉えられる検査
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T1強調画像:椎体前角部の骨硬化・骨びらん(Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710.)
④骨シンチグラフィー
炎症部位の特定に有用
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前胸部の骨への取り込み亢進="bull's head"パターン(Rheum Dis Clin North Am. 2016;42(4):695-710.)