膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

Covid-19とDMARDs休薬

2022年8月現在Covid-19感染が蔓延しており、外来患者への影響が大きい。DMARDs休薬についてよく問い合わせがあり、2020年頃に公表されたガイドライン・Covid-19以外の感染症時の対応と同様にやっている。久しぶりにACR/JCR/EULARの推奨を見てみたが、ほぼ更新はなかった。備忘録的に一応まとめてみた。

アメリカリウマチ学会(ACR)

2020年12月が最終更新のため注意。ワクチンの休薬と同様、相当休薬に傾いた推奨。
 

SARS-CoV-2曝露後の安定した患者(COVID-19関連症状なし)の継続的治療

※SSZ:サラゾスルファピリジン、HCQ:ヒドロキシクロロキン、CQ:クロロキン、MTX:メトトレキサート、LEF:レフルノミド
 

◎COVID-19感染確定/疑い時のリウマチ性疾患の治療

◎Covid-19後の治療再開

②日本リウマチ学会(JCR)

Q3−3:患者さんから『免疫抑制剤や生物学的製剤をどの様にしたら良いか』という質問を受けた場合の対応はどの様にしたら良いですか?
A:現時点では、免疫抑制剤や生物学的製剤が、新型コロナウイルス感染やCOVID-19発症のリスクを上昇させるというエビデンスは報告されていません。これらの薬剤の減量・中止によって原疾患の再燃や増悪を来す懸念があること、疾患活動性の制御が不十分な状態がCOVID-19の重症化(死亡)リスク因子となる可能性があること1)などから、抗リウマチ薬、ステロイド免疫抑制剤、生物学的製剤は原則として同じ用量で継続投与とし、新型コロナウイルス感染の兆候がある場合は、これら薬剤は機序的に重症化のリスクが考えられますので、ステロイドは原則同じ用量で維持、MTXや免疫抑制剤、生物学的製剤は減量や投与の一時的延期などを検討ください。
 
ステロイドは継続、その他は専門医の裁量に委ねられている
 

③ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)

現状出ている最新の推奨は2021年12月(Ann Rheum Dis. 2022;annrheumdis-2021-222006.)

ということでEULARは、「個々のかかりつけ専門医に相談すること」を推奨しており、一律の休薬等は設けていない。
 

④結局どうするのか?

Covid19の重症リスクとして免疫抑制療法中があることは確かだが、休薬のよって得られるメリットは不透明である。そもそも上記ガイドラインにも確たるエビデンスがあるわけではなく、エキスパートオピニオンの域を出ない。Covid19流行前の他感染症に対してのデータをもとに、上記推奨が出ているものと思われる。
一方で安易に休薬すると原病が悪化することは確かである。
個人的にはJCRに沿って実施中→ステロイドは継続、それ以外に関しては積極的/一律な休薬は実施せず、詳細は個々症例と相談している。
 
雑多にまとめると以下の通り(個人の意見です)
  • ステロイドはどんな状況でも絶対継続
  • 濃厚接触(暴露あるが症状なし)…基本的には治療継続。患者の心配度が高い・重症リスク高い・DMARDs休薬しても原病悪化リスク低い際は、ACRのように短期休薬してもいいかもしれない。ただそれで原病が悪化したら元も子もないと思うが…。
  • 感染確定(無症状~軽症)…原病が安定している場合、患者に休薬リスク/ベネフィットを説明した上で1週間程度休薬していいと思われる。2週休薬はフレアリスクが高そうであり、あまり現実的ではないと個人的には思っている。
    • 参考:RA患者に対してのワクチン接種時のMTX2週間休薬は、RA症状悪化多かった(Ann Rheum Dis. 2022;81(6):889-897.)
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      ctd-gim.hatenablog.com

  • 感染確定(中等度以上)…非常に難しく、症例ごとに慎重に相談が必要。原病安定しているなら休薬してCovid-19に集中、不安定のときは感染症の治療内容と要相談。
 
要するに「原病が安定しているなら休薬をトライしてもいいが、積極的にやって意味があるかどうかはよくわからない」というのが現実。休薬について考えるより、ワクチンを始めとした感染予防のほうが遥かに大事なのだろう。