膠原病・リウマチ一人抄読会

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EGPAへの推奨(Nature Review)

Nat Rev Rheumatol. 2023;19(6):378-393.
 
多発血管炎性好酸球性肉芽腫症(EGPA)の診断・治療へのエビデンスベースの推奨。大体EULAR・ACRの推奨とほぼ同じ内容。

◎包括原則

  • 多発血管炎性好酸球性肉芽腫症(EGPA)患者は、専門家によっってor専門家と連携して管理され、最良の治療が提供されるべきである
  • EGPAは、患者と医師が意思決定を共有し、安全性・有効性・コストを考慮した上で、学際的治療によって管理されるのがベストである
  • EGPA患者は教育を受け、本疾患に関連するリスクを認識すべきである
  • EGPA患者のQOLの改善は、生存、臓器機能の長期維持、疾患再燃の予防などの臨床的アウトカムとともに重要な目標である。
  • EGPA患者は、治療関連および心血管合併症のスクリーニングを受けるべきである。心血管リスクと治療関連合併症を軽減するために、予防と生活習慣指導を受けるべきである。
 

◎Statement

  1. EGPAの診断は、喘息・慢性副鼻腔炎好酸球増加がある患者において、end-organ病変(特に末梢神経障害、肺浸潤、心筋症、皮膚、消化器、腎臓)の合併症)が発症した場合考慮すべきである
  2. EGPAの診断基準はない→EGPAの診断は、特徴的な臨床所見・血管炎の客観的所見(例:組織所見)・ANCAに基づくべきである
    • 分類基準(1990年ACR基準および2022年ACR-EULAR基準を含む)は、感度と特異度を確立しているが、診断基準として使用すべきではない。
    • 他の基準(MIRRA試験で使用された基準など)は専門家の意見に基づいており、検証を必要とする。
    • EGPAの診断基準はいくつか作成されているが、診断の妥当性が確認されたものはない
    • 参考:EGPAの2022年基準(ACR/EULAR)
  3. 診断…EGPAが疑われる患者の診断評価は、常に集学的であるべきである。他の好酸球性疾患や血管炎性疾患を除外し、ANCAや好酸球増加とともに、主な疾患合併症、特に心臓、呼吸器、皮膚、腎臓、神経系の病変を調査すべきである。生検は可能であれば推奨されるが、EGPAの診断に必須ではない。
  4. ANCA測定…EGPA が疑われるすべての患者において、ANCA 検査を実施すべきである。ANCAはEGPA患者の30~40%で検出可能であり、そのほとんどがMPO-ANCA陽性である。MPO-ANCA陽性の患者は、糸球体腎炎、神経障害、紫斑病などの血管炎の特徴を示すことが多いが、ANCA陰性の患者は心筋症や肺病変を示すことが多い。
  5. EGPA寛解とは、喘息や耳鼻咽喉科的症状を含め、活動性疾患に起因する臨床症状や徴候が認められないことと定義される。寛解の定義には、グルココルチコイドの1日投与量も考慮する必要があり、プレドニゾンの1日最大投与量7.5mgをカットオフ値として選択することができる。
  6. 寛解導入療法は、予後に関連する臨床症状に基づいて調整されるべきである。寛解導入療法を選択する際には、Five-Factor Scoreに含まれる臓器を脅かす症状(腎機能不全、蛋白尿、心筋症、消化管、中枢神経系病変)、末梢神経障害、その他のまれな症状(肺胞出血など)を考慮すべきである。
  7.  新規発症の活動性 EGPA 患者の寛解導入には、初回治療としてグルココルチコイドを投与すべきである。重症の患者(ステートメント6で説明した予後不良因子)では、シクロホスファミド、または代替療法としてリツキシマブを追加すべきである。重症でない患者では、グルココルチコイドのみを使用すべきである。
  8. 寛解維持のために、重症 EGPA 患者では、リツキシマブ、メポリズマブ、または従来の DMARDs とグルココルチコイドの併用を推奨する。非重症EGPA患者では、グルココルチコイドの単独投与またはメポリズマブとの併用投与を推奨する。グルココルチコイドは毒性を軽減するために最小有効量まで漸減すべきである。
  9. EGPAの再発は、寛解期後の活動性疾患に起因する臨床症状または徴候の再発と定義される。グルココルチコイドの増量、免疫抑制剤の開始または増量が必要な場合も再発とみなす。全身性血管炎の再発または新たな発症(全身性の再発)は、喘息および耳鼻咽喉科症状の単発的な増悪(呼吸器系の再発)と区別する必要がある。
  10. 再発はタイプ(全身性か呼吸器性か)と重症度に応じて治療すべきである。重症の全身性再発に対しては、グルココルチコイドを併用したリツキシマブまたはシクロホスファミドの使用を推奨する。非重症の全身性および呼吸器性の再発に対しては、グルココルチコイドの増量および/またはメポリズマブの追加を推奨する。
  11. 難治性 EGPA は、適切な寛解導入療法を 4 週間行った後でも、疾患活動性が変化しないか、上昇し ているものと定義される。全身症状の持続または悪化は、呼吸器症状と区別する必要がある。
  12. IL-5阻害薬メポリズマブとグルココルチコイドの併用は、臓器や生命を脅かす症状のない再発難治性EGPA患者の寛解導入に推奨される。メポリズマブは寛解維持にも使用でき、特に呼吸器症状のコントロールのためにプレドニゾンの1日投与量が7.5mg以上を必要とする患者には有効である。
  13. 活動性の喘息または耳鼻咽喉科的病変を有するEGPA患者では、外用療法および/または吸入療法を最適化する必要がある。これらの疾患の管理には、呼吸器専門医や耳鼻咽喉科専門医などの専門医の関与が必要である。
  14. 小児、高齢者、出産適齢期の女性、合併症を有する患者など、特殊な患者集団では、必要に応じて治療方針を変更すべきである。異なる表現型(ANCA陽性とANCA陰性など)が異なるアプローチを必要とするという証拠はまだない。
  15. 一部の臨床検査値(例えば、好酸球数やANCA)は一般的にモニターされているが、EGPAの疾患活動性を測定する信頼できるバイオマーカーは存在しない。したがって、疾患活動性は、有効な臨床的手段を用いてのみ追跡調査時に評価されるべきである。
  16. 肺機能、心血管イベント、神経学的合併症を中心としたEGPA関連症状の定期的なモニタリングが推奨される。併存疾患(がん、感染症骨粗鬆症など)の長期モニタリングも推奨される。
 

◎EGPA治療アルゴリズム

  新規発症活動性EGPA
重症 非重症
疾患の層別化
FFS≧1、末梢神経障害、肺胞出血その他の臓器・生命を脅かす症状
FFS=0かつ以下なし(末梢神経障害、肺胞出血その他の臓器・生命を脅かす症状)

寛解導入
(ステロイドパルス後の)
高用量ステロイド経口投与
+ CyC or RTX
ステロイド単剤

寛解維持
+RTX and/or Mepolizumab and/or DMARDs
ステロイド + Mepolizumab
※FFS…Five Factor Score、EGPAの予後因子のスコア(Medicine (Baltimore). 1996;75(1):17-28.)
  1. 蛋白尿(>1g/day)
  2. 消化器症状
  3. 腎機能障害(Cre>1.58mg/dL)
  4. 中枢神経障害
  5. 心筋症
CyC: シクロホスファミド、RTX: リツキシマブ
 
  再発性EGPA
重症 非重症
疾患の層別化 重症全身症状の再発 非重症全身症状or呼吸器症状の再発

治療
(ステロイドパルス後の)
高用量ステロイド経口投与
+ CyC or RTX
ステロイド単剤
or ステロイド+Mepolizumab
吸入療法の最適化