膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

EGPAへのBenralizumab

 Benralizumab for eosinophilic granulomatosis with polyangiitis [published online ahead of print, 2023 Aug 7]. Ann Rheum Dis. 2023;ard-2023-224624. doi:10.1136/ard-2023-224624
  • Benralizumab(ファセンラ®)は、好酸球除去能力が非常に高いIL-5α受容体抗体で、気管支喘息にのみ日本では保険適用がある。
  • 血管炎の推奨では好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)へのIL-5抗体としてはMepolizumabのみ推奨があり、Benralizumabはデータ不足のため推奨に入っていない
→EGPAへのBenralizumabの効果についての後方視点での研究

【Method】

データベースを利用したレトロスペクティブ研究
患者…再発/難治性EGPAに対してBenralizumabを投与された18歳以上の患者
  • Benralizumab投与方法は4週間ごとに30mgを3回、8週間ごとに30mg(日本の用法と同様)
アウトカム
  • Primary Outcome…完全寛解(BVAS0点・PSL≦4mg/d)
  • Secondary Outcome…部分寛解(BVAS0点・PSL≧4mg/d)、寛解失敗(Primary/Secondary failure)、PSL離脱率、安全性など
    • Primary failure…完全・部分寛解が得られないこと
    • Secondary failure…喘息・頭頚部症状、血管炎の再燃でBenralizumab投与後に免疫抑制療法を強化したこと
 

【Result】

68人の患者が対象…年齢中央値は50歳、ANCA陽性例は29%
  • 46%がMepolizumab投与歴があり、約半数でMepolizumab効果不良
  • Mepolizumab投与歴のある患者の特徴…血中好酸球数が少ない、経過が長い、ANCA陽性が多い、BVASが低い、心病変頻度が低い
  • Benralizumab投与時のPSL≧7.5mg/d患者が66%
  • →Mepolizumab効果不良・PSL漸減困難例で使用が多い
 
◎効果
  • 奏効率
    • 完全寛解…33名(49%)の患者が中央値8ヶ月以内に達成
    • 部分奏効24名(36%)、寛解失敗10名 (15%)
    • initial responseを得た57 例中、10 例(18%)でSecondary failureが発生
      • Mepolizumab先行投与群では、非先行投与群と比較して寛解達成率・ステロイド漸減効果が低く、Primary failure率が高い
  • ステロイド漸減効果
    • ベースラインPSL投与量中央値10mg/d→6ヶ月で6mg/d→12ヶ月で5mg/d→24ヶ月で0mg/dまで漸減
  • その他
    • 好酸球数はほぼ全例で検出感度以下、FEV1も安定
  • 寛解のリスクの単変量解析
    • 完全寛解率が低い…生検(皮膚・筋肉・皮膚など)での血管炎証明例、ANCA陽性例
    • 完全寛解率が高い…Benralizumab開始時に好酸球数>300/mm^3
 

【Discussion】

  • BenralizumabはEGPAの再発・難治例に対して有用と思われた
  • 基礎研究においてBenralizumabはMepolizumabよりも好酸球枯渇を誘発し、臨床効果が高い可能性が示唆されている。ただ、Mepolizumab無効例に対してのBenralizumabは効果が低い
  • またBenralizumabは血管炎の特徴を持つ患者には効果が少なく、血管炎フレアが起こりやすい
  • Benralizumabの安全性プロファイルは良好
 

【感想】

  • EGPAは2つのサブセットに分かれる・・・「血管炎」症状を起こすANCA陽性型・「好酸球性」症状を起こすANCA陰性型
  • 好酸球性症状に対してはMepolizumabの有効性が示唆されているが、Benralizumabに関してもほぼ同様
  • 逆にMepolizumabがあまり有効ではない血管炎症状には、Benralizumabは有用ではない模様
  • Benralizumabは好酸球除去能力が高いのでMepolizumabによりも有効そうな印象を受けるが、大して差がない模様・・・Mepolizumab無効例はBenralizumab無効例が多い
  • EGPAは好酸球を減らせば良くなるという病気ではないので、個々の症例に応じて難治性の好酸球症状に対してはMepolizumab/Benralizumabを使うというのがいいのだろう
  • Benralizumabは8週間隔投与であり、Mepolizumabと比べれば自己注射不要・比較的安価なので、使用意義はあるだろう

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