膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

CPPDの新分類基準(2023ACR/EULAR)

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2023-224575.
CPPD(calcium pyrophosphate deposition disease: ピロリン酸カルシウム沈着症/偽痛風)の新規分類基準が発表された。

 

6か国の13施設のリウマチ専門医が418人の患者プロファイルを提出→コホートを作成して、その特徴から分類基準を作成
→ 感度97.8%、特異度87.9%

 

CPPD ACR/EULAR分類基準
以下の順序で適用されるべき
  1. エントリー基準…関節痛or腫脹or圧痛を少なくとも1回経験したことがある*
  2. 絶対的除外基準…全症状が他の疾患(関節リウマチ、痛風、乾癬性関節炎、変形性関節症など)で説明できる可能性が高い
  3. 十分基準Crowned dens syndromeまたはCPP結晶を示す滑液所見が、腫脹or圧痛or疼痛のある関節に存在する†
 
  • エントリー基準を満たす、かつ除外基準を満たさない、かつ1つ以上の十分基準が満たされた場合、CPPDと分類する。
  • 十分基準を満たさない場合、基準の合計点数が 56 点以上の場合に CPPD 疾患と分類する
基準のスコアリング
項目は、患者の生涯の間に存在したものであればスコア可能。
同一ドメインで複数項目を満たす場合、最高得点の項目のみスコアされる。
CR、US、CT、DECTのうち少なくとも1つの症候性関節の画像が必要。
ドメイン 点数
A. 関節症状(関節痛or腫脹or圧痛)の発症年齢
 ≦60歳 0
 >60歳 4
B. 関節炎の経過・症状‡
 持続的or典型的な関節炎がない 0
 持続性関節炎 9
 単回の典型的な急性関節炎発作 12
 複数回の典型的な急性関節炎発作 16
C. 典型的な関節炎発作を起こした末梢関節部位
 第1MTP関節 -6
 典型的な発作なし 0
 手・膝・第1MTP関節以外の関節 5
 手関節 8
 膝関節 9
D. 関連する代謝性疾患§
 なし 0
 あり 6
E. 症状のある関節からの関節液結晶分析¶
 2回実施してCPP結晶なし -7
 1回実施してCPP結晶なし -1
 未実施 0
F. 手関節/手画像でのOA(K/Lスコア≧2と定義)
 以下の所見がなしor手関節/手の画像診断未実施 0
 両側橈骨手根関節のOA 2
 以下の所見のうち2つ以上:
  • 第1CMC関節OAを伴わないSTT関節OA
    • ※STT関節:舟状大菱形小菱形骨間関節
  • 第2MCP関節OA
  • 第3MCP関節OA


7
G. 末梢関節の画像診断でのCPPD所見**
US、CT、DECTで所見なし(かつ、CRでも所見なしorCR未実施) -4
CRで所見なし(US、CT、DECT未実施) 0
CR、US、CT、DECTのいずれかで所見あり 16
H. 症状の有無にかかわらず、いずれかの画像検査でCPPD所見を示す末梢関節数**
 0 0
 1 16
 2-3 23
 ≧4 25
  • *末梢関節に発生するエピソード(Crowned dens syndromの場合、C1/C2のような軸関節
  • Crowned dens syndromは、臨床的特徴と画像的特徴の両方で定義される
    • a)臨床的特徴…炎症マーカーの上昇、頸部回旋制限、発熱を伴う上頚部に限局した急性or亜急性発症の疼痛。リウマチ性多発筋痛症や髄膜炎などのミミック除外が必要
    • b)画像的特徴…従来のCTでは、横後歯状靭帯の線状・皮質骨より密度が低い石灰沈着で、しばしば軸像で2本の平行線(double contour)が認められる。肩甲軸関節、耳介靭帯、および/または骨梁の先端に隣接するパンヌス中の石灰化も特徴的である。二重エネルギーCT(DECT)の特徴としては、0.016~0.036の二重エネルギー指数が挙げられる。
  • ‡持続性炎症性関節炎…1関節以上の疼痛or熱感を伴う持続的関節腫脹。典型的なエピソードは、腫脹・熱感を伴う関節痛の急性発症または急性増悪を伴うエピソードで、治療に関係なく消失するもの。
  • §遺伝性ヘモクロマトーシス、原発副甲状腺機能亢進症、低マグネシウム血症、Gitelman症候群、低ホスファターゼ血症、CPPD疾患の家族歴
  • ¶髄液分析は、結晶同定のための偏光顕微鏡の使用に習熟した者が行うべき
  • **十分基準を満たさない場合、1つ以上の症候性末梢関節をCR、US、CT、DECTにより画像診断することが必要。画像所見…線維軟骨またはヒアリン軟骨の石灰化を指す。滑膜、関節包、腱の石灰化は採点しない。末梢関節の病変のみを考慮する。
 
【感想】
  • エコー所見に続いてCPPDの概念が整理されつつある印象
  • 見ての通り、非常に長い。理由としてはCPPDは本当に様々な臨床型(急性発作、慢性関節炎など)をとること、画像検査もスタンダードがないこと、滑液分析が必ずしもできないこと等が挙げられる
  • いつものことだが、診断基準ではなく分類基準である。このため、上記を満たさないCPPDも当然あって良い
  • ただCPPDの特徴を学ぶ事はできる…膝・手関節に起こりやすい、発作エピソードが特徴的、OAが背景にあることが多い、無症候性関節所見も重要など

参考