膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

低用量ステロイドと骨粗鬆症

Arthritis Rheumatol. 2023;10.1002/art.42529.

 

 

骨粗鬆症ステロイドの代表的な副作用であるが、低用量であった場合どれくらいリスクが上がるか?ということは案外わかっていない
→骨折リスクの高い女性患者に対するイタリアのデータベース(DeFRA)を元とした観察研究…リウマチ性疾患でステロイド使用中の患者844名とコントロール群1766名の骨粗鬆症所見を比較
骨粗鬆症治療を受けていないステロイド使用中患者全員において、骨密度は有意に低下
骨粗鬆症治療(主にBP製剤)は、PSL<5mg/日の患者でのみ骨量減少予防効果あり
☑リウマチ性疾患患者は骨折発生率が高いが、PSL≧5mg/日でのみ骨折リスクが有意に高かった
ステロイドは低用量であっても骨粗鬆症につながる可能性がある。

【Method】

  • データベースを使用した、イタリア在住の骨折リスクのある女性を対象にした縦断的コホート解析
  • 2012年1月~2020年1月までのデータを使用
  • 年齢、体重、身長、過去の脆弱性骨折の既往歴、ステロイド使用量、併存症、血清C-terminal telopeptide of type I collagen(CTX)値などの情報を収集
  • 解析では傾向スコアマッチング(PSM)を使用し、リウマチ性疾患患者と非患者の2:1マッチドコホートを作成
  • 解析では多変量Cox比例ハザード回帰生存モデルを使用し、BMDや他の変数を調整してグルココルチコイドとiRMDの影響を評価

【Result】

  • リウマチ性疾患でステロイド使用中の患者844名とコントロール群1766名が対象
    • 両グループの年齢、Tスコア、骨折リスクは差なし
    • 疾患…RAが約半数
    • 治療内容…無治療割合が非常に高い(PSL<2.5mgで86.6%、PSL>5mgでも66%)、治療している場合は経口ビスホスホネート(BP)が多い
  • 骨粗鬆症薬有無での骨密度の違い…大腿骨頚部密度は、骨粗鬆症薬を使用していないグルココルチコイド使用者で有意な減少あり(※ただしPSMコホートでは有意な差なし)
  • 骨粗鬆症薬を使用している患者では、PSL≧5mg/日で骨密度が有意に低下したが、2.5-5mg/日と0-2.5mg/日では有意な低下は見られなかった。
  • 骨折イベント…PSL≧5mg/日患者は、PSL<5mg/日群と比較して骨折リスクが2倍高い
  • リウマチ性疾患患者全体で骨折発生率が有意に高く、PSL≧5mg/日ではリスク最大
    • ※言及は特になかったが、経時的に骨折リスクは上昇していく
  • 血清CTX値…骨粗鬆症薬薬なしのサブグループ感で、PSL≧5mg/日患者において低値の傾向あったが、有意差なし

 

【Discussion】

 

  • PSLは2.5 mgでも骨密度に悪影響を与えるが、骨粗鬆症治療によって骨密度低下を抑制できていた
  • 一方、PSL>5 mg/日では、骨粗鬆症治療を行っていても骨密度が低下する傾向があった
  • ステロイド治療の有無にかかわらず、リウマチ性疾患患者は骨粗鬆症性骨折の発生率が高い
  • グルココルチコイドの使用は骨ターンオーバーを低下させるため、CTX血清レベルが低下する可能性がある。
  • PSL≧5mg/日の患者の骨折リスクはコントロール群よりも有意に高かった…BMDの低下だけでは完全に説明できない可能性あり
  • この研究の強みは、大規模なサンプルサイズと縦断的なデザインである。
  • limitation…あくまでも後方視点での観察研究、処方の偏り、データ不足(疾患活動度・ステロイド使用理由など)、ステロイド使用量もあくまで平均使用量

 

【感想】

ステロイド骨粗鬆症は、PSL低用量(≦2.5mg/日)なら骨粗鬆症治療で相殺できるが、PSL≧5mg/日では治療していても骨粗鬆症が進行する・骨折リスクが高くなる。
図3を見る限り、PSL≧5mgでは2−3年程度、PSL<5mgでは4-5年程度の治療で骨折イベントが多くなる傾向あり
低用量であっても骨粗鬆症治療は怠らない、PSL≧5mgの場合は骨粗鬆症治療を行っても骨粗鬆症は進行するということは覚えておいていいと思われる