膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

長期ステロイド投与患者に対してのデノスマブVSアレンドロン酸

“Denosumab versus alendronate in long-term glucocorticoid users: A 12-month randomized controlled trial" Bone. 2021;146:115902.
 
香港からのRCT→アジア人のステロイド骨粗鬆症患者において、脊椎の骨密度改善はデノスマブがアレンドロン酸よりも優れていた
 
  • 長期ステロイド投与によってステロイド骨粗鬆症(GIOP)を発症し、脆弱性骨折リスクとなる
  • それに対する治療として経口ビスホスホネート(BP)製剤やデノスマブ(プラリア®)がある
    • 経口BP製剤は週1or月1
      • 代表例がアレンドロネート
    • デノスマブは半年に1回の注射製剤
  • 小規模なRCTではデノスマブの方がBP製剤より優れているとされている
→大規模なアジア人に対してのRCTを実施

Method

P:香港の屯門医院(病床数1,935床)外来診療所で長期ステロイド治療を受けている患者
  • 選択基準…18歳以上、2.5mg/day以上を1年以上内服、閉経前の女性では避妊の実施
  • 除外基準
    • 以前にデノスマブ、テリパラチド、静注BP製剤等の使用歴がある
    • 試験開始後18ヶ月以内に妊娠を計画している閉経前の女性
    • 既知の骨障害がある患者…骨軟化症など
    • 原因不明の低カルシウム血症
    • 血清Cre≧200μmol/L(≧2.26mg/dL)
各群にカルシウム(1000mg/day)・コレカルシフェロール(VitD3)(1000U/day)を投与した上でコンピューターでランダム振り分け
I:デノスマブ(60mg)、6ヶ月おき皮下投与
C:アレンドロン酸(70mg)、毎週内服
O:Primary…12ヶ月後のグループ感での腰椎BMDの差
  • Secondary…股関節・大腿骨頚部のBMDの差、、有害事象、骨マーカー(骨吸収:β-CTX、骨形成:P1NP)の差
 

結果

  • 179人がRCTに招待→拒否等で最終的に139人がランダム化
 
  • 患者背景
    • 大半が女性(96%)、平均年齢は50.0±12.7歳
    • 基礎疾患はSLEが大半(81%)、ついでRA・炎症性筋炎・血管炎
    • PSL平均1日量は5.1±2.7mg
    • 2群間の差はほぼなし
  • 1年後のBMD変化
    • 両群とも骨密度は有意に上昇
    • 交絡因子を整理→脊椎に関しては、デノスマブの方がアレンドロン酸よりも有意に骨密度が上昇
    • 股関節・頚部に関しては有意差なし
    • 各グループ2名ずつ圧迫骨折の新規発症/増悪あり
  • 1年後の骨マーカー
    • P1NP・β-CTX共にアレンドロン酸群よりもデノスマブで有意に低下
  • サブグループ別の脊椎骨密度変化→有意差なし
    • 骨粗鬆症治療未経験、脊椎・股関節・大腿骨頸部のT score≦-2.5、以前BP製剤使用歴あり、1年以上のBP製剤使用歴あり、ベースラインでステロイド以外の免疫抑制剤の使用患者、SLE患者でそれぞれ解析→有意差なし
  • 有害事象…有意差なし
 

Discussion

  • アジア人のステロイド骨粗鬆症患者において、アレンドロン酸・デノスマブ共に骨密度を上昇させる
  • 1年後の脊椎骨密度の改善度・骨代謝マーカーの抑制度はデノスマブ>アレンドロン酸であった
    • 股関節・大腿骨頚部は有意差なし
  • 有害事象に関しては有意差なし
ステロイド骨粗鬆症の治療におけるデノスマブは骨折高リスク患者・BP製剤禁忌/不耐性患者において第一選択となりうる?
 

感想

  • ステロイド骨粗鬆症患者にはBP製剤を頻用するが、BP製剤は制約が大きい(希少直後に内服・食道潰瘍に注意等)+コンプライアンスを保つのが難しい割にきっちり飲まないと効果が薄い、と結構面倒な薬ではある
  • 一方でデノスマブは半年に1回の注射製剤であるため、医師側が管理さえしておけばコンプライアンスを用意に保てるため、結構便利な薬である
  • ステロイド骨粗鬆症に対してのデノスマブは、様々な研究で有用性が言われているが、アジア人でのRCTで一定の成果を上げたという意味で有用な論文と思われる。
    • 盲検なんかはしていないという点、サンプルサイズが小さい点には注意
  • ただ大腿骨頚部の骨密度等では有意差ないので、BP使えない/BPでの改善イマイチ/コンプライアンス不良等の条件が揃えばデノスマブ使うというだけで、まずはBP製剤という方針で問題ないと個人的には思う
  • 現在ステロイド骨粗鬆症ガイドラインとしてはACR2017ガイドラインがある(Arthritis Care Res (Hoboken). 2017;69(8):1095-1110. )が、今後デノスマブの記載が大きくなっていきそうな気はする