Dose-dependent oral glucocorticoid cardiovascular risks in people with immune-mediated inflammatory diseases: A population-based cohort study.
PLoS Med. 2020;17(12):e1003432
Answer:PSL<5mgの低用量でもリスクは用量反応性に増加する
【Method】
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自己免疫性炎症性疾患があるが、心血管疾患(cardiovascular disease,CVD)の既往がない成人87,794人(追跡期間中央値5年)を対象に、CVDイベントとステロイド使用量・累積量の関係を調べた
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自己免疫性炎症性疾患は以下の6つ…リウマチ性多発筋痛症(PMR)、巨細胞性動脈炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、血管炎、炎症性腸疾患(IBD)
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CVD…心疾患、脳卒中、その他の血管病変
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1998〜2017年の英国臨床診療研究データリンク(CPRD)上の医療記録をコホート分析した
【Result】
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計87,794人が解析対象
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患者背景
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主要な併存疾患…高血圧(25.1%)、喘息(14.6%)、糖尿病(6.4%)
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大半が白人、平均年齢58歳
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フォローアップ開始前の薬剤…経口ステロイド16.4%、吸入/点鼻コルチコイド15.2%、NSAIDs45.2%
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心血管疾患の累積発生率…ステロイド不使用の場合1.4%だが、PSL<5mgの低用量でも3.8%と上昇し、用量依存性に心血管疾患が増加する
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どの疾患であってもPSL<5mg以下での心血管疾患増加・ステロイド用量反応性の心血管疾患増加が見られた
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1年後の心血管疾患絶対リスクは、PSL<5mg/日で2倍、PSL≧25mgでは6倍になっていた
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ベースライン・併存疾患・治療等の共変数調整後も、全ての自己免疫性炎症性疾患・全ての心血管疾患で、ステロイド用量反応性にイベント増加
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ステロイド累積投与量高値も心血管疾患リスクを上げる
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→全ての心血管疾患リスクがステロイドの用量依存性に増加していた
【結論】
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ステロイドの投与を受けている人は、致死性なもの・非致死性なもの含めて様々な心血管疾患発症リスクが高い
【感想】
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ステロイドの効果は甚大であり必須の薬剤ではあるのだが、その副作用も甚大である
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この論文で述べられているように「ステロイドの安定用量」なんてものは基本的には存在せず、”As much as necessary”, “As little as possible”で使うことが絶対原則である
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ただ長期ステロイド内服患者に関しては、原病というより副腎不全の問題で2.5mg以下に減らし難い
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超低用量(PSL<2.5mg)での心血管リスクについては言及がないので気になるところではある
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少なくともステロイドある程度の期間内服する患者に関しては、心血管リスクが上がることをきちんと説明し、心血管リスク管理(高血圧・脂質・糖尿病管理、食事・運動管理、肥満是正、喫煙・飲酒の是正)くらいは必ずやったほうがいい
- 参考:ステロイド中止について