Antineutrophil cytoplasmic antibody-associated interstitial lung disease: a review. Eur Respir Rev. 2021;30(162):210123.
自己抗体陽性間質性肺炎は様々あり、強皮症・皮膚筋炎抗体陽性例に関してはある程度のコンセンサスはある印象
一方で抗好中球細胞質抗体(ANCA)と間質性肺疾患(ILD)の関連についてはかなり微妙なところがある
他の膠原病では「自己抗体によるILD」が多いのだが、ANCAに関しては、おそらく「ANCAによるILD」・「ILDがあってANCA陽性」(無関係)・「ILDによるANCA陽性」(因果が逆)という3つが入り混じっており、複雑
参考:(ANCA関連血管炎と肺病変全体のまとめ)
【疫学】
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MPO-ANCA陽性例でILD合併例が多い
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日本・中国等のアジアのANCA陽性例はILD有病率が高い→東アジアのMPO-ANCA陽性例が多いから?
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MPO−ANCA陽性例46名のうち43%がILDという報告あり(日本より)(Rheumatology (Oxford). 2011;50(10):1916-1920.)
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ANCA関連血管炎(AAV)におけるILDの有病率は、GPA23%・MPA45%と推測されている
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ANCA関連血管炎発症以前からILDが存在していることが大半
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ANCA陽性ILD
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ANCA陽性だが、肺以外に全身症状がないILDもある(ANCA陽性孤発性ILD)
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多くはAAVの全身症状なし
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ただフォローしていると、一部は血管炎臨床症状を起こす
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ANCA陽性IPFをフォロー→MPO-ANCA陽性例の25~33%がAAVを発症した(Chest. 2019;156(4):715-723.)
【病因・リスク】
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AAV発症リスク因子…遺伝子因子と環境因子両方がある
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遺伝子要因…MUC5Bなど
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MPO-ANCAが肺線維症に作用するではないか?と示唆されている
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ただ、逆に肺線維症自体が慢性炎症に伴う好中球破壊を起こし、その結果MPO-ANCA酸性を誘発するという仮説もある
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→ANCAが先か、ILDが先か、ということに結論は出ていない
【ANCA-ILDの診断】
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症状…非特異的で、ANCAの全身症状(発熱・関節痛・血尿・末梢神経障害など)・ILD症状(進行性呼吸困難・咳嗽)がある
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検査
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間質性肺疾患に対してANCAを測定すべきかはかなり微妙
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※推奨される自己抗体測定…抗核抗体、RF、筋炎パネル、抗CCP抗体(+疑うなら筋炎抗体・強皮症抗体・シェーグレン症候群抗体も考慮)
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ただ、測定を推奨するコンセンサスもある(Autoimmun Rev. 2020;19(9):102618.)
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炎症反応(CRP, ESR)上昇もよくあるが、ANCA陽性孤発性肺線維症では上昇は珍しい
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呼吸機能検査…拘束性障害が多い
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BAL所見…リンパ急上昇などの非特異的な所見が多い。肺胞出血があればヘモジデリン含有マクロファージがある。
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画像評価
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CT:UIPが最多、ついでNSIP
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病理…画像所見同様に多彩→特異的な所見なし
【予後】
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ANCA関連血管炎自体の予後は改善しているが、AAVに合併したILDは非合併例と比較して予後不良
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特にUIPパターンの場合、死亡リスク増加(Chron Respir Dis 2021; 18: 147997312199456.)
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炎症反応高値の症例も予後不良(BMC Pulm Med 2021; 21: 88.)
【治療】
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治療に関して定まったコンセンサスはない
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Mayo Clinicから報告された経験的治療は以下の通り(Clin Exp Rheumatol 2020; 38: Suppl 124, 221–231.)
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MPAを有する患者→AAVに準じた治療を実施
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肺以外に臓器病変がないNSIPパターンの患者→免疫抑制薬
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血管炎症状のないUIPパターン→免疫抑制薬は非推奨
◎治療薬
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免疫抑制薬
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非UIPパターンの症例で検討
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免疫抑制薬に使用によって呼吸機能が改善したという報告もあれば、相反する報告もある
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ステロイド+免疫抑制薬の治療が主
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使用する免疫抑制薬…ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、リツキシマブ(RTX)、シクロホスファミド(CYC)など
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抗線維化薬
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特にUIPパターン患者における進行性線維化ILD(PFILD)症例で検討される
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ニンテダニブがPFILDに承認されているため使いやすい(日本でも保険適応あり)
ANCA関連血管炎そのものへの治療は↓参照