膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

急性単関節炎の診断

 
Am Fam Physician. 2016 Nov 15;94(10):810-816.
 
関節炎は大きく分けて
・急性単関節炎 ・急性多関節炎
・慢性単関節炎 ・慢性多関節炎
に分かれるが、プライマリ・ケアの場面では結構「急性単関節炎」が来ることがある。
 
頻度が多いのは変形性関節症・結晶性関節炎・外傷だが、感染性関節炎(・敗血症性関節炎)は非常に危険→できれば関節穿刺を行うことが重要!
 

《原因》

急性単関節炎の鑑別
頻度
 疾患
Common
無血管性壊死
結晶性関節炎
関節血腫
感染性関節炎…細菌、真菌、ライム病、結核・NTM、ウイルス
関節内障、変形性関節症、骨髄炎、オーバーユース、外傷
Less common
強直性脊椎炎(AS)
骨腫瘍
IBD(自己免疫性腸疾患)関連関節炎
異常ヘモグロビン症
若年性関節リウマチ
Loose body(関節内遊離体)
乾癬性関節炎(PsA)
反応性関節炎…淋菌性関節炎など
関節リウマチ
サルコイドーシス
SLE
Rare
アミロイドーシス
Behçet病
家族性地中海熱(FMF)
異物による滑膜炎(ウニの棘など)
肥大性骨関節症
色素性絨毛結節性滑膜炎
再発性多発軟骨炎
滑膜転移、滑膜腫
成人Still病
血管炎症候群
 
  • 変形性関節症
    • 労作で増悪、朝のこわばり30分未満、非対称性の関節炎
      • ※炎症性関節炎は労作で改善、朝のこわばり30分以上、対称性関節炎が多い
    • 多い部位は、手・膝・腰・脊椎
    • 基本は慢性痛だが急性痛になることはよくある
    • 外傷等の除外のため、X線写真が必要
    • 一番多いのは母趾付け根(MTP関節)の痛み
    • 関節穿刺での尿酸結晶の証明が重要…針状の結晶
  • 感染症…関節穿刺による証明が重要
  • 淋菌性関節炎…性的活動の多い若年に多い
 

《鑑別フローチャート

《病歴からの鑑別》

 
単関節炎の鑑別の手がかり
特徴
鑑別診断
評価
関節可動域が受動>自動
例)手伝ってもらえば服を脱げる
関節周囲の病変
(滑液包炎など)
必要に応じてX線撮影・MRIなど
背部痛・目の炎症
強直性脊椎炎
HLA-B27測定、X線撮影
凝固障害・抗凝固薬内服
関節内出血
CRP、血沈、関節穿刺(感染除外)
利尿薬使用、痛風結節、腎結石
血算、血沈、尿酸値、関節穿刺(結晶評価)
肺門リンパ腺腫脹(BHL)
結節性紅斑
サルコイドーシス
血算、血沈、ACE値、胸部X線、呼吸器内科に紹介
免疫抑制剤、静注の薬物乱用
敗血症性関節炎
血算、血沈、関節穿刺(細胞数・培養)
数日〜数週間前からの緩徐な疼痛・腫脹
無痛性の感染
変形性関節症
浸潤性疾患
腫瘍
血算、血沈
関節穿刺(細胞数・培養)
X線撮影
腫瘍疑い→MRI考慮
可動域の限界で最強の痛み
→”stress pain"
変形性関節症
X線撮影
関節所見正常
関連痛(関節外)
関節疾患以外を鑑別
数時間〜数日での急激な疼痛・腫脹
結晶性関節炎
その他の炎症性関節炎
血算、血沈、尿酸値、関節穿刺(結晶評価)
抵抗時の関節運動でのみ誘発される疼痛
腱炎、滑液包炎
診断に問題があるときはMRI・超音波
自然消退を伴う急性関節痛発作の既往
(特に夜間発作)
結晶性関節炎
その他の炎症性関節炎
血算、血沈、尿酸値、関節穿刺(結晶評価)
ステロイド長期投与
無血管性壊死
血算、血沈、
感染疑い→関節穿刺(細胞数・培養)
無血管性壊死疑い→X線撮影、できればMRI
乾癬様の皮膚所見、爪陥凹
Dactylitis(指趾炎)
乾癬性関節炎
血算、ESR、関節穿刺、HLA-B27、抗核抗体
…他疾患除外が目的
自動・他動共に可動域制限
関節内病変
必要に応じてX線撮影・MRI
尿道炎、結膜炎、下痢、発疹、仙腸関節
反応性関節炎
血算、ESR、HLA-B27測定
若年成人、移動性関節痛、腱鞘炎
淋菌性関節炎
淋菌尿PCR、血液培養、滑液解析
  • 活動で悪化・休息で改善→機械性疼痛…変形性関節症など
  • 休息で悪化・活動で改善、朝のこわばり>45分→炎症性疼痛
 

《関節穿刺できない痛風の診断》

発作時でないときの痛風は難しい→一応スコアはある
 
関節穿刺できない痛風の診断スコア
項目
点数
男性
2
以前の関節炎発作歴
2
1日以内に発症
0.5
関節発赤
1
第1MTP関節に症状
(母趾の付け根)
2.5
高血圧、血管系イベント
狭心症脳卒中・末梢血管障害など
1.5
血中尿酸値>5.88mg/dL
3.5
合計点
  • ≦4点…痛風でない可能性95%→代替診断考慮
  • 4〜8点未満…痛風の可能性あり→出来れば関節穿刺、無理なら経過観察
  • >8点…痛風の可能性87%→痛風として心血管系リスク治療含めて管理
 

《感想》

  • 非外傷の急性単関節炎として多いのは
    • 非炎症→OA
    • 炎症→結晶性関節炎(高齢者:偽痛風、中年男性:痛風 というイメージ
  • ただし、「感染性関節炎」は非常に怖いのでできる限りの関節穿刺を行うことがとにかく重要と感じる
  • 特徴はパール的に覚えておくといいかもしれない