“Pleuritis and Pericarditis in ANCA-Associated Vasculitis” Chest. 2021;S0012-3692(21)00449-9.
ANCA関連血管炎(AAV)はどこにでも炎症を起こすので、当然胸膜炎・心膜炎を起こすこともある
→ANCA関連血管炎における胸膜炎・心膜炎の頻度・特徴を調べてみた
結論としては、「よくわからない胸水・心嚢水+炎症反応高値でANCA陽性」という症例がいたら、AAVの可能性はもちろんあるが、AAV以外の否定or他臓器の生検(胸膜生検含)を先に検討すべき、といったところか
AAV全体像に関しては↓参照
方法
対象:多施設データベースのAAV患者1830人
-
1996年-2012年のMayo Clinic Life Sciences System and Data Discovery and Query Builderから抽出
-
MPA/GPA/EGPAのCHCC2012年基準を満たしたものを登録
※胸膜炎…胸膜生検で炎症が確認or画像精査で胸水が確認できたもの
※心膜炎…医師が心膜炎と診断or心エコー等で心嚢液があった症例
-
悪性腫瘍・感染症があった場合は除外
→後ろ向きに解析
結果
-
AAV患者1830人中156人(8.5%)に胸膜炎and/or心膜炎があった
-
大半は白人(約90%)
-
Severe AAVが全体の64.7%
-
※Severe AAV…肺胞出血等で不可逆的な臓器障害・致死的合併症を起こす疾患
-
※Unspecific AAV:生検・臨床情報からAAVと確定診断したが、それ以上の特徴がはっきりしなかった症例
-
うち2名は胸膜炎/心膜炎発症から1年未満に死亡しているが、死因は胸膜炎/心膜炎/AAVによるものではなかった
-
29名は追跡調査のデータ得られず
-
合併症別解析
-
胸膜炎患者85名
-
最多の合併症は全身症状(49.4%)
-
胸膜炎患者の45.9%に腎病変あり
-
42.3%には他の肺病変なし→胸膜炎のみ
-
肺病変…肺結節(24.7%)、肺浸潤(18.8%)、びまん性肺胞出血(9.4%)、びまん性肺胞出血を伴う肺結節(4.7%)
-
心膜炎患者94名
-
全身症状(29.8%)、肺(45.7%)、神経系(23.4%)の合併症が多い
-
23.4%(22/94)に腎障害が併発
-
胸膜炎・心膜炎を併発した場合は多臓器病変が多い
-
AAVタイプ別解析
-
EGPAは胸膜炎・心膜炎の頻度が高い
-
特にEGPAでは心膜炎の頻度が胸膜炎と比較して高い
-
一方、GPA・MPAでは心膜炎・胸膜炎がほぼ同等に起こった
-
胸膜炎/心膜炎合併例では、胸膜炎/心膜炎がAAVの診断前に存在し、診断において重要だった例は高頻度(71.2%)
-
ただ、胸膜炎・心膜炎症状が単独で出現する症例は少数→他の症状が出てきて診断に至った
-
→「胸膜炎/心膜炎+炎症反応」というプレゼンテーションで現れるAAV」もいることはいる
-
治療
-
胸膜炎・心膜炎共に大半で免疫抑制療法±対症療法が実施された
-
胸膜炎85例中43.5%で胸腔穿刺、7.1%で胸膜生検が行われた
-
胸水分析→大半が滲出性胸水で、リンパ球優位・単球/マクロファージ優位例が多かった
-
心膜炎に対しての処置は13.8%で実施された
-
大半は治療後再発なし
Discussion
-
AAVにおける胸膜炎/心膜炎は低頻度ではあるが、存在する
-
特にEGPAでは高頻度
-
AAV患者で胸膜炎/心膜炎が起こってもAAV症状として認識されないことが多い→診断遅れ・再発見逃しにつながっている?
-
治療さえすれば再発は少ないことがわかった
感想
-
「よくわからない病態」でなんとなくANCAを測定していることはままあるが、「よくわからない胸水・心嚢水」+「炎症反応高値」というプレゼンテーションで出現するAAVも一応あるということは覚えていいかもしれない
-
ただ、そういう症例でANCA陽性になった=AAVとして診断可能、という訳ではないところが難しい所
-
やはりどこかの生検で確定診断すべきだろう
-
そもそもこの研究も単なるデータベース報告なので、どこまでAAVが関与しているかなんて症例ごとでしかわからないというのも依然課題ではある
-
→「よくわからない胸水・心嚢水でANCA陽性」という症例がいたら、AAVの可能性はもちろんあるが、AAV以外の否定or他臓器の生検(胸膜生検含)でAAVを確定診断できない限り動きにくい…というのが正直な所
参考:↓AAV合併症シリーズ