Nagle S, Nguyen Y, Guerry MJ, et al. Real-life use of the PEXIVAS reduced-dose glucocorticoid regimen in granulomatosis with polyangiitis and microscopic polyangiitis. Ann Rheum Dis. Published online November 20, 2024. doi:10.1136/ard-2024-226339
ANCA関連血管炎(AAV)への関連血管炎へのステロイド投与レジメンは、ステロイド(プレドニン:PSLなど)1mg/kg/d+Rituximab(RTX)375m^2/kg/w x4回→1週間したところでPSLは急速漸減というのがスタンダードになっている。
- EULAR2022年推奨…「患者体重に応じてPSL50-75mg/dayで開始し、漸減プロトコル(下図)に準じて漸減→4-5ヶ月でPSL5mgまで減量する」
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ACRエキスパートオピニオン・2021推奨…「平均的な体格の成人の場合、プレドニゾン(PSL)40-60mg/dayで開始→4週までに20mg/day、12週までに10mg/day、16週までに5mg/dayに漸減し、5−6ヵ月で中止が望ましい」
この根拠としてはPEXIVASトライアルでPSL急速漸減群(redGCレジメン)がPSL従来漸減群に対してAAV寛解率等に関して非劣性であったという結果である。
ただこのPEXIVASトライアルの問題点として以下があった。
- 主要評価項目には疾患の進行や再発は含まれていない
- シクロホスファミド(CyC)が主な併用薬であり、RTX投与患者は死亡・PSL漸減群でのESKD(末期腎不全)のリスクが高い傾向にあった
→レトロスペクティブ多施設共同研究でその点を解析した。
【Method】
P患者群:2022年ACR/EULARのAAV分類基準を満たすGPA/MPAを新規発症or再発した16歳以上の患者
→治療導入後12か月後にoutcome評価
- Primary outcome…Minor relapses,Major relapses,寛解達成前の病勢悪化、12週間を超える透析および/または腎移植を必要とするESKDの発生、治療導入後12ヵ月以内の死亡のうち,最初に発生したもの
- Secondary outcome…死亡、死亡orESKDの発生、再燃、寛解達成前の増悪。重篤な感染症の発生数
【Result】
- 重症GPA/MPA患者318人のうち、除外基準のある84人を除外→234人をフォロー。108例がStandardGC、124例がredGC
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追跡期間中央値は25ヵ月
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40%がMPA(顕微鏡的多発血管炎)、60%がGPA(多発血管炎性肉芽腫症)
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MPOとPR3-ANCAはともに約半数の患者に見られた
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腎病変は70%に見られ、平均血清Creは232μmol/L(2.62mg/dl)。全患者の25.2%で>300μmol/L(3.40mg/dl)
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患者の72%がmPSLパルス実施、71%が導入療法としてRTXを、29%が導入療法としてCYCを投与
◎Primary outcome
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primary outcomeは,1年目に62/234例(26.5%)の患者で発生
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standGC群で20/108例(18.5%)、redGC群で42/126例(33.3%)と有意に高かった(p=0.01)
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重み付けなし多変量解析→redGCはPrimary outcomeの発生と有意に関連して いた(HR 2.20; 95% CI 1.23-3.94)
◎Secondary outcome
- 死亡またはESKDは追跡期間1年目に27/234例(12%)
- redGC群では19/126例(15%)に対し,standGC群で8/108例(7.4%)
- 重み付けなしの多変量解析では、redGC群と死亡・ESKDと有意な関連なし
- 寛解達成前の増悪、再発等に関しては特に差はない
- 重症感染症に関しても有意差なし
◎Subgroup analysis
- redGC群内:血清Cre>300μmol/L(3.40mg/dl)のでは、Primary outcomeの発生率が高い
- RTXでの寛解導入群内:
- redGC群はstandGCと比較して,単変量解析(HR 2.22;95%CI 1.12~4.40)・多変量解析(aHR 2.36;95%CI 1.18~4.71)でprimary outcome発生率が高い
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redGCを受けた患者(aHR 3.45;95%CI 1.07~11.17)および血清Cre300μmol/Lを超える患者(aHR 9.26;95%CI 2.84~30.17)も、多変量解析において死亡またはESKDを発生する可能性が有意に高い
【Discussion】
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GPAおよびMPAにおけるPEXIVAS redGCはstandGCと比較して、再発・AAV再発に伴うprimary composite outcomeリスクと関連する可能性が示唆された→PEXIVAS studyの結果と相反する結果であった
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一方でPEXIVAS試験と同様,本研究でもredGC群と死亡またはESKDとの関連は有意差なかった
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サブグループ解析…RTXでの寛解導入群,うち特に血清Cre高値の患者ではredGCレジメンでの治療失敗リスクと関連していた
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PEXIVAS試験ではRTXでの治療導入例は15%だったが、本研究では71%と大きく異なっており、PEXIVAS試験のサブ解析でもRTX導入例でのredGCは死亡・ESKD率が高かった
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→RTX使用例においてredGCは重症例には向いていない可能性がある
- 血漿交換療法はPEXIVAS試験では50%、本研究では17%
- LoVASとの比較(https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2780489)
- Strength
- PEXIVAS試験と比較して、primary outcomeに再発等の日常診療で重要なoutcomeを含めた
- RTXでの寛解導入が多く、血漿交換療法が少ない→実臨床的なpracticeを行っていた
- 年齢・AAVサブタイプなどの再発に関連する因子を多変量解析で調整した
- 再発関連因子(年齢、MPAサブタイプなど)が過去研究と一致→外的妥当性は高い
- PEXIVAS試験と同様、死亡・ESKDとredGCに関連はなかった
- limitation
→重症AAVにへのredGCレジメンは、standGCレジメント比較して、primary outcome(死亡、ESKD、AAV再発/進行など)のリスクが上がるかもしれず、特に導入療法としてRTXを使用する場合・血清Cre高値患者において注意したほうがいいかもしれない
【感想】
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- AAV・RPGNによる透析導入レベルの腎機能低下例ではPSLを急速漸減する場合、腎機能廃絶が改善しないと感じていたが、その感覚に一致していた
- ただ、RPGN例はPSL投与有無にかかわらず腎機能が廃絶してレスキュー不可の例もあるため、PSLをダラダラ使うことが全例で正当化されているわけではない
- RTXの効果はIVCYと比較して遅く、1か月以上はかかる印象→RTXの効果が出てくるまでは無理にステロイドを急速漸減する必要はないのかもしれない
- この研究を踏まえれば、AAV・RPGNへの治療は、以下のように考えるといいかもしれない
今後さらなるサブグループ解析によって最適レジメンがわかってくることに期待されるが、以下の3つに注目してもいいかもしれない
- 腎生検結果で判断できないか?…高度腎障害でも糸球体硬化・線維性半月体形成著明例ではredGCとする→RPGN症例は状態が悪く腎生検困難な例があるので難しい、そもそも一般的には腎生検結果が出るのに1か月以上は必要。ただ維持期におけるPSL漸減には役立つ。
- IVCYを再評価できないか?…PEXIVASstudyで用いられたように、IVCY+redGCというレジメンを再評価してもいいのかもしれない。ただどういう症例で使うのか?という答えを出すのは難しい。RTXの方が圧倒的に使いやすく、スタンダード。
- 早期の治療反応性で層別化できないか?…腎以外の病変に関しては初期治療反応性からステロイド漸減できそうな印象、というのを受けることがあるので、面白いかもしれない。ただ腎機能に関しては反応性乏しい例が大半なので難しいだろうが…
非常に難しいところだが…
PEXIVAS-reducedプロトコルは、透析レベル・AKI様の経過で腎機能が低下した症例へのAAVに対しては避け、その他には考慮するというのが妥当な印象。