"End-stage renal disease in ANCA-associated vasculitis." Nephrol Dial Transplant. 2017 Feb 1;32(2):248-253.
ANCA関連血管炎は急速進行性糸球体腎炎によって末期腎不全を起こすことがある。
末期腎不全になるまで患者は自覚症状がないため、腎病変優位の症例では末期腎不全を呈してから来院することもある
⇨腎機能悪化後にできる介入とはなにか?
①ANCA関連血管炎患者での末期腎疾患(ESRD)リスク
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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)では重症腎疾患は珍しい
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急激な腎機能低下を起こすため、適切なタイミングでの治療がなければ悪化し続ける
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特にMPAはGPAと比較してESRDのリスクが高い
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523人のANCA陽性患者のコホート…初診時に95人が透析必要な状態(Kidney Int 2009; 76: 644–651)
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中央値34ヶ月で26%がESRDに進行
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ESRD群は腎限局血管炎が多く、GPAは少ない
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他研究見ても大体ANCA関連血管炎患者の20-25%でESRDとなる
②ANCA関連血管炎患者でのESRDの予測因子
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ANCAの種類はESRD・死亡リスクと関係なし
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血清クレアチニンの急激な上昇・不適切な治療はリスク
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腎生検結果…最も腎予後と相関
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硬化型(Sclerotic)が最も予後が悪い
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限局型(Focal)は最も予後が良い
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半月体形成型(Crescentic)は腎炎が活発だが腎機能が回復する可能性も高い
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光学顕微鏡・免疫染色で型決定
③ESRDにしないためのAAVの治療
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基本は高用量ステロイド+シクロホスファミド(CYC)orリツキシマブ(RTX)
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CYC…15mg/kg/2w*3回での点滴(IVCY)⇨3週間毎のIVCYまたは2mg/kgでの経口投与(POCY)
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腎機能低下・高齢者では最大50%減量
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RTX…375mg/m^2/1w*4回
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腎機能低下患者でも減量不要
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透析を必要としたAAV患者7人にRTX+ステロイドで治療⇨7人中5人は透析離脱
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"Treatment of severe renal disease in ANCA positive and negative small vessel vasculitis with rituximab." Am J Nephrol. 2015;41(4-5):296-301.
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CYC選択した場合は3-6ヶ月以内にアザチオプリン(AZP)(2mg/kg)に置換する
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RAVE trial…IVCY後のAZP vs RTX⇨同等の効果
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MTX…腎機能低下患者には禁忌
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寛解維持時期の治療としてはRTX>AZP(MAINRITSAN)
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血漿交換の有効性は疑問符がつく(PEXIVAS)
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ただ、末期腎不全患者ではまだ不明
表:末期腎不全患者に対する免疫抑制剤の推奨投与量(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmaj/3/1/3_20/_article/-char/ja/ より作成)
薬剤名
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略称
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シクロホスファミド
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CYC
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Cre高値・高齢患者では用量調整必要
・60歳未満・Cre軽度高値(1.7~3.4mg/dL)…15mg/kg
・60~70歳・Cre軽度高値(1.7~3.4mg/dL)…12.5mg/kg
・70歳以上・Cre軽度高値(1.7~3.4mg/dL)…10.0mg/kg
・60歳未満・Cre高度高値(3.4~5.7mg/dL)…12.5mg/kg
・60~70歳・Cre高度高値(3.4~5.7mg/dL)…10.0mg/kg
・70歳以上・Cre高度高値(3.4~5.7mg/dL)…7.5mg/kg
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アザチオプリン
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AZP
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腎機能正常…1-2mg/kg、24時間毎
CCr >50mL/分…用量調整は不要
CCr 10-50mL/分…通常用量の75%
CCr <10mL/分…通常用量の50%
成人透析患者…通常用量の50%+透析後に0.25mg/kgでの追加投与
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メトトレキサート
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MTX
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禁忌
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リツキシマブ
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RTX
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用量調整不要
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④透析患者における再発リスク
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慢性透析患者における血管炎再発リスクは、非透析患者と比較して低い
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MPO-ANCA陽性患者では透析有無であまり再発リスク変化ないが、PR3-ANCA陽性患者では低下する
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Kidney Int. 2009 Sep;76(6):644-51.
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免疫抑制を受けている透析患者は、通常の透析患者より感染リスクが倍になる⇨透析患者では活動性腎外病変がない限り、維持療法としての免疫抑制は推奨されない
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特にMPO-ANCA陽性例では治療中止考慮?
⑤腎代替療法後
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ANCA関連血管炎患者は、他の腎疾患(糖尿病性腎症・糸球体腎炎など)と比較して治療による腎機能改善率が高い
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⇨ANCA関連血管炎患者での腎機能低下に対しての寛解導入としての免疫抑制は中止すべきではない
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腎移植後のAAV患者は糖尿病性腎症と比較して10年生存率が低い⇨免疫抑制による治療・血管炎による併存疾患がリスク?
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ただ、維持透析継続と比較して腎移植は生存率が有意に高い⇨腎移植はいいオプション
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GPAはMPAと比較して移植後の死亡率が高いため注意
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ANCA陽性状態での腎移植は、ANCA陰性状態での腎移植と比較して死亡率が高い⇨ANCA陰転化した後の移植が望ましい
⑥まとめ
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ANCA関連血管炎による末期腎不全発生率は、治療が発達した現在もかなり高い
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末期腎不全患者への免疫抑制療法はかなり感染リスクが高い⇨リツキシマブによるステロイド節約はかなり有効
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治療後も透析離脱困難なら、 安定後に腎移植を考慮する