Kidney Int. 2023;103(6):1144-1155.
寛解導入療法終了時(治療開始から4-6ヶ月後)に採取したスポット尿の蛋白尿・血尿と、死亡/腎不全の複合エンドポイント・再発との関連を見た研究
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ANCA関連血管炎(AAV)の腎病変は、慢性腎臓病に進展することが多く、生存率の低下と関連している
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治療導入前の予後不良因子はよく知られている…診断時の血清Cre/eGFR、腎生検所見(効果製糸球体の割合、間質性繊維化/尿細管萎縮)
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一方で治療導入後の予後予測因子はあまり知られていない
【Method】
患者群…2010-2019年にかけて発表さ れたAAVに関する 5つの国際多施設共同ランダム化比較試験
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対象試験…MAINRITSAN、MAINRITSAN2、RITUXVAS、MYCYC、IMPROVE
変数…治療開始から4-6ヶ月後の蛋白尿・血尿データ
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蛋白尿…蓄尿or随時尿で測定、尿蛋白/Cre比で測定
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血尿…細胞診で>10個/mm^3 or 定性で潜血陽性
エンドポイント…死亡/腎不全の複合エンドポイント、再発、再発までの時間など
サブグループ解析…ベースライン時に腎臓病変のある患者、MPO-ANCA陽性例 、PR3-ANCA陽性例、治療時に腎病理が確認できた患者に関してサブグループ解析実施
【Result】
合計617人の患者中、透析例・死亡例などを除いた571人を解析対象とした
ベースラインデータ
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59%が男性、年齢中央値60歳
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PR3−ANCA陽性が中心(60%PR3、35%MPO陽性)
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腎病変有病率は77%
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シクロホスファミドで寛解導入実施した症例が中心…シクロホスファミド75%、リツキシマブ15%、MMF10%
導入療法終了時のたんぱく尿・血尿
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UPCR 中央値は 0.025 g/mmol (0.22mg/gCre)
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患者の 34.3% (481 人中 165 人) が UPCR ≧ 0.05 g/mmol (0.44mg/gCre)
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患者の 29.8% (526 人中 157 人) で持続性血尿あり
◎死亡・腎不全
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導入療法終了から28ヶ月時点での患者の2.3%が死亡、2.8%が腎不全
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単変量・多変量解析…導入療法後の血清Cre上昇・UPCR≧0.05 g/mmol(0.44mg/gCre)が死亡/腎不全と独立して関連
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持続的血尿は関連なし
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導入療法後のUPCR≧0.05 g/mmolは、Kaplan-Meier生存曲線でも、死亡/腎不全に関連
◎再発
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34.3%が再発し、うち7.4%が腎臓の再発を起こした。
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寛解導入終了から再発・腎不全・死亡までの期間の中央値は28ヶ月
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再発リスク…PR3-ANCA陽性、Rituximab以外の維持療法、導入療法後の血清Cre低下が関連
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腎臓再発リスク…Rituximab以外の維持療法、持続的血尿、導入療法後の UPCR ≧ 0.05 g/mmolが関連
◎サブグループ解析
ベースライン時に腎臓病変のある患者…結果は同様
MPO-ANCA陽性例 ・PR3-ANCA陽性例…UPCR ≧ 0.05 g/mmolで再発が多く、PR3-ANCA陽性例ではより顕著。導入後のANCA陽性持続は再発と関連なし。
治療時に腎病理が確認できた患者…局所病変患者は、蛋白尿が少なく予後良好
【Discussuion】
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寛解導入後の蛋白尿持続は死亡/腎不全の独立した予測因子
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寛解導入療法後の血尿or蛋白尿の持続は腎再発の独立した予測因子
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limitation
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持続性タンパク尿は、発症時の非特異的腎疾患を反映しているだけの可能性がある
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患者群の不均一性…大半がヨーロッパ系、Rituximab使用例が少ない(導入療法で15%)
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事後解析でしかない
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尿所見の評価が均一ではない
【感想】
治療実施から4-6ヶ月後に蛋白尿・血尿といった腎炎所見が残存している時点で、再発・腎予後不良に決まっている気はする
治療からどれくらいまで蛋白尿・血尿消失が得られなかったら治療不十分と考えるのか?というところが難しいが、そこに答えられる研究ではない
あくまでも維持療法の時点で参考にできる試験。Rituximab維持療法は蛋白尿・血尿が残っている時点で継続したほうがいいのかもしれない。