Clin Rheumatol. 2023;10.1007/s10067-023-06673-x.
不明熱診断の切り札としてPET-CTがあるが、自費検査である点に加えて必ず診断がつくわけではないという問題がある
不明炎症患者へのPET/CTの結果を後ろ向きに分析→PET/CTの鑑別診断の価値を予測する要因を調査した研究
→PET-CTは不明炎症の診断につながることが多いが、診断に繋がったのは35.6%とやや低め。悪性腫瘍の否定にも有用。
参考過去記事
【Method】
患者群…不明炎症の精査としてPET-CTを施行した患者
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2018年1月~2021年12月の間にアンカラ市立病院リウマチ科外来で、鑑別診断のためにPET / CTを受けた18歳以上の患者
→PET-CTの結果から以下の3群に分類
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Group1…PET / CTでFDGの取り込みが増加し、診断が確定した群
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Group2…PET / CTでFDGの取り込みが増加したが、診断が確定しなかった群
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Group3…PET / CTでFDGの取り込みが増加しなかった群
上記3群の特徴についてMann-Whitney -U検定またはStudent -t検定で群間解析を実施
【Result】
132人を解析。既往…28.8%にリウマチ性疾患、2.3%に悪性腫瘍があり
→患者は3群に分けられた
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Group1(PET / CTでFDGの取り込みが増加し、診断が確定した群)…47例(35.6%)
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Group2(PET / CTでFDGの取り込みが増加したが、診断が確定しなかった群)…50例(37.9%)
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Group3(PET / CTでFDGの取り込みが増加しなかった群)…35例(26.5%)
→PET-CTが診断に役立ったのは35.6%、役立たなかったのが64.4%
◎診断内容
Group1(PET /-CTで診断確定)…65.9%がリウマチ性疾患、14.9%が悪性腫瘍、8.5%が感染症
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リウマチ性疾患31例内訳…8例PMR、5例高安動脈炎、4例脊椎関節炎
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PMR…股関節・肩の取り込み増加
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高安動脈炎…大血管への取り込み増加
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悪性腫瘍…肺扁平上皮癌が多い
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その他…Warthin腫瘍、亜急性甲状腺炎
Group2(PET-CTで所見があったが診断未確定)…66%が最終診断なし、18%が既知のリウマチ性疾患フレア、10%がリウマチ性疾患、2%が悪性腫瘍
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リウマチ性疾患の分類的には脊椎関節炎が多い
Group3(PET-CTで所見なし)…71.4%が最終診断なし、20%がリウマチ性疾患、8.6%が既知のリウマチ性疾患のフレア
◎3群の解析
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PET-CTで診断が確定した第1群で多かった特徴…男性、高年齢、CRP高値、全身症状、SUVmax高値、FDGの取り込みが増加した臓器数
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→CRP>10mg/dLの場合、FDGの取り込みが全例で見られる
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第3群では追跡期間中に悪性腫瘍と診断された患者はいなかった
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リウマチ性疾患と診断されることが多い特徴…筋骨格系・血管病変の頻度が高い、CRP高値、FDG取り込み亢進となった臓器系数が多い、併存疾患が少ない
【Discussion】
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PET-CTは不明炎症の診断につながることが多く(35.6%)、リウマチ性疾患の診断にも有用
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PET-CT陰性患者において悪性腫瘍患者はいなかった→悪性腫瘍の否定にも有用?
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PET-CTによる診断可能性が高い因子…CRP高値、高齢、男性、全身症状など
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PET-CTとリウマチ性疾患…PET-CTで診断が多いのPMR・高安動脈炎、PET-CTで診断つかず経過観察でわかることが多いのがSpAだった
limitation…単施設の小サンプルの研究で、リウマチクリニックにおける研究。診断についても均一性はなく、あくまでもカルテ解析データ。
◎検査/臨床データとPET-CTの組み合わせはリウマチ性疾患の診断に有用と思われ、悪性腫瘍の否定にも使える
【感想】
PET-CTは使える環境・患者の協力があれば非常に有用であるが、無敵の診断ではないということが再確認できた。…3割位は診断できたが、6割強はPETしても診断不明
PET-CTでわかりにくいリウマチ性疾患として脊椎関節炎がある、という点は非常に示唆的。他の研究(Joint Bone Spine. 2022;89(3):105325. SpAとPMRのPET所見比較)を見ても、SpAは炎症が激しくてもPET−CT所見がないことが多いと報告されている
→不明炎症・多関節痛・PET陰性の場合、SpAが有力候補となる??
PETで分からない高安動脈炎があるようだが、個人的には経験はない。先行治療等の修飾があるのだろうか?