膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

環状肉芽腫(Granuloma Annulare)と全身疾患

環状肉芽腫は時々膠原病内科に相談が来る皮疹の一種である。
 

【環状肉芽腫の基礎知識】

(Am Fam Physician. 2006;74(10):1729-1734.)

環状肉芽腫(Granuloma Annulare: GA)は良性皮膚疾患の一種で、遠心状に拡大する丘疹・結節が正常皮膚周囲に環状病変を形成することが特徴的
  • 限局性が大半だが、15-25%は全身性に発症する
    • 限局性は30歳未満が大半で、女性に多い
  • 原因はわかっていないが、全身性疾患も原因となりうる…糖尿病・高脂血症、自己免疫疾患、血液悪性腫瘍など
  • 形態
    • 限局型:全体の75%、50%は2年以内に自然消退する
    • 全身型:広範囲に存在、3-4年以上持続する場合あり
  • 鑑別:白癬、バラ色粃糠疹、貨幣状湿疹、乾癬、皮膚ループスなど→皮膚の表面変化がないことが環状肉芽腫の特徴
  • 生検:反応性炎症・線維症を伴うコラーゲンの限局性変性、表皮は正常
  • 治療:定まっていないが、ダプソン・ヒドロキシクロロキンなどが用いられることがある
 
ということで、全身性疾患が原因になることがあるという点に注目した論文を読んでみた。
→人口ベースコホートで全身性疾患との関連を評価(JAMA Dermatol. 2021;e211805.)

【方法】

  • アメリカのデータベース(Optum Clinformatics Data Mart)の匿名データを病名ベースで解析
  • 「環状肉芽腫」及び、全身疾患(糖尿病・高脂血症甲状腺機能低下症・SLE・関節リウマチ・円形脱毛症、リンパ腫・白血病)の有病率をそれぞれ病名ベースで解析
    • 一部検査データも解析…HbA1c、脂質、甲状腺ホルモン、リウマトイド因子、血球数
  • 対照群として、母斑または脂漏性角化症と診断された患者群を用意
  • →ロジスティック回帰を使用し、環状肉芽腫と対象の併存疾患との間の潜在的な関連性を評価
 

【結果】

  • 環状肉芽腫患者5,137人、対照群51,169人
    • 人種/民族・教育レベル・収入・内科医受診状況は同様になるようにマッチさせてある
  • 糖尿病・高脂血症・高血圧
    • 環状肉芽腫患者は対照群と比較して、ベースラインの糖尿病・高脂血症・高血圧発症が多い
    • 環状肉芽腫患者は経過中の糖尿病発症が多いが、高血圧・高脂血症は有意な関連なし
  • 自己免疫疾患
    • 環状肉芽腫患者は対照群と比較して、ベースラインの甲状腺機能低下症・関節リウマチ発症が多い
    • 環状肉芽腫患者は経過中の甲状腺機能低下症・SLE・関節リウマチの発症が多い
  • 血液悪性腫瘍
    • 環状肉芽腫と白血病・リンパ腫との関連はなかった

【Discussion】

  • 環状肉芽腫症は糖尿病・高脂血症・一部の自己免疫性疾患と関連していそう
  • ベースラインの糖尿病・高脂血症も多い→糖尿病・高脂血症は環状肉芽腫発生の原因である可能性がある?
    • 一部の自己免疫疾患(RA・甲状腺機能低下症など)も発生の原因?
  • SLE・RAによる皮膚症状と環状肉芽腫は関連がありそうだが、有病率が低いのではっきりしない

【結論】

  • 糖尿病および高脂血症が環状肉芽腫の発症の危険因子である可能性がある
  • 自己免疫が環状肉芽腫の病因における重要な因子である可能性がある
 
所詮は病名ベース。対照群に母斑・脂漏性角化症を選択することでバイアスが発生している可能性は気になる。
ただ、環状肉芽腫を見たときに、糖尿病・脂質異常・甲状腺機能低下症・RA/SLEあたりがあるかも、と考える根拠にはなりそう。