乾癬性関節炎(PsA)は皮膚乾癬+関節炎のはずだが、皮膚症状のない非典型例も存在する。まとまった文献はほぼなかったが、自分なりにまとめてみた。
【概要】
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乾癬性関節炎(PsA)は、皮膚疾患である乾癬に随伴して関節炎が起こる疾患である
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典型的には皮膚症状が先だが、10%程度は関節炎が皮膚症状に先行する=“Psoriatic Arthritis sine Psoriasis"と呼ばれる
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皮膚が先:73%、同時:16%、関節が先:11%
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J Rheumatol. 2014;41(11):2179-2185.(日本からの報告)
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乾癬性関節炎の分類基準としてCASPAR分類基準があるが、皮膚症状が現在なくてもPsAと分類されうる(Arthritis Rheum. 54(8):2665-73.2006)
2006年CASPAR分類基準
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乾癬の現症
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2
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乾癬の既往または2親等までの家族歴
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1
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爪病変
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1
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血清リウマトイド因子(RF)陰性
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1
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Dactylitis(指趾炎)
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1
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単純X線写真上の骨病変
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1
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3点以上を乾癬性関節炎と分類
(感度91.4% 特異度98.7%)
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→例えば、「乾癬家族歴・RF陰性・Dactylitisあり」であれば一応PsAに分類できる
【診断】
確立したものは特にない
“Psoriatic Arthritis sine Psoriasis”は大別して2つに分かれる
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早期関節炎で皮膚症状が出ていないor見逃している
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本当に皮膚症状がない乾癬性関節炎
①早期関節炎で、まだ皮膚症状が出ていないor見逃している
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皮膚症状、特に爪症状に注意して診察する
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特にPsAで多い皮膚病変は、爪・臀裂・頭皮(Arthritis Rheum. 2009;61(2):233-239.)→疑うなら臀裂まで徹底的に見る
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Dermatol Ther (Heidelb). 2012;2(1):15.
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フォロー中に皮膚症状が出てくることが多いので、早期関節炎・seronegative RAの患者では皮膚病変出現に注意する
②本当に皮膚症状がない乾癬性関節炎
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以下が“Psoriatic Arthritis sine Psoriasis”を示唆する(J Rheumatol. 2003;30(12):2638-2640.)
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DIP関節炎
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Dactylitis
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関節炎の非対称性分布
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乾癬の家族歴
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HLA-Cw6陽性(※日常臨床での測定は難しい、HLA-B27陽性率は低い)
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特に「乾癬家族歴」だけの“Psoriatic Arthritis sine Psoriasis”は報告が多いので、特に留意
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Dactylitisは比較的PsAに特徴的な所見なので見逃さないようにする
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また、“Psoriatic Arthritis sine Psoriasis”では肥満・喫煙が多い(Clin Rheumatol. 2018;37(3):579-586.)
治療については以下参照
参考:J Rheumatol Suppl. 2009;83:28-29.