Rheumatology (Oxford). 2021;60(2):699-707.
ポイント
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筋生検はANCA関連血管炎の診断に有用
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MPO-ANCA陽性例・女性・好中球数増多が筋生検陽性率が高い
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筋生検は非腎性AAV・腎生検ができないときに考慮すべき
【前置き】
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ANCA関連血管炎(AAV)の診断は困難な場合が多い。理由は以下の通り
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薬剤性・感染症・悪性腫瘍の除外が必要
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病理組織的な証拠を得ることが重要だが、生検が困難な場合がある
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例)腎炎所見はないが、血管炎が疑わしい場合
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生検に適当な組織がない場合、血管が多く生検が(比較的)しやすい筋肉をターゲットとする場合があり、先行研究でも有用性が示唆されている
→AAVにおける筋生検の感度・予後への影響を調べてみた
【方法】
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診断時に筋生検(muscle biopsy: MB)が実施されたANCA関連血管炎の単施設レトロスペクティブ研究
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AAVはACR criteriaまたは2012年Chapel Hill基準を満たしているもの
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下腿の筋痛がある場合、神経障害があり神経筋生検が必要となった場合に実施
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AAV再発疑いでの筋生検実施患者は除外
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基本的には大腿四頭筋外側広筋からの生検を実施
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病理で血管壁に炎症性の浸潤があった場合、筋生検陽性と判断
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フィブリノイド壊死を伴うかは関係なし
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AAV患者の筋生検HE染色:炎症細胞浸潤(arrowhead)、フィブリノイド壊死(arrow)、筋繊維(☓)
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生検結果からAAVを3種類に分類
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治療成績・寛解率を解析
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※寛解:PSL10mg/dayでBVAS0点
【結果】
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276名のAAV患者(1995-2018年)のうち101人が筋生検を実施→うち78人が対象
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GPA33例、MPA25例、EGPA20例
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23人は再発疑いでの筋生検のため除外
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平均年齢67歳
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生検例で多い症状は体重減少、筋痛、末梢神経障害
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58%(45/78例)で筋生検陽性
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GPA・MPAで57%(GPA17例・MPA16例)、EGPA60%(12例)
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CRPと筋生検陽性の相関
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CKとの相関:CK上昇例は10%と非常に低い
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EGPAでは29%(5/17)で見られたが、GPA・MPAではCK上昇例なし
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その他
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筋痛は筋生検陽性・陰性例で同等に見られた→筋痛なくても筋生検陽性例あり
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筋生検部位での陽性率は近位筋・遠位筋でも変わりなし
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※生検部位は大腿四頭筋が多かったが、神経筋生検の際に遠位筋の生検が行われる場合もあった
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GPA・MPAにおける生検陽性の予測因子
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MPO-ANCA・女性・好中球数増多が筋生検陽性率が高い
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EGPAにおける生検陽性の予測因子:女性では陽性率高い
【Discussion】
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AAVの診断はかなり難しく、生検が非常に重要
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特に細菌性心内膜炎はANCA陽性例が多く、症状も似る
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本研究ではAAVにおける筋生検の感度58%であることがわかり、筋生検が診断に有用と考えられた
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筋症状(筋肉痛・脱力感)・CK値は筋生検陽性率には関係なく、一方でCRP高値は筋生検陽性率と関係ありそう
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limitation
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後方研究でしかない…特に「筋生検ができた患者」しか登録していないという点に注意
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ステロイド投与中に筋生検をしている患者が含まれている
【結論】
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筋生検はAAV診断に有用
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ただし筋生検はAAV予後との関連はないため、腎生検の代わりにはならない
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MPO-ANCA陽性例・女性・好中球数増多が筋生検陽性率が高い
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非腎性AAV・腎生検禁忌例では筋生検を考慮すべき?
【感想】
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AAVの診断が難しい一因に「生検での診断が困難」という点があり、その解決策として筋生検があるというのは覚えておいたほうがいい
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所詮は後方研究であり、「筋症状があるAAV」患者しか対象にしていない点には注意
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実際に筋生検を診断に適応するならば、以下の流れが現実的だろう