膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

成人Still病と間質性肺疾患

“Parenchymal lung disease in adult onset Still’s disease: an emergent marker of disease severity—characterisation and predictive factors from Gruppo Italiano di Ricerca in Reumatologia Clinica e Sperimentale (GIRRCS) cohort of patients” Arthritis Res Ther. 2020;22(1):151.
 
  • 成人Still病(Adult-onset Still’s disease: AOSD)は、原因不明の全身性炎症疾患である
  • 治療を行っても致死的な合併症を起こすことが知られている
  • AOSDはまれに肺病変を起こし致死的であることが知られている。
  • AOSDの肺病変は2パターンある(Medicine (Baltimore). 2016;95(30):e4258.)
    1. 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による肺病変
    2. 細気管支炎・NSIPのような間質性肺炎
AOSDにおける肺病変の有病率・特徴を解析
参考: 
ポイント
  • AOSDの肺病変は147人中18人(12.25%)で存在する
  • 肺病変リスクは高齢、全身症状が強い、フェリチン高値
  • 肺CT所見では、末梢のconsolidationが多い
  • AOSDの肺病変は致死的な合併症となりうる

【方法】

  • イタリアのデータベースで2001-2019年の間、AOSD患者を前向きに追跡
    • Reumatologia Clinica e Sperimentale(GIRRCS)コホートを利用
    • AOSD患者は全員山口基準を満たしている
      • ※山口基準
AOSDにおける肺病変の割合及び臨床的特徴・予測因子を解析
 

【結果】

  • AOSD患者147人中18人(12.25%)がAOSDの診断時に肺病変あり
  • 肺病変のある患者の特徴
    • 高齢で、筋肉痛・リンパ節病変・胸膜炎・腹痛の有病率が高い
    • 全身症状が強い、フェリチンが高い
    • ESR・CRPは有意差なし
    • CT上肺病変が強い一方で、呼吸器症状が弱い(軽度の頻脈、呼吸困難、慢性咳程度)
  • CT所見
    • 最も多いのは、末梢のコンソリデーション…8名(44.4%)
    • その他
      • 気管支周囲のコンソリデーション…4名(22.2%)
      • ground glass opacity…3名(16.7%)
      • Crazy-paving…3名(16.7%)
      • 多葉性の末梢中隔肥厚…2名(11.1%)
    • 同時に多彩な病変が出現する
        • A,B crazy-paving
        • C すりガラス影を伴う気管支周囲のコンソリデーション
        • D 末梢のコンソリデーション
    • 肺病変は経過中に消失・悪化を示す
        • 経過観察中にすりガラス影が新規出現
        • 経過中に新規に胸水・末梢コンソリデーションが新規出現
  • 予後予測因子:高齢・全身症状が強いことが予後因子
  • 肺病変があるAOSDの死亡率は38.9%→肺病変のないAOSDと比較して死亡率が高い
 

【結論】

  • AOSDにおける肺病変は死亡の原因となる
  • AOSDでの肺病変患者は、特徴的な臨床症状が多く、全身症状スコア・フェリチンが高い