“Dactylitis: A hallmark of psoriatic arthritis.” Semin Arthritis Rheum. 2018;48(2):263-273.
乾癬性関節炎(PsA)は乾癬患者に見られる慢性関節炎であり、放置すると関節破壊を始めとした問題が起こる
PsAの関節炎症病変として
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滑膜炎…DIP関節の腱・靱帯・付着部炎
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Dactylitis(指炎)…指が「ソーセージ」のように晴れる の2つがある
Dactylitisの病態と診断に関する文献レビュー
【総論】
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Dactylitisは、関節腫脹が認識できないレベルまで関節間軟部組織が腫脹した状態である
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A:足趾Dactylitis、B:左母指Dactylitis
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DactylitisはPsA患者の16-49%に見られ、発症初期の症状として多い
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再発性Dactylitisは通常同じ指に見られ、唯一の症状になることもある
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Mycobacterium marinumでも同様のDactylitisが起こる
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ただ、SpAとそれ以外のDactylitisではかなり異なる
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PsAでは非対称性、左より右に多い、手より足に多い、同時に複数の指に影響を及ぼすことが多い
表:Dactylitisの鑑別
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DactylitisはPsAの診断項目の1つにもなっており、重要な所見である
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Dactylitisは圧痛・発赤・熱感を呈する場合(急性パターン)もあれば、腫脹のみで無症候性の場合(慢性)もある
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Dactylitisは疾患活動性の指標の一つで、Dactylitisがあると関節破壊が進む可能性が高い
【病態】
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病態メカニズムははっきりしていない
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屈筋腱鞘炎と関節滑膜炎に伴う周囲組織の炎症と考えられているが、決定的な結論はない
【臨床診断・モニタリング】
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PsAは症状が出てから6ヶ月以上診断が遅れると、画像変化・機能予後が悪化してしまう
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しかも診断直後の数年は治療しても著しく進行する可能性がある
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Dactylitisを早期認識することがPsAの早期診断に役立つ
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また臨床試験でも効果指標にDactylitisが評価されることからも重要視されている
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Dactylitisは圧痛・発赤・熱感を呈する場合(急性パターン)の場合もあれば、腫脹のみで無症候性の場合(慢性)もあるもあり後者は見逃しやすい
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対側の指と比較することで腫脹有無を比較することが有用
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スコアリングにはLeeds Dactylitis Index (LDI)を用いると良い
【画像評価】
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Xp・エコー・MRIがあるがそれぞれ長所短所がある
表:Dactylitis所見と画像診断
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Xp
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エコー
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腱鞘炎
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◯
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◯
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腱鞘肥厚
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◯
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◯
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関節滑膜炎
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◯
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◯
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軟部組織腫脹
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◯
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◯
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軟部組織浮腫
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◯
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◯
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関節裂隙狭小化
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◯
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◯
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◯
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骨髄浮腫
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◯
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びらん
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◯
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◯
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◯
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浸出液
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◯
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◯
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関節外骨新生
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◯
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◯
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◯
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関節内骨新生
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◯
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◯
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◯
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足底・掌底板の異常
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◯
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◯
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側副靭帯の異常
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◯
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◯
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血管変化
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◯
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◯
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爪床/マトリックス/プレート異常
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①Xp
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骨形態異常の評価はできるが、軟部組織評価には向かない
②エコー
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滑膜の肥大・滲出液・腱鞘炎の評価→B-mode/gray scale、血流評価→パワードップラーで可能
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Xpよりも軟部組織炎症の評価に便利
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軟骨下の浮腫、腱鞘炎、隣接する滑膜炎を評価可能
表:Dactylitisのエコー所見
所見
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画像
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母指背側縦断像:
パワードップラー変化を伴う軟部組織肥厚(青矢印:滑膜炎、青星:びまん性軟部組織の肥厚)
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母指IP関節縦断像:
伸筋腱炎/傍腱鞘炎(青矢印)と滑膜炎による浸出液(*)、伸筋腱付着部の骨膜異常(黄色矢印、肥厚・低エコー・線維性エコーの消失)
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母指掌側縦断像:屈筋腱鞘炎と関節滑膜炎(*:腱鞘炎、**:滑膜増殖、青矢印:屈筋腱、青星:種子骨)
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指背側:広範囲の腱鞘炎(矢印頭)、施設骨基部腱鞘炎(青矢印)、滑膜炎(*)
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軟部組織浮腫(*)を伴う滑膜鞘の拡大(o)、腱内・腱周囲のパワードップラー
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軟部組織腫脹、血管増生、腱鞘炎 | |
軟組織の浮腫(*)
近位指節関節の滑膜炎(矢印頭)
腱鞘内および関節内のパワードップラー
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足趾第4趾
滑膜炎(*)、伸筋腱(**)、軟部組織浮腫(矢印)
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③MRI
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Dactylitis以外にも滑膜炎・骨炎・骨髄浮腫のようなPsAに特徴的な所見を検出できる
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臨床的寛解を得ている患者への疾患進行のモニタリングにも使える
④画像評価
スコアリング指標があり、試験に用いられる場合もある
【まとめ】
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Dactylitisは骨侵食性の強いPsAと相関しており、PsAの唯一の所見であることもある
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Dactylitisの認識はPsAの早期診断に役立ち、疾患の進行・関節破壊を抑えられるかもしれない
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エコーとMRIははDactylitisの評価・治療反応性確認に有用
【感想】
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関節炎診療では「SpAっぽさを感じることが重要」と感じるが、そのなかでもSpAを強く疑うきっかけになるのがこのDactylitisである
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Dactylitisは足に多く自覚症状がない場合も多いので、原因不明の関節炎を診察する際は靴下まで脱がせてDactylitisを積極的に探しに行くことが重要と思う
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ミミックは多いが、丁寧に除外していけばSpA診断の根拠になるので大事にしたい所見である。