Patients With Rheumatoid Arthritis With an Inadequate Response to Disease-Modifying Antirheumatic Drugs at a Higher Risk of Acute Coronary Syndrome.
J Am Heart Assoc(IF: 4.605). 2021;10(8):e018290.
台湾からのコホート研究
心血管疾患は関節リウマチ(RA)患者の死亡原因として最多であるが、抗リウマチ薬(DMARDs: disease-modifying antirheumatic drugs)を用いることでリスクを下げられると考えられている。
ただ、DMARDsへの反応性と心血管系イベントの関連についてはわかっていないことが多い
→相関について調べてみた
→急性冠症候群リスクはDMARDs治療不応群で高くなる
【方法】
台湾の医療データベース(Chang Gung Research Database)に登録されたRA患者7114名を特定(病名ベース)
→厳格な除外基準を用いて、DMARDsへの反応不十分な群(DMARDs不応群)663人と対照群2034人を組み入れた
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除外基準…RAと診断前に急性冠症候群・脳卒中と診断された患者、慢性腎臓病・悪性腫瘍のある患者(DMARDs選択に影響を及ぼすため)、RAと診断後DMARDsが6ヶ月異常使用されていない患者、2002年以前にRA患者と診断された患者、20歳より前にRAと診断された患者
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DMARDs不応群は、同一のDMARDs治療を6ヶ月施行後のDAS28>5.1の患者と定義
Primary endpoint: 急性冠症候群・虚血性脳血管障害などによる入院
→RA及び併存疾患の治療に対してinverse probability of treatment weighting (IPTW)を行い、Cox比例ハザードモデルを用いて比較
【結果】
DMARDs不応群と対照群
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DMARDs不応群の患者は若く、スタチンを処方率が高く、フォローアップ期間も長い
炎症マーカーとDMARDs
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またDMARDs使用数も多い(p<0.0001)
血管イベント
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平均フォロー期間4.7年±4.2年
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DMARDs不応群で7.5%、対照群で6.4%に血管イベントあり
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複合血管イベント・虚血性脳血管障害では有意差なし
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急性冠症候群リスクはDMARDs不応群で有意に高い(ハザード比、1.45、95%CI、1.02-2.05)→DMARDs不応群は、疾患コントロールできている患者と比較して急性冠症候群を発症するリスクが高い
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時系列…フォローが長くなると徐々に2群間の差が出てくる?
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サブグループ解析
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DMARD不応群の高血圧患者は血管イベントリスクが高く、非高血圧患者ではリスクが低かった
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その他は特に有意差なし
【Discussion】
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DMARDs不応群は対照群と比較してACSリスクが高く、高血圧患者ではよりリスクが高い可能性がある→DMARDs不応群となる患者をいかに早く見極め、より強力な治療に切り替えるかが重要?
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RAは昔から心血管イベントが多いことが知られているが、その原因はRA自体の炎症に起因すると思われる→早期のRA治療強化によって患者の動脈硬化・心血管イベントリスクの軽減が可能かもしれない
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どうやってDMARDs不応群を早期認識するかは今後の課題
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MTX・バイオ製剤に関して、心血管イベントリスクが軽減するのはRAに対しての治療反応性が良い患者に限られている→RAへの治療反応性の良さは心血管イベントリスクを減少させる基礎となる
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時系列的にはフォローがながければ長いほど、2群に差が出てきていた→もっとフォロー期間が長ければ有意差が出たかもしれない
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limitation
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DMARDs不応群はステロイドの必要性が高かったため、純粋に「不応」だから血管イベントが多かったかどうかはわからない
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あくまでデータベースを用いた研究でしかない→肥満度・RAの抗体情報は解析に含められなかった
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情報の欠落による影響を避けることはできない
【感想】
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RAの心血管イベントリスクとして治療がうまくいっていない、というのは実臨床の感覚に近いと思われる
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どうしても治療がうまく行かない患者はステロイドを慢性的に飲んでいることが多いので、その影響が大きそうと思った。ただ、そのあたりの解析はなかったのが残念
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本筋と関係ないが、DMARDsの内容で台湾ではHCQ・CyA・AZP・LEFといったあまり日本では使わないDMARDsの使用率が高いことには驚いた。日本の一般的な治療とはかなり異なるという点には注意したほうが良さそう。