膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

腱付着部炎とエコー所見

Enthesitis in Psoriatic Arthritis, the Sonographic Perspective. Curr Rheumatol Rep. 2021;23(9):75. 
 
  • 腱付着部炎(Enthesitis)は乾癬性関節炎(Psoriatic Arthritis: PsA)の約30%で起こる特徴的な所見であり、診断に有用な所見である
  • ただ、その診断・画像評価は結構難しい
    • X線写真では長期間の付着部炎しか識別できない
    • MRIはコスト・アクセスの問題がある
  • 一方でエコーは結構役に立つ

【付着部炎のエコー定義】

2018年OMERACTによる付着部炎のエコー定義
  • 「骨に近い(骨皮質から2mm以内の)腱における、低エコー域および/または肥厚した付着部
  • 「活動性病変の場合ドップラー信号があり、構造的損傷の徴候として骨びらん・靭帯付着部増殖体(enthesophytes)/石灰化を示すことがある
    • 靭帯付着部増殖体(enthesophytes):付着部における骨増殖。骨棘との鑑別が必要
      • 例)踵骨靱帯付着部のenthesophytesCase courtesy of Dr Abdelkader Mallouk, Radiopaedia.org, rID: 71604
 

近位膝蓋腱
<:骨皮質から2mm以内のドップラー信号
←:骨皮質の異常
P:膝蓋骨

アキレス腱
<:骨皮質から2mm以内のドップラー信号
←:骨皮質の異常
C:踵骨

アキレス腱
<:骨皮質から2mm以内のドップラー信号
←:骨皮質の異常
⬅:靭帯付着部増殖体(enthesophytes)

膝蓋腱遠位部
<:骨皮質から2mm以内のドップラー信号
破線:骨皮質付近での血管増生
t = 脛骨結節
 
注意点
  1. 健常人であっても付着部の石灰化所見は多い→付着部石灰化があっても付着部炎とは限らない
    • パワードップラーが健常者で見られることは稀
  2. 付着部から2mm以上離れた位置に ドップラー信号が出ることが頻繁にある→付着部の種類によってカットオフを変える必要がある?
    • アキレス腱エコー:パワードップラーが付着部から2mm 以上離れた位置に検出される
        • b:深部踵骨滑液包炎(※後距骨下関節滑液包炎)
        • *:腱の高エコー・肥厚所見
  3. 逆に手指のような小関節でも「2mm」 というカットオフは微妙(滑膜炎も付着部から2mm以内に起こりうる)
    • 「腱の厚さの半分」が最適なカットオフかもしれない
PsA患者のPIP関節所見

A,A’:中節骨(mp)に付着する伸筋腱(cs)における付着部炎
>:付着部におけるドップラー信号

B,B骨皮質から2mmの位置(白破線)にドップラー信号(>)があるが、付着部炎ではない
腱の厚さの半分(黄破線)をカットオフんにするとよい?

【その他補足】

  • 付着部炎のスコアリング評価方法は色々あるが定まったものはない
  • エコー所見とPsAの重症度の相関については関連はありそう
  • エコー所見と治療反応性も一応関連がありそう
  • 関節炎のない乾癬患者においてエコー所見があった場合、PsA発症する可能性がある