Focal myositis: A review. Neuromuscul Disord. 2016;26(11):725-733.
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限局性筋炎(Focal myositis)は、稀な良性の炎症性筋疾患である
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「組織学的に証明された炎症性筋炎過程を伴う、全身症状のない単一の骨格筋に影響を与えるミオパチー」として定義される
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典型的な臨床症状は、「下肢の1つの筋肉内で急速に進行する孤立性病変」である
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原因は現状不明
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診断としては基本的には除外診断で生検が必須
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限局性筋炎は、筋肉内の孤立した炎症性腫瘤病変を呈するあらゆる疾患を模倣する可能性がある→鑑別は多彩
【臨床像】
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発症年齢:どの年齢でも発生する可能性があるが、多くは成人期中期に発症。男女どちらにも発症する。
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通常1箇所の筋肉のみに発症するが、隣接する筋肉全体に発症する場合あり
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※対称性に発症する症例も報告あり
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両側大腿の限局性筋炎(Intern Med. 2016;55(22):3369-3374.)
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数日-数ヶ月で発症し、1箇所の筋肉の腫脹・疼痛を起こすことが多い
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ただ、疼痛がなく筋力低下・局所の腫脹/熱感のみで発症する例もある
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発症部位は様々…傍脊柱筋、四肢近位筋、オトガイ筋、咀嚼筋など
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例)咀嚼筋(Rheumatology (Oxford). 2021;keab574.)
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全身症状はないことが大半(あっても発熱程度)
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神経学的異常、脱力感、感覚障害、関節炎はない
【検査】
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CK・血沈(ESR)・CRPは上昇しないこともあるが、約半数で高値
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CK・ESR上昇例ではびまん性炎症性ミオパチーを起こすことが多い
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自己抗体は陰性
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神経伝導検査…筋壊死がない限りは正常
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筋電図…低振幅低持続時間の多相性電位→筋原性パターンを取る事が多い
【画像検査】
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MRI…重要な診断ツール
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単一の筋肉内の病変が多い
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T2STIR画像での筋浮腫・高信号が特徴的
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造影MRIで斑状高信号が観察される
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右上腕三頭筋限局性筋炎、A(T2強調)/C(STIR)で高信号、B/D(Gd造影T1)で斑状高信号
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FDG-PET…高取り込みが特徴的、悪性腫瘍の除外にも有用
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左胸鎖乳突筋の限局性筋炎(Clin Nucl Med. 2016;41(6):469-471.)
【組織検査】
- 基本的に診断に筋生検が必須
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線維サイズの著しい変動、CD4 +リンパ球・マクロファージ主体で構成される炎症性浸潤、線維の変性/再生、間質性線維症などが特徴
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顕著な繊維化・筋の貪食像
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CD4+細胞・マクロファージ成分を伴う炎症性浸潤が特徴的
【病因】
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原因ははっきりしないが、神経因性・機械性・感染症・免疫不全・医原性・特発性などの説がある
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ベーチェット病との合併例の報告が多い(Ann Rheum Dis, 61 (2002), pp. 751-752)
【鑑別】
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限局性筋炎は、筋肉内の孤立した炎症性腫瘤病変を呈するあらゆる疾患を模倣する可能性がある→鑑別は多彩
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鑑別としては
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悪性腫瘍…紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ腫
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筋疾患…皮膚筋炎、多発筋炎、壊死性筋症、血管炎など
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→基本的には除外診断+病理診断
【経過・治療】
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経過は良好なことが多いが、再発例が1-18%程度で見られる
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ベーチェット関連の限局性筋炎は再発率が高い
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自然消退する例も多く、治療不要な場合あり
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その他ボツリヌス注射・外科的切除・運動療法などの報告もある
【感想】
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除外診断的に残る疾患ではあるが、疾患概念・診断・治療共に非常に曖昧
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疾患概念自体定まっていない異常、自己抗体陰性筋炎(サルコイドーシス・好酸球性筋炎など)が混じっているような気がする
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ただ「稀な自己抗体陰性筋炎で、除外診断・生検診断で診断する、予後は良好」ということは覚えておくといいだろう