手関節は大別して4区画に分かれるが、うち遠位橈尺関節(distal radioulnar joint:DRUJ)は結構見逃されがち+面白い関節なのでまとめ
【DRUJ基礎知識】
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関節リウマチの罹患関節で最多なのは手関節である
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手関節のコンパートメントは大別して4つに分けられる
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第1CM関節
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手根中央関節
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橈骨手根関節
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遠位橈尺関節(distal radioulnar joint:DRUJ)
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橈骨と尺骨をつなぐ関節は橈骨手根関節と遠位橈尺関節(DRUJ)の2つである
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DRUJは手首をひねる動作に必要な関節である
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(By Elatmani s - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17189516)
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このため、「ペットボトルを開ける」「ドアノブを回す」際に手首が痛いという患者にはDRUJの関節炎を疑ったほうがいい
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DRUJ関節炎患者は前腕下方に痛みを訴えることが多く、可動域制限自体は進行例以外ではない
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原因は関節リウマチ等の炎症性関節炎の他、外傷・変形性関節症などがある
【身体所見】
①触診
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DRUJは尺骨頭の真横にあるので、橈骨手根関節より中枢側を触って圧痛有無を見る
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DRUJ compression test…橈骨尺骨遠位端を掴む→ひねった際の疼痛確認
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”piano key sign"
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片手で遠位橈骨を掴んで手関節を安定させ、もう一方の手で尺骨頭を押す→尺骨頭が沈む=陽性(DRUJの不安定性を示す)
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尺骨頭が沈む様子がピアノの腱板のように見えるため、”piano key sign"と呼ばれる
②視診
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変形進行例は「caput ulnae syndrome」(尺骨頭症候群)と呼ばれる
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手根骨の掌側亜脱臼→尺骨頭の背側への隆起、尺側手根伸筋(いわゆる「第Ⅵ区画」)の掌側脱臼、手根骨の転位が見られる
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(Hand Clin. 2005;21(4):577-589.)
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更に進行すると、伸筋腱断裂が起こる(Vaughan-Jackson症候群)
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第Ⅴ/Ⅵ区画損傷に伴う腱断裂→第4・5指が伸びなくなっている(International Congress Series Volume 1295, June 2006, Pages 94-106)
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※第Ⅴ/Ⅵ区画は尺骨側を走行しているため、caput ulnae syndromeによって損傷を受けやすい
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腱断裂の原因は尺骨頭隆起と腱の機械的擦過傷の他、滑膜へのダメージ・血行不良などが関与している(Hand Clin. 2005;21(4):577-589.)
【画像検査】
①関節X線写真
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特徴的な所見として、Scallop signがある(※Scallop=ホタテ貝)
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DRUJの橈骨側の骨びらんが尺骨に押されて扇状に広がるため、「ホタテ貝」のように見える?
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RAの他、変形性手関節症でもみられる(Clin Orthop Relat Res. 1972;83:128-130.)
②エコー
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手関に対して短軸方向にエコーを当て、中枢側に持ってくると描出しやすい
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左DRUJ滑膜炎(自験例、許諾得ています)
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短軸で見てみると尺骨頭中枢側に滑膜が多いのがわかる
【治療】
◎関節注射
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回内位の状態で、背側からDRUJに注射を行う
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「筋骨格注射スキル―注射の原理原則と部位別実践テクニック」より(絶版)
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最近はエコーガイド下での注射手技が多い(J Ultrasound Med. 2011;30(11):1587-1592.)
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リスター結節(LT)・尺骨頭(UH)をランドマークにしてエコーで手関節の短軸像を出す
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背側DRUJを描出
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尺側側から平行法アプローチで注射
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その他、外科的治療として関節固定/形成術・腱修復術などがある