レイノー現象でコンサルを受けたときのポイントとしては、
②本当にレイノー現象か?…二相性変化(赤→白→青)、寒冷曝露で惹起されるか、爪上皮血管異常を伴うか
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特徴
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レイノーとの鑑別ポイント
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寒冷不耐
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寒冷曝露での血流低下
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皮膚色は変化しない
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血管の外的圧迫
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外的圧迫による一過性の血流低下
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圧迫解除で改善する
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複合性局所疼痛症候群
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外傷等を契機に発症
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痛みは持続的
皮膚等の萎縮を伴う
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閉塞性血管障害
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大血管の急性閉塞
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非対称性が多い
手指では指1本のみが多い
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Acrocyanosis
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機能性末梢血管障害
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持続的な青色変化
多汗症が多い
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Pernio(凍瘡)
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寒冷による皮膚疾患
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皮疹合併が多い
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急性特発性青指
(Achenbach症候群)
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誘引のない指1本の青色変化
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指1本のみに起こる
DIP近位腹側に多い
寒冷と関係しない
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肢端紅痛症
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四肢毛細血管の周期的な拡張
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暖かくすると起こり、寒冷曝露で消退する
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腫瘍随伴症候群
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悪性腫瘍による虚血
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悪性腫瘍
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①寒冷不耐
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寒冷曝露後の一般的な皮膚血流低下。皮膚色の変化は見られない。
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家族性の場合があり、女性や高齢者に多く見られる
②血管の外的圧迫
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重い荷物を持つ等の外的圧迫による一過性の血流低下→手指しびれ・変色
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血流が回復すればすぐに良くなる
③複合性局所疼痛症候群(CRPS)
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外傷等を契機に発生する四肢の疼痛・知覚異常・腫脹・皮膚血管の異常
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(Ann Vasc Surg. 2008;22(2):297-306.)
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交感神経系の異常→体温調節異常→レイノー現象発生とされる
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通常のレイノー現象と違い、痛みは連続的で皮膚萎縮と言った症状を伴う
症状
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特徴
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疼痛
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焼けるような痛み(burning sensation)
異痛症(allodynia)、疼痛過敏
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腫脹
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圧痕性浮腫が多い
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運動障害
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筋力低下、関節拘縮、振戦、ジストニア
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自律神経症状
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発汗異常
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その他
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毛髪・爪の成長障害、皮膚萎縮、関節・筋膜の線維症
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◎CRPSの診断基準(Pain Med. 2007;8(4):326-331.)
以下の4つを満たす
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1.
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誘因となる出来事と釣り合わない継続的な痛み
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2.
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以下の4カテゴリーのうち1症状以上を有する
・感覚障害:知覚過敏、allodynia
・血管運動障害:皮膚温度・色調変化の非対称性
・浮腫/発汗:浮腫・発汗変化・発汗の非対称性
・運動障害・萎縮性変化
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3.
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以下の4項目のうち2項目以上を有する
・感覚障害:痛覚過敏(ピンプリック)、allodynia(触覚、温度変化、圧迫、関節運動で惹起)の証拠
・血管運動障害:温度の非対称性(1℃以上)、色調変化の非対称性の証拠
・浮腫/発汗:浮腫・発汗変化・発汗の非対称性の証拠
・運動障害・萎縮性変化:関節可動域低下、運動障害、髪/爪/皮膚の萎縮性変化の証拠
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4.
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症状・徴候を説明できる代替診断がない
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④閉塞性血管障害
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非対称性が多く、手指の場合は指1本だけに起こることが多い
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診断…ABI、血管画像
⑤Acrocyanosis(肢端チアノーゼ)
⑥Pernio(凍瘡、しもやけ)
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寒冷・湿潤暴露で発生する局所的な腫脹・紅斑を伴う炎症性皮膚疾患
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手足、耳、顔などに発症することが多い
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皮疹(丘疹、斑点、結節性病変)の合併が特徴的で、レイノーとの鑑別ポイント
⑥急性特発性青指(Achenbach症候群)
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誘因なく突然1本の指に腫脹・疼痛が出現し、指掌側に紅斑→紫斑となり消退する
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指1本のみに起こること・寒冷と関係しない点がレイノーとの鑑別ポイント
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原因は不明だが、加齢に伴う局所の血管破綻とされる
⑦肢端紅痛症(Erythromelalgia)
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四肢毛細血管の周期的な拡張→四肢末端の灼熱痛,紅潮,皮膚温の上昇を三主徴とする稀な症候群
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周期的に指尖部が発赤することでレイノー現象の回復期に見える
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血管拡張は、暖かい温度で誘発され、寒冷曝露で改善される→レイノー現象とは逆
⑧腫瘍随伴症候群(Paraneoplastic acral vascular syndrome)
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悪性腫瘍に関連した指虚血(CMAJ. 2020;192(46):E1470.)
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(EJCRIM 2021;8)
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交感神経系への腫瘍浸潤、腫瘍塞栓、血液粘度の上昇、腫瘍細胞による血管収縮などが原因と考えられる
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治療…腫瘍の治療、プロスタグランジン製剤
⑨免疫チェックポイント阻害薬に伴うレイノー現象/指虚血
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レイノー現象(Oncologist. 2020;25(5):e753-e757.)、指虚血(J Immunother Cancer. 2018;6(1):12.)共に報告あり
参考:UpToDate "Clinical manifestations and diagnosis of Raynaud phenomenon"