膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

ACR2023内容備忘録

アメリカリウマチ学会ACR2023(https://rheumatology.org/annual-meeting)で印象に残った内容を備忘録としてまとめておく。

【RA】

  1. RAに対する経口MTX25mg/wの分1 vs 分2→分2のほうが効果が高いが、肝機能障害が増える
    • MTX分割投与は単回投与と比較して、「MTX1錠分くらい効果↑・副作用↑」と教わったが、実際データで示されてなかったのは盲点。ただ分割投与によるコンプライアンス不良には注意が必要。個人的には単配投与でまずスタート→bDMARDs使用するな悩ましい例で分割に変更というのがいいと思う。
  2. バイオ使用中のRA患者における癌発生率を調べたデータベース研究…TNF阻害薬は、RTX・ABTと比較して癌発生率が低い。
    • acrabstracts.org

    • RTXに発がん性があるとも思えず、使用患者群の違いがバイアスになってそうだが…。少なくともTNFでがんが増えるわけではなさそう。
  3. ◎早期乳がん併発RA患者へのTNF阻害薬は生存率に影響を及ぼさない。ステロイドは死亡率増加につながるコホート研究)
    • これもTNF阻害薬をがん患者に使っていいのでは?という根拠になりそうな論文。漫然とステロイド続けるほうが危険なのだろう。ただアメリカの保険データベース研究なので、ステロイド使用患者には金銭面・背景疾患などのバイアスがありそうだが…
  4. RA-ILDに対してのTNF阻害薬…死亡・入院リスク増加には繋がらない(データベースからの傾向マッチング)
    • 生物学的製剤とIPの関連自体も、「思ったよりない」という方向で落ち着きそう。ただRA-ILDはかなりヘテロな概念なので、重症例・IP進行例にも同じことが言えるかはわからない。
 

【SLE】

  1. 糖尿病合併ループス腎炎に対してのSGLT2阻害薬は、DPP4阻害薬と比較してCKD進行・AKIリスクを低下させるが、性器感染症は増える
    • acrabstracts.org

    • DM合併があるならそのとおりだと思う。今後ループス腎炎だけであってもSGLT2阻害薬入れるべきという風潮になるのだろうか?また今後MRA(フィネレノンなど)も入れるなどしてたんぱく尿を減らす風潮になるのだろうか?
  2. SLE患者はHIV患者レベルに高リスクのHPV感染・子宮頚癌リスクが高い
    • 先行研究でも言われていたが、ここまで高いとは…。日本ではHPVワクチン接種率が尋常ではなく低いので、さらに高リスクになるのだろう
 

【血管炎】

  1. ANCA関連血管炎へのAvacopanのリアルワールドデータ…Avacopan早期導入→2ヶ月以内にPSL終了できることが多い 

    • 本当か?ADVOCATE-studyの内容を鵜呑みにはできない。肝障害が多く、効果は小さい印象だが…
  2. PEXIVASプロトコルのリアルワールドデータ…reduced群では腎予後不良傾向あり→重症腎病変がある症例には、ゆっくりとした漸減(standard群)がいいのかもしれない?
    •  
    • 個人的には最も印象的な報告。早期漸減してしまうと蛋白尿等の腎炎所見が残ってしまう例が多い印象だったので、個人的には納得行く内容。臨床試験とリアルワールドデータの差を感じる。詳細に期待。
  3. EGPAへのRTX…ANCA陰性例は△、ANCA関連血管炎に陽性例は○
    • acrabstracts.org

    • ですよね、という内容。EGPAはANCA有無で二分するのは乱暴だが、やはりある程度の違いがあるのは確か。
 

間質性肺炎

  1. CTD-ILDガイドライン案…スクリーニング→ILDあるなら半年おきくらいで呼吸機能検査(そんな頻回に日本ではできないが…)→疾患別の治療(やけにMMF推し)
  2. 強皮症関連間質性肺炎(SSc-ILD)におけるMMFとTacは同等の効果
    • acrabstracts.org

    • 26例の試験であり24週時点までのFVC変化を見ているだけなので、なんとも言えない。ただMMFがSScに対して保険適応となる未来が見えないので、気になる試験ではある。
 
 

【その他】

  1. IgG4RDに対しての免疫抑制剤は漸減中止すると再発率が高くなる。低用量ステロイドはやめられるかもしれない。
  2. Denosumabのやめ方…投与から2年半以内→アレンドロン酸orゾレドロン酸点滴に置換、2年半以上ならゾレドロン酸置換→CTXモニター
  3. leukocytoclasic vasculitisの評価方法…感染症・腫瘍・薬剤性の除外→RA、SLE、クリオグロブリンAPS、AAVなどのスクリーニング