膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

関節リウマチにおける好中球減少

RA患者における好中球減少はコモンな現象だが、鑑別は多彩。特に薬剤性・Felty・LGL白血病に注意が必要。
 
早期関節リウマチにおける頻度…771人中58人(7.5%)で77件の好中球減少症エピソードあり。
好中球減少リスク…非喫煙、女性、ベースライン好中球値低値(RMD Open. 2018;4(2):e000739.)

◎好中球減少の原因

①薬剤性
TNF阻害薬(TNFi)、IL-6阻害薬、Rituximab(RTX)、JAK阻害薬、MTX、レフルノミド、サラゾスルファピリジン、NSAIDsなどで報告あり
TNF阻害薬
発生率18.8%(好中球数<2000/μL)、そのうち6%が重篤感染症を発症
TNF阻害薬投与から2週間程度が多い
リスクは元々の好中球低値
(Arthritis Care Res (Hoboken). 2010;62(6):764-769.)
IL-6阻害薬
Tocilizumab投与から6週程度まで低下傾向
発生率は9.1%(好中球)<1500/μl
TCZで治療された患者における重篤感染症の発生は、好中球数の減少とは関連していない
リスクは元々の好中球低値
(Rheumatology (Oxford). 2017;56(4):541-549.)

RTX
薬剤投与の数か月後の遅発性好中球減少症が多い。
発生率は3%程度(好中球<1500/μl)
Arthritis Rheum. 2011;63(8):2209. 
JAK阻害薬
頻度不明
投与早期の好中球減が大きいと、効果も大きい?
(2014ACR ABSTRACT NUMBER: 2489)
MTX
汎血球減少パターンが多く、好中球単独減少はまれ
発生時はロイコボリンレスキュー等で治療

 
②Felty症候群
RA・好中球減少症・脾腫を3徴とする症候群。
  • 一般的には長期罹患・Seropositive RAで発生するが、細菌は治療の進歩で減少傾向。
  • 脾腫は90%以上に見られるが、脾腫が存在しない例もある
  • 診断…基本的には除外診断。鑑別疾患はLGL(大顆粒リンパ球)白血病、SLEなど
  • Felty症候群とLGL白血病は相関関係にあるとされ、Felty症候群患者はLGL白血病罹患率が高い
  • 治療はまずMTXで→無効の場合RTX→ステロイド→Abatcept(TNF・IL-6阻害薬は好中球減少リスクあり)
 
③LGL(大顆粒リンパ球)増多症/白血病
LGL による末梢血・骨髄へのリンパ球浸潤、脾腫、血球減少が特徴の白血病
  • LGLは「細胞質に3個以上のアズール顆粒を有する赤血球の2倍以上の長径の大リンパ球」と定義される
  • LGL白血病患者の約1/3がRAとされて、RAが先行して緩徐にLGL細胞増多が起こることが多い(Cancers (Basel). 2021;13(17):4418.
  • 診断…他原因除外+末梢血のフローサイトメトリー・遺伝子検査、骨髄検査
  • 緩徐進行することが多く予後良好なことが多い
  • 治療…無症候性の場合経過観察。症候性の場合、MTX・シクロスポリン・シクロホスファミドなど
 
④RAと無関係の原因
  • 慢性好中球減少症…遺伝性(Duffy-null associated neutrophil count)、民族性好中球減少症
  • VitB12、葉酸欠乏
  • その他の薬剤性好中球減少…抗菌薬など
  • 骨髄疾患
 

◎診断フローチャート

 
参考:UpToDate "Hematologic complications of rheumatoid arthritis"