Arthritis Rheumatol. 2022;74(6):915-926.
全身性エリテマトーデス(SLE)の臓器病変といえば、ループス腎炎(LN)だが、難治例も多々見られる。その治療に関してのエキスパートオピニオン。
【ポイント】
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治療を行って反応がなければ「難治性ループス腎炎」というのは言い過ぎで、本当に難治性なのかどうか判定する必要がある
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アドヒアランスと薬剤投与量が適正かどうかの判定を行い、問題なければ治療強化(Belimumab導入など)を行う
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その治療強化でも反応がなければ、再度アドヒアランスと薬剤投与量が適正かどうかの判定を行い、問題なければ「難治性ループス腎炎」と判断して治療を変更する
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難治性ループス腎炎の場合、まずRituximab投与を考える
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Rituximab投与でも反応がない場合の治療に関するデータは非常に限られているが、選択肢は増えている
【Background】
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SLE患者の約50%に腎病変が見られ、その中で最も多いのはループス腎炎である
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迅速な診断・積極的免疫抑制療法を行っても、患者の14-33%が治療に反応せず、難治性ループス腎炎を有すると報告されている
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ただ、標準的な治療1つの単独コースを行ってだめなら難治性というのは言い過ぎ→本当に難治性なのかどうか判定する必要がある
その理由としては以下の通り
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コンプライアンス不良が多い…ループス腎炎患者のうち80%以上の治療遵守ができたのは25%以下(Arthritis Care Res (Hoboken). 2019;71(11):1419-1424.)
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薬の投与量が適正ではない…効果が期待できる薬物投与量ではない可能性がある
対策
その他の注意点
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治療反応を早期に評価してはいけない…反応達成には時間がかかる
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ネフローゼレベルの蛋白尿がある場合、complete responseには6-12ヶ月はかかる
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ただし早期の蛋白尿減少は、長期的な予後良好につながる→治療2−3ヶ月時点で蛋白尿が25%以上改善した患者の場合は治療スイッチが不要と思われる
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蛋白尿・腎機能低下があっても、ループス腎炎の持続的炎症が原因とは限らない
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他の要因が原因のことがある…慢性損傷、他の疾患(抗リン脂質抗体症候群など)
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鑑別に腎生検が必要なことがある
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遺伝的要因のため、適切な治療を行っても悪化する(治療反応がないようにみえる)場合がある
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例:アフリカ系患者のアポリポタンパク質L1の遺伝的変異(末期腎不全になりやすい)
【アプローチ】
①難治性ループス腎炎の診断
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治療導入から2-3ヶ月経過観察し、eGFRの改善・蛋白尿の減少を評価
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改善がない場合、アドヒアランス・薬剤投与量が適正かどうかの評価を行う
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上記が問題ない場合、治療を変更/強化…Voclosporin(日本にはない) or Belimumab導入が多い
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治療変更/強化から2−3ヶ月後に再評価
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改善がない場合、アドヒアランス・薬剤投与量が適正かどうかの評価を再度行う
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上記が問題ない場合、難治性ループス腎炎と判断
②難治性ループス腎炎の治療
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難治性ループス腎炎には、まずB細胞標的療法(RTX)を行う
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その際、免疫抑制のリスク/ベネフィットの総合評価が必要
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その後効果判定を行い、次の治療を選択する
③薬剤の選択
◎リツキシマブ(RTX)
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ループス腎炎にB細胞は大きく関与している→前駆B細胞を枯渇させ、形質細胞をの補充を阻害する(☓枯渇)
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難治性ループス腎炎に対しての治療薬としてはデータが多い
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難治性ループス腎炎へのRTX追加→約40%の患者はcomplete response達成、34%はpartial response(Nephrol Dial Transplant. 2013;28(1):106-111.)
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ただ(難治性以外も含んだ)ループス腎炎へのRTXの効果はLUNAR trialにおいてnegative→注意は必要(Arthritis Rheum. 2012;64(4):1215-1226.)
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参考:BEAT-LUPUS(RTX→Belimumabで、ステロイド漸減作用はなかったが、dsDNA抗体価低下・フレア減少は得られた)
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◎その他
データは非常に限られている。基本的にはケースシリーズレベル。
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抗形質細胞療法…Bortezomib(プロテアソーム阻害薬)、Daratumumab(抗CD38抗体)
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難治性ループス腎炎の根本的な病原メディエーターは、通常の免疫抑制剤に対して耐性の形質細胞ではないか?という考えからの治療
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Bortezomib・Daratumumab共に一過性の形質細胞減少を起こすだけなので、追加の免疫抑制が必要
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例)Daratumumab→Belimumabでフォローアップ
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レフルノミド(ジヒドロオロチン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤)
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CyCと比較して、効果同等・安全性に優れる?(PLoS One 2015;10:e0144548.)
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難治性ループス腎炎17名に使用し、76%に効果があったという報告あり(Ann Rheum Dis 2006;65:417-8.)
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免疫グロブリン静注療法(IVIG)
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免疫抑制作用がないので、悪性腫瘍・感染症リスクのある患者にも使いやすい
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IL-2療法
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小規模研究のみ
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抗補体療法…Eculizumab(C5a阻害薬)
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CAR-T療法
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Anifrolumab
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血漿交換
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造血幹細胞移植