Autoimmun Rev. 2023;103391.
リウマトイド血管炎(Rheumatoid vasculitis: RV)は、RAの関節外症状として有名だが、RA治療の改善とともに減少傾向にある。
ただ、多彩な臓器症状・鑑別疾患の多彩さ・治療の難しさなど難しい例も散見される。治療としてはRituximabが中心だが、保険的に使いにくいのが難点。
◎機序・疫学
高力価のリウマトイド因子(RF)・免疫複合体 の血管壁への沈着→補体経路を活性化→好中球動員→血管炎、という機序が提唱されている
報告のあるリスク因子は以下の通り
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RAの活動性が低い場合でも発生したという報告あり、注意
◎症状
多い臓器症状は、皮膚(65-88%)、末梢神経(35-63%)、心臓(33%)
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皮膚症状…様々。
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Bywater病変…爪周囲や指先の小さな褐色壊死性丘疹、非好中球性毛細血管炎と浅在性真皮血管の微小梗塞
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皮膚病変は影響を受ける血管のサイズによって異なる…小血管炎、中血管炎など
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末梢神経障害…血管炎による神経梗塞によって発生する。多発性単神経炎など。
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眼…結膜炎、強膜炎、潰瘍性角膜炎
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その他稀なもの…肺血管炎(1%)、壊死性糸球体腎炎(1%)、腸管病変(2%)など
重症度予測…皮膚、多発性単神経炎、腸管
死亡率と相関…皮膚血管炎、3or4肢の神経障害、診断時のC4値低下
◎診断
以下のうち、1つ以上が存在
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確定診断は、皮膚または筋肉の生検で血管炎所見の確認
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皮膚所見は以下の2つが典型的…好中球性浸潤が主体の小血管炎(leukocytoclastic vasculitis)
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真皮-皮下血管接合部の壊死性血管炎(中型血管炎、cPAN様)
RFIgA陽性と血清C3値の低下が特徴的とする報告もある(Ann Rheum Dis. 2003;62(5):407-413.)
ただ現在はRVの病態生理と症状の理解が進み、Scott and Bacon 1984年基準は適切ではなくなった
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RA患者の皮膚症状はRV以外も多彩…静脈/動脈の機能不全、外傷性、Felty症候群、抗リン脂質抗体症候群、感染症、壊疽性膿皮症など
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RA患者の血管炎はRVとは限らない…クリオグロブリン血症
以下が改訂案
除外 |
以下を除外 |
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所見 |
1 |
臨床症状: |
2 | 全身症状…倦怠感、体重減少、筋肉痛、発熱 | |
3 | 生物学的特徴…ACPA・RF陽性 | |
診断 |
以下の場合TNF阻害薬誘発性RVを考慮
以下の場合、組織学的所見不要でRVを考慮
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◎治療
-ステロイド・csDMARDs
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TNFi・RTXの効果が出るまで6w-3ヶ月程度かかるため、”bridging”として使用する
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mPSL投与(0.5~1mg/kg/日×3日間)→3ヵ月かけて漸減
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MTXはできる限り継続+最適化…投与量調整・皮下注への切り替え
-生物学的製剤
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生物学的製剤未使用→TNFi・Rituximab(RTX)がRVの治療に有効とされる
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TNFi誘発RVの頻度は非常に低いため、TNFiを避ける必要はないとされる
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生物学的製剤使用中のRV
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血漿交換はほぼデータなし。IVIG・その他b/tsDMARDs(TCZ、ABT、JAK阻害剤)は症例報告のみ。
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TNFi使用中…TNF阻害薬中止・他生物学的製剤(RTX)へのスイッチを考慮。HCQ追加を考慮。
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TNFi・RTX以外の生物学的製剤(TCZ,ABT)…TNFi、RTXにスイッチ
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TNFi・RTXに抵抗性…シクロホスファミドが適応。