膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

再発性リウマチ性多発筋痛症に対してのSarilumab

 N Engl J Med. 2023;389(14):1263-1272.
リウマチ性多発筋痛症(PMR)はステロイド単剤治療が可能なリウマチ性疾患ではあるが、ステロイド漸減中によく再発する。
その再使用する薬剤としては、Methtrexate(MTX)・Tocilizumab(TCZ)(保険適応外)があり、TCZの有効性は各方面で報告されている。

 

日本で利用可能なIL-6阻害薬としては、TCZの他Sarilumab(以下SAR)(ケブザラ®)がある。
今回(二番煎じ的に)再発性PMRへのSARの臨床試験SAPHYR試験が公表された。
SARを使用することによって急速ステロイド漸減可能・寛解率高い、という内容だが、(PSL3ヶ月で終了プロトコルということもあり)SAR使用しても大して寛解していない。PMRはSAR単剤では太刀打ちできない可能性もあるのだろうが、本当に彼らはPMRなのだろうか?
 

【Method】

多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験
 
患者群:再発を起こしたPMR患者
  • 8週間以上のPSL≧10mgのステロイド治療歴があり、PSL≧7.5mg/dの状態でステロイド漸減中、スクリーニング前12週間以内に1回以上再発 
  • PMRはACR/EULAR2012年基準を満たすもの
 
介入群…SAR200mg/2w+PSL14週漸減
比較群…プラセボ皮下注/2w*PSL52週漸減
  • 好中球減少・血小板減少・肝酵素上昇等でSAR容量は200→150mg減量可能
  • PSL初期用量は15mgで漸減していく
  • MTX併用は用量が安定していれば使用許可
 
Outcome…Primaryは52週時点での臨床的寛解(PMR症状寛解CRP<10mg/L)
  • Secondary…持続寛解アウトカムの各要素、52週間の累積ステロイド用量、臨床寛解後~初回再燃までの時間、composite Glucocorticoid Toxicity Index score、安全性
 

【Result】

2018/10-2020/7月間に計118名→60名SAR群、58名プラセボ群へ
  • ベースライン患者情報…2群に差なし。年齢中央値70歳、白人8割、再燃時PSL中央値は10mg/d。
 
Primary outcome(52週での寛解割合)…SAR群の28%(60人中17人)、プラセボ群10%(58人中6人)→SAR群のほうが寛解率は高い。ただし寛解率は28%と低い
  • 寛解率、非フレア率、CRP正常率、ステロイド漸減率などすべての項目でSAR群のほうが良好
 
Secondary outcome
  • 最初の再燃までの時間…プラセボと比較してサリルマブ群で有意に長かった(ハザード比 0.57、95% CI 0.37-0.87、p=0.009)。
  • ステロイド累積用量中央値…サリルマブ群の方がプラセボよりも有意に低かった(1957 mg vs 2963 mg、p=0.009)。
  • HAQ-DI…52 週時点でプラセボよりもサリルマブ群の方が改善した (-0.75 vs -0.50、p<0.001)
  • SF-36…52 週時点でプラセボよりもサリルマブの方が改善 (6.4 対 2.8 ポイント増加、p=0.009)。
  • 有害事象
    • 好中球減少…SAR群で2例(3%)で発生し、SAR中止で改善
    • 感染症による中止…SAR群で若干多い
 

【Discussion】

  • 再発性PMR患者において、サリルマブの併用によってPSLを急速漸減できる
  • IL-6阻害薬への反応の予測因子を特定し、持続的寛解のためのSAR療法の最適な期間を決定するには、さらなる研究が必要である
  • 全体として、この研究は、サリルマブが再発性リウマチ性多発筋痛症の寛解率を改善し、グルココルチコイドへの曝露を最小限に抑えるための効果的な新しい選択肢であることを確立しています。
 

【感想】

この試験の結果を受け、FDAではPMRへのSAR治療を承認している
IL-6阻害薬のPMRへの効果は既知のことであり、NEJMに載るような内容はというと微妙な気がするが、これを受けて日本でもPMRへのSARの保険適応が通ったりするのだろうか?(個人的には濫用されそうなのでやめたほうがいいと思う)
SAR使用しても大して寛解していないというところが突っ込みどころである。本当に彼らはPMRなのだろうか?14週でPSL中止という漸減を再発例に行っているから、ということで本当に説明がつくのか正直疑問。
 
正直難治/再発性PMRはそもそも診断が間違っていることが多い。再発するからSARというよりは、他の鑑別を行う(特に結晶性関節炎・RA)→PMRしかないのならSARが良いと思われる。

ただ、結晶性関節炎・RAともにIL-6阻害薬が効く可能性がある、というところが悩ましい。どうしても診断つかないのなら感染症だけ除外してSAR/TCZ投与というのが現実、というのが悲しい。

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