Ann Rheum Dis. 2022;annrheumdis-2021-221126.
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は関節リウマチに次いで高齢者に多い炎症性リウマチ性疾患であり、治療はステロイド単剤治療が推奨されている
PMRではIL-6経路が大きく関与していることはわかっているため、今回IL-6阻害薬であるTocilizumab(TCZ)を新規発症PMRに使用するRCTが実施された(PMR-SPARE)
※PMRに対してのTCZの保険適応は無いので注意
【Method】
P(患者):発症早期のPMR(スクリーニングから2週間以内)
-
PMRの診断は2012年ACR/EULAR基準を満たしたもの
-
PSL先行投与は≦25mg・2週間以内は許容
-
巨細胞性動脈炎(GCA)合併例は除外
E(介入群):TCZ群…TCZ皮下注毎週+ステロイド投与
0(アウトカム)
-
※寛解定義…PMRによる疼痛・こわばり症状消失
◎ランダム化・盲検化
【結果】
-
2017−2019年に39人が参加→3人が除外され、36人中19人がTCZ群・17人がプラセボ群に割り当て
-
TCZ群の84%・プラセボ群の65%が、24週目まで試験を完了
-
2群間の特徴に関して統計的な有意差なし…全員白人、70歳前後、CRPは1くらい
-
その他のSecondary endpoint(初回再発までの期間、16週目・24週目での累積PSL投与量)…TCZ群のほうが良い
-
安全性…100患者年あたりの有害事象:TCZ群490.6、プラセボ群で555.0
-
プラセボ群の41%で筋骨格系有害事象を起こしたが、TCZ群では発生しなかった
-
24週目時点でのCRP・ESR値に2群間の差はなかった
【Discussion】
-
新規発症PMRにTCZ週1注射を用いることによって
-
注意点…他の薬剤(MTXなど)との比較は行っていない、再発・難治性PMRに対しての試験ではない、nは非常に小さい(36例)
【感想】
-
PMRも難治性ならPSL→MTXという流れになっているが、TCZも有効なのでRAの治療と変わらない。こう考えるとRAかPMRか悩ましい症例であっても同じ治療をしてしまえばいいように感じてしまう(※保険病名には注意が必要)
-
PMRへのTCZ保険適応が広がる気はしないが、有効であることは覚えておいて損はない
-
ただPMRというPSL単剤で治療可能な予後の良い疾患に対して、TCZ毎週投与という患者にも医療経済的にも負担の大きいことをする価値があるのか?という問題は残っている
-
PMRへのRituximab投与(https://www.thelancet.com/journals/lanrhe/article/PIIS2665-9913(21)00245-9/fulltext)のときにも同じ話が出ている