巨細胞性動脈炎(GCA)・リウマチ性多発筋痛症(PMR)の長期管理
Camellino D, Matteson EL, Buttgereit F, Dejaco C. Monitoring and long-term management of giant cell arteritis and polymyalgia rheumatica. Nat Rev Rheumatol. 2020;16(9):481-495. doi:10.1038/s41584-020-0458-5
GCA/PMRのフォローで悩むことが多いので読んでみた
①モニタリング
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活動性評価基準・診断基準もなにもない⇨臨床研究でも基準はバラバラ
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一応使えそうなものとしては
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PMR…PMR Activity Score(PMR-AS)(Ann Rheum Dis. 2004;63(10):1279-1283.)
②バイオマーカー
CRPを始めとした血清マーカー・超音波等の画像マーカー両方を利用して管理していく。
血清マーカー
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長所
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短所
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ESR(血沈)
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頻用される
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再発患者の20%以上はESR正常
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頻用される
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再発患者の20%以上はCRP正常
TCZ使用下では偽陰性になりうる
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IL-6
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疾患活動性と正の相関あり
TCZ使用患者では、再発の予測に使えるかもしれない
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Calprotectin
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ESR・CRPよりも感度がよく、TCZ使用中の疾患活動性に使えるかもしれない
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研究途上で結果に差があり、臨床での役割は限られる
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PTX3
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疾患活動性・視力障害に対して正の相関あり
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PMRと健康なコントロール群の間で差がなかった
一般的でない
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Osteopontin
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疾患活動性と正の相関があり、IL-6とは部分的に独立?
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一般的でない
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画像マーカー
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所見
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長所
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短所
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超音波(US)
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a:血管壁肥厚⇨"halo sign"
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複数の血管壁を1回で評価できる
被爆もなく、利便性が高い
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疾患活動性との関係性が不明
検者の腕前に依存
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VHR-US
UHF-US
(高精度の超音波)
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標準的な超音波検査同様
+血管外膜/中膜/内幕の解析ができる
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疾患活動性との関係性が不明
一般的でない
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造影CT
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上行大動脈壁肥厚
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短時間で可能、幅広く利用されている
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寛解した患者でも壁肥厚が持続する
造影剤/被爆リスク
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MRI、MRA
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大動脈血管壁肥厚
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血管形態が評価できる(動脈瘤・狭窄)
被爆なし
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疾患活動性との相関は不明
撮影時間が長い、米国では利用しにくい
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FDG-PET-CT
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上行大動脈・右内頚動脈・腋窩動脈の高吸収
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疾患活動性と相関している?
治療中止後の再発、大動脈拡張の予測ができる
他の炎症の原因を調べられる(感染症・癌など)
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低疾患活動時の血管への弱い取り込みの意義が不明
一般的でなく、高額
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FDG-PET-MRI
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疾患活動性と相関している?
血管形態が評価できる(動脈瘤・狭窄)
他の炎症の原因を調べられる(感染症・癌など)
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技術的なハードルが高い
全く一般的ではない
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③長期管理
再発リスクとしては色々いわれている
GCAの再発リスク
PMRの再発リスクは、大血管病変・ベースラインの関節所見とは相関しない
④ステロイド治療
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眼症状がある場合はステロイドパルスを検討
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EULAR2018推奨
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PSL40~60mg/dayで投与⇨2~3ヶ月以内に15~20mg/dayに漸減⇨1年後には<5mg/dayにする
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60~40mg:10mg/wで漸減
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40~20mg:5mg/wで漸減
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N Engl J Med. 2017;377(4):317-328.
PMR
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PSL12.5-25mg/dayで開始⇨4~8週間以内に10mg/dayまで漸減⇨4週間毎に1.0-1.25mg/dayずつ漸減
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経口薬の代わりにメチルプレドニゾロン筋肉注射(初期用量:120mg/3week)というのもオプション
⑤ステロイド以外の治療
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トシリズマブ(TCZ)…抗IL-6受容体抗体
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GiACTAでの1年後寛解率
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メトトレキサート(MTX)
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ステロイドの使用量を下げることができるが、有用性は限られている
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サリルマブ…抗IL-6受容体抗体
⑥治療の漸減・再発マネージメント
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1年以内でのPSL<5mg/dayが目標
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TCZ併用によってステロイドは速やかに漸減することができる
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PSL単剤では1年以上かかるが、GiACTAでは50%が約半年でPSL終了できている
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再発は、GCAの治療の漸減期および中止後に頻繁に起こる
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TCZ併用有無に関わらず、PSL≦10mg/dayでフレアしやすい
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N Engl J Med. 2017;377(4):317-328.
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TCZ使用で寛解した患者も、TCZ中止すると47%が再発した
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中止後平均6.3ヶ月で再発
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Rheumatology (Oxford). 2019;58(9):1639-1643.
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⇨TCZの立ち位置に関しては長期的な安全性の検証・費用対効果)まで一旦再増量することが勧められる
PMR
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再発率は31.5%とたかく、発症数ヶ月以内で高い
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PSL<5mg/dayで維持できるようになるまでの中央値は1.44年と結構長い
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ステロイドからの永久離脱までの期間中央値は5.95年(95%CI 3.37-8.88)
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ただ、永久離脱できない人も多々いる…
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離脱が難しい要因…変形性関節症や副腎不全等の非炎症性疾患の悪化
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再発した場合は、最小有効量まで一旦増量or5-10mg増量
⑦合併症とのその治療
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そもそも、病気そのものよりもグルココルチコイド治療による合併症のほうが多い(Rheumatology 57, 322–328 (2018).)
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ステロイド有害事象
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PSL5mgでも感染症リスクは大幅に上がる(Ann Rheum. Dis. 75, 952–957 (2016).)
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GCAの血管合併症
合併症
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予防
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スクリーニング
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治療
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骨吸収阻害薬・VitD
運動、禁煙、減量
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BMI、血清PTH値、血清補正Ca値
骨密度検査(DXA scan)
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骨吸収阻害薬
VitD±経口カルシウムサプリ
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運動・食事療法
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血糖、HbA1c
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糖尿病の薬物療法
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高血圧
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運動・食事療法
禁煙、減量
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血圧測定
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運動・食事療法
禁煙、減量
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血中TChol・HDL・LDL・TG測定
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脂質降下薬
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体重増加
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運動、減量
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PMRの場合ステロイド筋注への変更
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ワクチン接種・禁煙
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ツベルクリン検査・IGRA
肝炎の血清学的検査
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結核・肝炎の治療
重度の場合はDMARDs中止
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⑧まとめ
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GCA/PMRの長期管理のポイントとしては以下の通り
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臨床症状、患者愁訴、血清/画像バイオマーカーを組み合わせた評価を行う
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再燃を抑える
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ステロイドによる有害事象を最小限にする
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長期合併症を防ぐ
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主な臨床的疑問
あまり新しいことはないが、知識の整理にはなる。
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大血管病変のGCAにTCZ入れると本当に指標が画像だけになってしまうので、注意が必要。ただこれ読む限り、画像だけでフォローするのも危険な気がする…