高安動脈炎は難治性かつ治療エビデンスも限られることから、どう治療するかは非常に悩ましい
この3つを比較しつつ高安動脈炎の治療についてまとめてみた。
※PSL:ステロイド、MTX:メトトレキサート、AZA:アザチオプリン、TNFi:TNF阻害薬、TCZ:トシリズマブ、MMF:ミコフェノール酸モフェチル、CyC:シクロホスファミド、IFX:インフリキシマブ、ETN:エタネルセプト
【治療概略・フローチャート】
1. ACRガイドライン
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臨床的寛解達成→PSL漸減
2.EULARガイドライン
※Major relapse…以下のいずれかを伴う再発
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進行性の大動脈/大血管の拡張、狭窄/解離を起こす活動性の大動脈炎症がある
Minor relapse…Major relapseを満たさない再発
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PSL40-60mg/day+csDMARDs(MTX, レフルノミド, MMF, AZA, CyCなど)開始
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ステロイド漸減…2-3ヶ月以内に15-20mg/day、1年後に≦10mg/day目標
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持続的寛解維持→PSL漸減
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再発→PSL再増量(Major relapseでは40-60mg/day, Minor Relapseなら最終有効量まで増量)+TCZ or TNFi追加検討
3.日本ガイドライン
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PSL0.5-1mg/kg/day単剤で開始
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PSL漸減…5mg/w減量(30 mg/日まで)→ 2.5mg/w減量(20mg/日まで)→月あたり1.2mgを超えない減量 → 維持量:5-10 mg/日 →off
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再発→PSL増量+免疫抑制剤併用…TCZ、MTX、AZAなど
4.3つのガイドライン比較
【治療各論】
1. ステロイド
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3ガイドラインともにPSL高用量(1mg/kg/day程度)、限局性病変の場合減量投与考慮を推奨
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初期PSL投与量30mg/day以下の場合、再発率高い(J Rheumatol. 2020;47(2):255-263.)
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◎ステロイドパルス
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全くデータはない
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日本・ACRでは「緊急性の高い場合・難治例の再燃時に考慮される場合あり」と記載あり
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◎減量速度
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ACRは記載なし
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日本…詳細に記載あり(5mg/週減量(30 mg/日まで)→2.5mg/w減量(20mg/日まで)→月あたり1.2mgを超えない減量 → 維持量:5-10 mg/日 →off)(※活動性がある場合はより遅い)
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「再燃・非再燃に寄与する最も重要な因子はPSL減量速度(P= 0.01)であり,減量速度が1ヵ月あたり1.2 mgより速いか遅いかで再燃率が有意に異なっていた」という日本からのコホート研究(Circ J 2012; 76: 1004-1011.)をもとに上記記載となっている
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EULAR…2-3ヶ月以内に15-20mg/day、1年後に≦10mg/day
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PSL隔日内服についてはどのガイドラインにも記載なし
2.csDMARDs
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日本・EULARでは全て並列の扱いだが、ACRではMTX・AZAのみ記載あり
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ただし、どれが優れているのかのデータはまったくない
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日本…AZA・CyCのみ保険適応あり
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データに関しては日本ガイドラインp.21,22に詳細なまとめあり(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf)
3.bDMARDs
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日本・EULARではTCZ・TNF阻害薬優劣ないが、ACRではTNF阻害薬>TCZ
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TAKT study(高安動脈炎へのTCZvsプラセボ比較RCT)でPrimary outcome(高安動脈炎再発率低下)を満たせなかったため(Ann Rheum Dis 2018;77:348–54.)
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直接比較試験は現在実施中(IFX vs TCZ: INTOReTAK, NCT04564001)
表:TNF阻害薬とIL-6阻害薬の比較(Front Med (Lausanne). 2022;8:814075.)
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その他bDMARDs(ガイドラインほぼ記載なし)
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Abatacept…negative studyあり非推奨(Arthritis Rheumatol. (2017) 69:846–853.)
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Usutekinumab(抗IL-12/23阻害薬)…小規模研究では効果報告あり(Scand J Rheumatol. (2016) 45:80–82.)
【私案】
一案を記載してみる。特にエビデンスに基づいているものでもないので、あくまで「一案」である。(患者背景・保険適応に注意)