膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

抗リウマチ薬と心血管イベントへの影響

Nat Rev Rheumatol. 2021;17(5):270-290.
 
関節リウマチは合併症に心血管イベントがある。関節リウマチ治療によって関節予後は改善するが、心血管イベント発生率低下につながるかというとよくわかっていない部分が多い。
 
ポイント
  • 抗リウマチ薬(DMARDs)によって関節リウマチ(RA)を制御し炎症を抑えることによって、疾患活動性を低下させるとともに心血管リスクを低下させることが期待できる
  • DMARDsによる治療は、血管への悪影響を与え従来の心血管リスクを増加させる場合があるため、心血管リスク管理における「諸刃の剣」となる
  • メトトレキサート(MTX)以外のcsDMARDsの使用は、投与量・投与期間に応じてではあるが心血管系イベントに悪影響を与えうる
  • 生物学的製剤(bDMARDs)は心血管イベントを抑えることができるが、心血管リスクに逆説的な影響を抑える場合がある
  • JAK阻害薬(tsDMARDs)は一部の患者に対して静脈血栓イベントリスクをわずかに高めるかもしれないが、エビデンスは限られておりさらなる長期研究が必要

【前置き】

  • RAは関節炎が中心だが、心血管イベントの発生率・死亡率を上げうる
    • 先行研究では、2型糖尿病と同等のリスクであった(Arthritis Rheum. 44, 2737–2745 (2001).)
  • メタアナリシス上、一般集団と比較してRA患者の心血管リスクは48%高く、心筋梗塞リスクは68%高く、脳卒中は41%高い
  • このため、RA患者が一般集団より余命が短い傾向となる主因は心血管イベントである
  • RA治療は著しく進歩しているが、「死亡率ギャップ」は依然としてRA患者と一般集団の間に存在する
  • 抗リウマチ薬(DMARDs)は関節リウマチの炎症を抑える作用はあるが、心血管イベントの発生率を下げるかというと別の話である→レビュー
 

【心血管リスクと関節リウマチ】

  • 心血管リスク因子(脂質異常症2型糖尿病、高血圧、喫煙、肥満、運動不足など)は、RA患者で多い
  • ただ、RA自体が心血管リスクと考えられている
  • RAによる炎症がアテローム動脈硬化の原因となる
      • 滑膜炎→炎症細胞が直接的及び他臓器を介して血管炎症を起こす→マクロファージの浸潤によってTNF・IL-6の産生を起こす
      • 炎症環境が局所のT細胞をTH1・TH17に変換させる→IFNγ・IL-1βの産生を介して泡沫細胞を産生→脂質の酸化・産生を起こす
 

【RA治療の影響】

  • RAの早期診断・早期治療によってRAの予後は著しく改善した
  • ただこれだけ治療が発達しても、RAの心血管イベントの発症率は以前上昇したままである
  • DMARDsはRAの活動性を抑える薬剤ではあるが、血管への悪影響を与え従来の心血管リスクを増加させる場合があるため、心血管リスク管理における「諸刃の剣」となる
 

【DMARDs別】

  • 薬剤ごとでリスクは異なる
◎抗炎症薬
    • COX阻害剤は、心血管疾患のリスクを約2倍にする
    • 非選択的NSAIDもCOX阻害薬(セレコキシブなど)も心血管リスクは同等→変更するメリットはない
    • ステロイド高用量・長期投与は高血圧・脂質異常症・糖尿病などを大幅に増やす…PSL換算≧7.5mg・6ヶ月以上で頻繁に見られる
    • RA患者のステロイド投与による心血管関連死亡率は1.89倍とされる(Arthritis Rheumatol. 66, 264–272 (2014).)
      • 死亡リスクはステロイド投与量8-15mg、累積投与量40g以上で高かった
    • ステロイドはRAの重症度と関係なく心血管イベント発生率・死亡率と関連している
    • RA患者へのステロイドは可能な限り少なく、可能な限り短期間投与することが推奨される
    • ただ速やかにRAの炎症を抑える力があるのも確かなので、DMARDs開始前・RA再燃時の「ブリッジ療法」として使用することも重要
 
◎csDMARDs
  1. メトトレキサート(MTX)
    • RA治療の基礎治療薬だが、心臓保護効果がある
    • RA患者1240人を対象とした研究では、MTX使用は他のcsDMARDsと比較して死亡率・心血管関連死亡率を低下させることが示された(Lancet 359, 1173–1177 (2002).)
    • 2型糖尿病脂質異常症も減少するというデータあり
  2. ヒドロキシクロロキン(HCQ)
    • ヒドロキシクロロキンは、脂質異常症・糖尿病などを減少させ、抗血栓作用があり、アテローム動脈硬化症発症に対する保護作用もある
      • ※日本では関節リウマチに対してのHCQは保険適応なし
  3. シクロスポリン
    • 昔はRA治療薬として利用されていたが、現代ではほぼ使用されることはない
    • 微小血管障害・内皮障害を起こす可能性があり、心血管系イベント・高血圧のリスクが有る可能性がある
  4. レフルノミド
    • 高血圧悪化リスクがあるとされており、高血圧・心血管系リスクの高い患者での第一選択DMARDsとすべきではない
  5. スルファサラジン
    • スルファサラジンは抗炎症作用があり、アスピリンと同様に血小板凝集阻害作用がある
    • スルファサラジンで治療されているRA患者は、非スルファサラジン治療患者と比較して心血管リスクが低い(Arthritis Res. Ther. 8, R151 (2006).)
    • RAの心血管イベントに対して有益である可能性がある
◎bDMARDs
  1. TNF阻害薬
    • TNF阻害が標準治療と比較して患者の心血管関連死亡率を35%減少させると言う報告あり(Ann. Rheum. Dis. 66, 670–675 (2007).)
      • ただ、薬物の効果というよりも炎症の軽減によって心血管リスクが下がっている可能性が高い
    • TNF阻害薬は炎症制御を通じて心血管保護作用があるが、進行中の心血管疾患を悪化させるリスクも有る→NYHAⅢ〜Ⅳの心不全治療には推奨されない(Autoimmun. Rev. 4, 153–161 (2005).)
  2. IL-6阻害薬
    • コレステロール血症を誘発するリスクは有るが、心血管リスク増加には結びつかない
    • TNF阻害薬と比較して、わずかに優れた心血管効果を有する可能性がある
  3. リツキシマブ
    • 心血管イベント増加リスクはないとされるが、有害事象の報告もある
      • 一部の患者(<10%)では治療後に末梢性浮腫、高血圧、低血圧、不整脈を発症する可能性がある
      • 極稀にリツキシマブ投与中・投与後に急性心筋梗塞を発症することがある(J. Clin. Pharm. Ther. 42, 356–362 (2017).)
    • カニズムは不明だが、炎症誘発性サイトカインがinfusion reaction中に増加し、血管イベントに関与している可能性がある
  4. アバタセプト
    • アバタセプト投与によってインスリン感受性が改善することが示唆されている報告あり(Medicine 94, e888 (2015).)→糖尿病合併RA患者の心血管リスクを減らすことに役立つかもしれない
    • 他のbDMARDsと比較して心血管イベント増加リスクはない
  5. IL-1阻害薬
    • アナキンラ(組み換えIL-1受容体拮抗薬)…心血管イベントが増加するという報告はない
    • カナキヌマブ(IL-1β阻害薬)…心筋梗塞減少の報告があり、心血管イベントを減少させるかもしれない
◎JAK阻害薬
  • 脂質代謝:高コレステロール血症を誘発するリスクは有るが、心血管リスク増加には結びつかない(IL-6阻害薬と同様)
  • 無症候性心血管イベント:データは存在しないが、アテローム動脈硬化にJAK依存性サイトカインが関与している→JAK阻害薬は心血管保護効果がある?
  • 動脈血栓イベント:現状のデータ的には、JAK阻害薬によって動脈血栓イベント増加はしないことが示唆される
  • 静脈血栓イベント