Arthritis Rheumatol. 2021;10.1002/art.41924.
外来のリウマチ性疾患患者さんたちにコロナワクチンを説明する際に「リウマチが悪くなったりしませんか?」「治療してるから副反応がひどくなったりしませんか?」と聞かれることとが多く、データがなかったので推測で説明してきた。
参考:
参考となる論文が出たので紹介。
先に結論:
【Intro】
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リウマチ・筋骨格系疾患(rheumatic and musculoskeletal diseases:RMD)患者の多くは、ワクチン接種による疾患再燃への懸念からワクチン接種を躊躇しているというデータあり(Lancet Rheumatol. 2021 Apr;3(4):e243-e245.)
【Method】
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免疫調整療法を行っている18歳以上のRMD診断を受けた患者が対象
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ワクチン接種後の症状について選択肢及び自由記述で情報収集
【Result】
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1377名のRMD患者から回答あり
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ワクチン…55%がBNT162b2(ファイザー)、45%がmRNA-1273(モデルナ)
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年齢中央値は47歳、82%が女性
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診断内訳…47%炎症性関節炎、20%全身性エリテマトーデス(SLE)、20%オーバーラップ
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治療内訳…50%が併用療法、26%csDMARDsのみ、22%bDMARDsのみ
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3%がコロナ既感染
◎疾患フレア(再燃)
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ワクチン接種前:1回目ワクチン前の6ヶ月間で56%(767名)で1回以上の原病フレアあり
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ワクチン接種後:11%(151名)で原病フレアあり、大半(60%)で2回目ワクチン接種以降に発生
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重度フレアを起こした患者はいなかった
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フレア発生率の低かった要因…csDMARDsのみで治療中、bDMARDsのみで治療中
◎局所・全身の副反応
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多かった副反応…注射部位の痛み(1回目87%・2回目86%)、疲労(1回目60%・2回目80%)
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副反応は2回目接種後に増加していた
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日常生活に支障をきたすような副反応は稀…筋肉痛(11%)・疲労程度(19%)
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入院例は1名のみ(2回目接種後の下痢)
【Discussion】
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1377人のリウマチ性疾患患者への2回のmRNAワクチン後の調査→安全性に大きな問題なし、疾患の重度フレアなし、副反応も予測の範疇
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ワクチン接種後に治療が必要なフレアを起こした患者はいるが、ワクチン接種前のフレア発生率と関連あることを考えると、ワクチン関係なく元々難治性病態だから、ということで説明できそう
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生活に支障をきたすような副反応は稀
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limitation
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疾患への治療の詳細データが不明
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参加者の大半が白人女性→一般化できない
【感想】
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リウマチ性疾患があるからといって、原病の悪化・副反応を怖がる必要はあまりない→一般人口へのワクチンとあまり変わりなさそうと言うデータができたことは説明には使えそう
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ただ、白人女性が大半の研究であり、質問表を用いた研究という点という点からは内的/外的妥当性には問題点があることには注意必要
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あとMTX等の休薬をワクチン時に行ったかどうかの報告がない点にも注意が必要。ただ、ワクチン接種後のほうがフレア少なそうなデータだったこと考えると、あまり考慮しなくてもいいかもしれないが…
- 副反応頻度に関しては、一般集団での既報(J「重大副反応・疾患フレアは稀で、大きな問題なし」ということがわかったことはいいこと。 )と比較して全体的に多めな気もするが、質問表の内容・出し方が全く異なり比較困難。そういう研究もそのうち出てきそうではあるが、とりあえず