Curr Opin Rheumatol. 2022;34(6):328-336.
Nat Rev Rheumatol. 2023;10.1038/s41584-022-00900-6.
全身性強皮症(SSc)の患者の大半で消化器症状は発症し、経過の初期で発生することが多い。重症例も多く、QoLの低下・身体障害・抑うつ・死因に繋がりうる。一方で治療法は確立されておらず、対症療法が中心である。最新レビューが立て続けに2つ出ていたので、補足しつつ重要部分をまとめてみた。
ただ検査ハードルは高く、治療も探り探りでやらざるを得ないことが多い。
【原因】
はっきりわかっていないが以下の複合?
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神経筋伝達の減少→平滑筋の萎縮
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自律神経システムの機能不全
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上記による腸内細菌叢の変化
【分類】
様々な消化器病変を起こし、多発することもある。多くは消化管運動障害。
【上部消化管病変】
◎食道病変
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病変部位としては最多(SSc患者の50-90%)で、部位としては食道下部2/3の病変が多い
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食道病変は胃食道逆流症(GERD)を起こし、微量の胃内容物誤嚥の結果、肺線維症の遠因になると考えられている(Semin Arthritis Rheum. 2010;40(3):241-249.)
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症状…嚥下障害、逆流、夜間喘鳴、喘息、胸痛など
◎胃病変
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胃排出遅延が最多(SSc患者の30-55%)だが、胃ペースメーカー異常(胃電図不整)が多く見られる
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症状…早期満腹感、吐き気、嘔吐、心窩部痛、腹部膨満感、難治性逆流性食道炎、食事摂取量の減少、体重減少
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その他胃前庭部血管拡張(GAVE)もまれな合併症で、消化管出血・鉄欠乏性貧血を起こす
◎上部消化管病変の診断
◎上部消化管病変の治療
その他
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手術(胃バイパス手術など)…難治例に限られる
【下部消化管病変】
◎小腸病変
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小腸運動障害はSSc患者の40-88%で発症し、重度の小腸病変は死亡率の増加と関係している
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症状…腹部膨満感、慢性便秘・下痢、体重減少
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小腸内細菌増殖症(Small intestinal bacterial overgrowth, SIBO)…小腸内の細菌が異常増加し、重度の消化器症状を起こす合併症
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腸管嚢腫様気腫症…腸管壁内に多発性の気腫を作る。原因は壁透過性の増加・細菌によるガス産生。
◎大腸病変
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最多は便秘症
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大腸通過遅延リスク因子…女性、毛細血管拡張症の存在、抗セントロメア抗体陽性、喫煙歴、Medgar消化管重症度スコア3点以上(Arthritis Care Res (Hoboken). 2023;75(2):289-298.)
◎肛門直腸病変
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最多は便失禁…主に神経機能障害が原因
◎下部消化管病変の診断
◎下部消化管病変の治療
その他…糞便移植(faecal microbiota transplantation, FMT)は臨床試験中(PLoS One. 2020;15(5):e0232739.など)
SIBOに対しての抗菌薬ローテーション方法は様々だが、代表例は以下の通り(Am J Gastroenterol. 2020;115(2):165-178. SIBOガイドライン)。
注意点
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リファキシミンは全身に吸収されない薬剤で推奨度高いが、日本では肝性脳症のみに適用あり(※というか抗菌薬全てにSIBOの適用はない)
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テトラサイクリン・ドキシサイクリンは長期使用による着色歯リスクに注意
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1薬剤10日でのローテーションが推奨される。リファキシミンのみ14日。
その他の難治性病態に関して: