膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

早期関節リウマチに対してステロイドを使用すべきか?

Rheumatology (Oxford). 2021;keab151.
Should we use glucocorticoid in Early Rheumatoid Arthritis? : Results at 5 years from the ERA UCLouvain Brussels cohort."
 
関節リウマチに対してのステロイドの立場とは結構微妙であり、RAに対しての最新のACR推奨では以下のようになっている
中〜高疾患活動性の場合
  • DMARDs併用治療で短期間(3ヶ月未満)のステロイド非併用治療をDMARDs単剤+ステロイド併用治療よりも推奨する(条件付き)
  • DMARDs併用治療で長期間(3ヶ月異常)のステロイド非併用治療をDMARDs単剤+ステロイド併用治療よりも推奨する(推奨度高)
短期であっても基本的にはステロイドを併用しないことが推奨されている
短期であってもステロイドによる副作用が 起こることもあるため、かなりRAに対してのステロイドは嫌われているが、症状緩和作用としての役割は未だにあるもよう
→大規模コホートを用いてステロイドの有益性・副作用を調査した
 
結論としてはどちらとも言えないが、
ステロイド使用によって疾患活動性は非併用群とそんなに変わらなくなっているが、約1/4は5年経ってもステロイド中止できておらず、bDMARDs併用・重症感染症が多い
ということは覚えていたほうがよさそう

Method

  • Patient:ベルギー・ブリュッセルコホートに登録された早期関節リウマチ患者474人の後ろ向き解析(→5年追跡したレトロスペクティブコホート
    • ACR/EULAR2010年基準を満たし、csDMARDsにナイーブだった患者
    • 治療内容は上級リウマチ専門医が決定
    • 治療開始1年目はステロイド漸減・中止を推奨
  • Exposure:ステロイド投与あり(PSL2.5-10mg/day)
  • Comparison:ステロイド投与なし
  • Outcome
    • ベースラインの評価:RA診断時の年齢、性別、RAの家族歴、喫煙の有無、リウマチ因子(RF)、抗CCP抗体の有無、Xpでの骨破壊・関節腔狭小化の有無、関節の圧痛・腫脹の数、CRP、DAS-28CRP、CDAI、SDAI、VAS、HAQ
    • 治療後の評価:入院を必要とする感染症(重症感染症)、骨折、心血管危険因子、グルココルチコイドの累積総投与量、bDMARDsの投与+ ステロイド有害事象
 

結果

  • 474例中、180例がステロイド併用・294例がNSAIDs・鎮静薬をcsDMARDsと併用
  • ベースライン
      • 2群で疾患活動性はほぼ同等
      • 高齢者・CRP高値・喫煙者・ACPA陽性例・MTX非使用例ではステロイド導入多い→臨床的な印象と一致
  • 5年間の追跡調査
    • ステロイド使用有無でDAS28-CRP・HAQの有意差なし
    • ステロイド累積投与量が多い群(5年間での累計PSL≧1gの群)では、対照群と比較してDAS-28CRP・HAQが有意に高い
    • ステロイド治療を受けた群の内23.6%(178例中42例)がステロイド中止できず
    • ステロイド累積投与量が多い群はbDMARDs投与例が有意に多く、重症感染症も多い
    • 骨密度・骨折数・心血管イベントに関しては、ステロイド累積投与量が多い群・少ない群で有意差なし
 

Discussion

  • 早期関節リウマチに対してのステロイドの有効性は様々な臨床試験で実証されており、DMARDsへの「橋渡し」としての役割がある
  • ただ、前述したACR推奨からも読み取れるように、「限られた症例」に「短期間使う」という以上の使用法は勧められていない
  • どういう患者でステロイドを使っていて、その後どうなっているか?というのは案外研究されていない→本研究が初めて?
    • どういう患者?→高齢者・CRP高値・喫煙者・ACPA陽性例・MTX非使用例ではステロイド導入多い
    • その後どうなっているか?→疾患活動性は非併用群とそんなに変わらないが、約1/4は5年経ってもステロイド中止できておらず、bDMARDs併用・重症感染症が多い
  • limitation
    • 所詮は後ろ向き研究
    • ステロイド開始はリウマチ専門医・患者によって決定されており、全く均一化されていない
    • 無作為化はなし
  • →早期関節リウマチに対しての最善の治療法の定義はできない…
 

感想

  • どういう関節リウマチにステロイドを使うか?というのはかなり医師によって異なるため、均一化できない
    • 自分としてはなるべくステロイド関節注射で対応し、注射では対応できないくらい疾患活動性悪い+治療方法が相当に限られる例(MTX使えない/bioが金銭的に無理など)にだけ限定的に入れているが…
  • 高齢者・喫煙者・MTX非使用例ではステロイド導入多いというのは、「他に治療法がないから」という理由で非常に頷ける
    • CRP高値・ACPA陽性はわからんでもないが、疑問符がつく…
  • ステロイド使用しても約1/4は5年経ってもステロイド中止できておらず、bDMARDs併用・重症感染症が多いというのも印象とあっているが、日本ではステロイド中止できていない群がもっと大きいような気がする…
  • いずれにしろRAにおけるステロイドの使用法は
    1. 「限られた症例」に「短期間使う」
    2. どうしようもない時にリスク覚悟で使う という2パターン以外あってはいけないのだろう…