膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

ANCA関連血管炎に対するAvocopanVSステロイド(ADVOCATE Trial)

NEngl J Med 2021; 384:599-609
 
各方面で話題となっているが、一応まとめ。
  • AvocopanはC5a受容体阻害薬で、補体経路に対して作用する薬剤である
  • ANCA関連血管炎(AAV)の病因の中心は、C5aを介した好中球への作用であることが知られている
  • 従来のAAV治療の中心はステロイドであるが、Avacopanを使用することでステロイドを一切使用せずにAAVを治療できるようにならないか?という臨床試験
ステロイドと比較して優れているかはともかく、Avacopanによって同等の寛解は達成できていそう

Method

  • Patient: 143施設から集められたANCA関連血管炎患者331人
  • Intervention:Avacopan30mg2錠分2…166人
  • Comparison:糖質コルチコイド(GC)内服(量は年齢・体重で変化)
  • 治療内容…ステロイド/Avacopanの投与+以下の3つのレジメンのどれかを併用
    1. シクロホスファミド静注(0,2,4,7,10,13週目)
    2. 最大14週の経口シクロホスファミド2mg/kg/day(最大200mg)
      • ※どちらも15周目以降はアザチオプリン2mg/dayへ
    3. リツキシマブ投与…375mg/m^2, 4週目まで毎週投与(その後の追加はなし)
  • Outcome
    • Primary outcome①:臨床的寛解…26週目にBVAS0かつ、直近での4週間でステロイド投与がない
    • Primary outcome②:持続的寛解…26週・52週目でそれぞれ寛解しており、52週目の直近4週間でステロイド投与がない
    • Secondary outcome:最初の26週間でのステロイド誘発毒性(Glucocorticoid Toxicity Index (GTI) )
      • 詳細→J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jan;9(1):365-372.e5.

結果

  • 患者群
    • 白人が主体、平均年齢は60代、MPO-ANCA陽性例とPR3-ANCA陽性例がだいたい半々→日本の臨床とはかなり異なる患者群
    • 併用した治療は半分以上がリツキシマブ
  • Primary outcome①:26週目での臨床的寛解…Avacopan群72.3%、ステロイド群70.1%→非劣勢ではあるが、優越性はなし
      • サブグループ別でもあまり差はなさそう
  • Primary outcome②:52週目での持続的寛解…vacopan群65.7%、ステロイド群54.9%→Avacopan群に優越性あり
      • MPO-ANCA陽性例では、Avacopan群で高い寛解率が顕著な傾向あり?
      • Avacopan群のほうが経時的に再発率は低くとどまっている
    • 特にeGFRの改善は顕著にAvacopan群で優れる
  • Secondary outcome:ステロイド毒性…Avacopan群のほうが低そう
  • 安全性…どちらも40%弱有害事象あり
 

Discussion

  • AAVへのAvacopan治療は長期的にはステロイド以上に有効かもしれない
    • 特にeGFR・アルブミン尿改善効果はAvacopanで良かった→C5aの糸球体への作用停止が大きい?
  • 血管炎の増悪以外の重篤な有害事象・ステロイドによるものと思われる有害事象はステロイド群で多かった
    • 補体阻害のため、髄膜炎菌のような莢膜を持つ細菌感染が起こりやすそう?→ただ、一例も起こらなかった
 

感想

血管炎に対する新薬としてのAvacopanを使うことでステロイドフリーでの治療が可能になるため注目されてきたが、確かにステロイドの代わりにはなりそう
ただ
  • 日本の臨床とはかけ離れたシチュエーションである…若年、PR3多め、白人
  • Avacopan群でなんだかんだ有害事象が多く、特に肝障害はかなり心配
  • ステロイドの減量がPEXIVAS trialで示されているものよりも遅い(=ステロイドの有害事象が過大になりうる)のに、有害事象がそんなに両群で変わらない
  • 参考

     

    ctd-gim.hatenablog.com

     

という不安感はあるが、そのうち日本でも試験されるだろうし、その結果は結構期待したい。サブグループ解析ではあまり差はないとのことだったが、日本で多いMPO-ANCA陽性例でAvacopanかなり効いてそうな印象は受ける。
 
  • 各方面で突っ込まれているが、なぜリツキシマブは0-4週投与後の6ヶ月おき投与による維持療法を行わなかったのだろう?リツキシマブ使っている患者が多いのに…
    • 入れればもっとシクロホスファミド群よりも寛解率が良さそうな気もするが…
    • リツキシマブは維持療法しなくてもシクロホスファミド群よりも寛解率が高い?、という傍証にはなったのかもしれない
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