膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

難治性SLEへのRituximab+Belimumab併用療法(BEAT-LUPUS)

"Effectiveness of Belimumab After Rituximab in Systemic Lupus Erythematosus : A Randomized Controlled Trial.”
Ann Intern Med. 2021;10.7326/M21-2078. doi:10.7326/M21-2078
 
従来の治療に対して抵抗性の難治性SLE患者48人に対して、Rituximab(抗CD20抗体)とBelimumab(BAFF中和抗体)という2つのバイオ製剤を組み合わせ投与したRCT
 
4-8週の間にRitiximabを2回投与→以後1年間プラセボ or Belimumab点滴を継続
抗dsDNA抗体価低下・SLEフレア抑制作用はありそう

【Intro】

SLEの治療は、ステロイド免疫抑制剤が中心である
SLEに対してのRituximab(RTX、抗CD20抗体)は腎性SLE・非腎性SLEともに成績を示せていないが、一部ガイドラインでは難治性SLEへのRituximab投与が推奨されている
  • 非腎性SLE… EXPLORER trial(Arthritis Rheum. 2010;62(1):222-233.)
  • 腎性SLE…LUNAR trilal(Arthritis Rheum. 2012;64(4):1215-1226.)
SLEへのRTXが無効だった理由として、Rituximab投与によるB細胞の枯渇後、BAFF(B細胞活性化因子)が増加することが原因ではないか?という仮説がある
RTX投与後にBelimumab(BAFF中和抗体)を投与することで、難治性SLEを治療できないか? というのが今回の試験のコンセプト
 

【Method】

  • Patient:難治性の18−75歳のSLE患者
    • SLEの基準は2012年SLICC基準*1を採用
    • 抗dsDNA抗体陽性
    • 従来の治療への反応不良で、RTX投与が予定されている患者
    • 除外基準…感染症、IgG低値、好中球低値など
    • 全員に対して4-8週にRitiximab1gを2週間隔で2回投与→以後1年間プラセボ or Belimumab点滴を継続
    • 併用薬
      • ステロイド投与量はPSL≦20mgで、減量が推奨された
      • 免疫抑制剤…メトトレキサート(MTX)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アザチオプリン(AZP)は投与可能
        • MMFは1g/日、AZPは1mg/kg/日、MTXは15mg/週が最大量
  • Outcome
 

【Result】

  • 52人がRCT組入れ→プロトコルを52週まで実施できたのは32人
    • 各群10名ずつ離脱し、大体の原因はSLE再燃(プラセボ群10名中7名、ベリムマブ群10名中3名で再燃)

◎ベースライン

    • 9割女性、白人中心(5割程度)
    • 腎病変があるのは38%で、非腎性SLEが中心
    • ベースラインでのPSL投与量は10mg/day程度で、大半が免疫抑制剤併用
    • ヒドロキシクロロキン(HCQ)内服率はプラセボ群77%・Belimumab群65%で、全員が内服しているわけではない

◎Outcome

  • Primary:52週目の血清IgG抗二本鎖DNA(抗dsDNA)抗体価
    • (Belimumab群47 IU/mL [95% CI, 25 to 88 IU/mL]、プラセボ群103 IU/mL [CI, 49 to 213 IU/mL])
    • 52週目IgG抗dsDNA抗体価…Belimumab群ではプラセボ投与群に比べて低い
    • Belimumab群では、ベースラインから70%以上抗体価低下(CI, 46% to 84%;P< 0.001)
    • Belimumab群では、24週目でのIgG抗dsDNA抗体価がより大きく減少(P<0.001)
  • Secondary:疾患再燃
    • (HR0.27 [CI、0.07〜0.98]、未調整log-rank P= 0.033)
    • 重度の再燃…プラセボ群10件、Belimumab群3件
    • (HR0.50 [CI、0.21~1.20]、未調整log-rank P=0.124)
    • Belimumab群はプラセボと比較して、52週間での重度再燃(BILAG-2004 gradeA)リスクを73%減少させた
    • 中等度・重度の再燃を総合した場合、有意差なし
  • Secondary:ステロイド投与量
    • 1日平均PSL投与量…両群ともスクリーニングから52週目までに約50%減少
    • ステロイド累積投与量、48,52週目でのPSL≦7.5mg/日の患者割合、フレアを起こさずにステロイド投与量を減量できた患者に関しては、有意差なし
  • Secondary:安全性
    • 死亡例なし
    • 感染症重篤な有害事象・総合的な有害事象・有害事象による離脱発生率・IgG値・補体価は、ベリムマブ群とプラセボ群間で有意差なし
    • 自殺念慮患者は、Belimumab群では2名、プラセボ投与群ではなし
    • うつ病では、両群とも有意差なし
    • 末梢血B細胞数…24週目までは両群間で同程度、52週目にはプラセボ群で高い
 

【Discussion】

  • RTX+Belimumabによって、抗dsDNA抗体価はRTX単独投与と比較して、52週時点で70%減少
  • 難治性・免疫抑制剤ステロイド・ヒドロキシクロロキンを併用した患者において、併用療法は重度再燃を3倍程度に減少させた
  • 一方でステロイド量は差なし、有害事象も差なし
  • limitation…サンプルサイズが少ない、抗dsDNA抗体価を代用エンドポイントとしている、併用する免疫抑制薬の用量が少ない(MMFなど)
 

【感想】

  • SLEへのRTX→Belimumabという治療自体は、日本でも難治性ループス腎炎にならできる治療ではあるが、「そりゃそうだよね」という内容ではある
    • Belimumabの効果はよくわかっているので、RTXの方をプラセボにしたデータもあればもっとわかりやすくRTX使うかどうか決められるだが…
  • サンプルサイズも小さくステロイド減量効果もよくわからないので、現状では「RTXは難治例にBelimumabを投与するときの”スパイス”になるかもしれない」くらいに捉えるのが丁度いいのかもしれない

*1: